2013 Fiscal Year Research-status Report
土壌の物理性をもとにしたリンゴの開花日予測モデルの構築
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24580344
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加藤 幸 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (40302020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 勝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00181917)
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Keywords | リンゴ / 開花予測 / 地温 / モニタリング |
Research Abstract |
積雪寒冷地帯である青森県のリンゴ園は,毎年のように雪害に見まわれる。農家は,雪害による直接的被害への対応を進めながら,剪定などの春先の農作業を融雪時期と照らし合わせ行う必要がある.このような中,リンゴ農家が作業計画を立てる際,指標となるのが「開花日」である.開花のメカニズムを生理学的見地から検討することは重要である.同時に,農家のニーズに対応した生産現場で実用性が高い予測モデルの検討も不可欠である.本研究で取り上げている地温モデルは,融雪後の園地の深部(64cm)地温がほぼ直線的に上昇する傾向をもとに,融雪期の園地の深部地温を線形近似し,目処となる温度(10℃)に到達する日数を概算する.このモデルを一般的な開花予測モデルの予測結果と比較したところ,融雪後の気温上昇が大きかった2012年は,既往モデルより10日以上早い段階で正しい予測結果を示した.この結果は,早い段階で開花時期を把握したいという農家の要請に簡便な計算で対応可能で現場ニーズに沿うものと言える.一方で,4月後半に寒の戻りがあった2013年は予測モデルの精度が低下し,このモデルの課題が明らかとなった.これは,目処とする地温に許容できる多少の幅を持たせることが必要なことを意味しており,今後の課題といえる. 一方で,このモデルのもつ簡便さと実践性を活かし,堆肥用温度計(シンワ90cm 72611)を活用した地温の簡易計測と開花予測を農家に協力してもらい進めている.農家の意見によれば「リンゴの幹の根元に刺した簡易地温計の値を毎日見ることで,生育状況の段階を数値的に把握でき,剪定作業のペースを検討できる」という好意的な回答を得ている.このような簡易計測をもとにした実践的運用体制の整備を進めるとともに,モデルに見られる課題の克服を進めている段階にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンゴの開花予測における「地温モデル」について,2012年の特異な気候(例年に比べて半月以上融雪が遅れ,その後一転して高温傾向になった)下において既存モデル(積算温量モデル)と比較し,優位性を確認することができた.特に,2012年は発芽から開花までの期間が例年の2/3程度と短く,栽培環境が特異な条件下にあった.このような場合における地温モデルの有効性を示すことができた成果は大きい.一方で,2013年のように,4月後半の寒の戻りで深部地温の線形的上昇傾向が影響受けた場合に予測誤差が大きくなる課題が明らかとなった.この点に関し目標とする地温(10℃)の設定にあたって少し幅を持たせることが必要である.その解決のため,現在,条件の異なる園地で,融雪期以降の地温の収束傾向から検討を進めており,今年度その確認を行う予定である. また,2012年度に提示した簡易温度計を利用した地温モデルの実践的運用は,日常作業で忙しい農家に余計な負担をかけることなく農作業を支援できる.2013年にこれを農家に委ねる形で進めた結果,その有効性を確認すると同時に,農家からも好意的な回答が得られた.単なる予測モデルの構築だけでなく,その成果を生産現場と共有しつつ,有効な生産現場支援システムの構築が進められた. さらに,新たな観点として園地の「冬の厳しさ」をWinter Index(冬の厳しさ指数)をもとに分析し,融雪期よりももっと前の積雪期の段階から対応策を検討する試みや,園地モニタリングで集めたデータを活用し,Community Supported Agriculture(地域支援型農業)の実践に活かす試みを進めており,「地温と開花時期」の関連性を基礎に多方面への展開を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
リンゴの開花予測のための地温モデルのさらなる精度向上と農家レベルでの実用化と普及を図る. (1)これまでに得られた結果をもとに開花予測情報を農家に迅速に提供しながら,モデルの実践的な活用方法をさらに検討する. (2)2013年に明らかになった目標地温の”幅”設定について,蓄積したデータと2014年のモニタリング結果をふまえ,融雪期以降の地温の収束傾向ををもとに具体的解決方法を示す. (3)これまでの地温モデルの体系化とそのまとめを行う.さらに,園地の冬の厳しさなど,新たな観点を導入することでモデル精度向上をはかる可能性について検討する. 以上のような形で,地温を使った開花予測モデルを実践的レベルでの完成を図る.同時に精度面,実用面でさらなる改善を進めるため新たな方向性をあわせて検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モニタリングを進めている4園地の1つで雪により気象観測機器が破損した.また,土壌センサも劣化による破損が生じており,これらの機器の更新をする必要がある.また,成果のとりまとめにあたって,共同研究者との打ち合わせや,学会等での成果発表のため,旅費等を使用する必要がある. 雪によって破損した気象観測装置の更新と故障した土壌センサの効果を行う.また,研究成果のとりまとめのため共同研究者と打ち合わせをするため,および学会等での成果発表にあたって旅費を活用する.
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Research Products
(5 results)