2012 Fiscal Year Research-status Report
黒ボク土に蓄積した未利用リン資源の量的評価とリン資源の循環型活用システムの構築
Project/Area Number |
24580345
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
立石 貴浩 岩手大学, 農学部, 准教授 (00359499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 武己 岩手大学, 農学部, 准教授 (40333760)
颯田 尚哉 岩手大学, 農学部, 教授 (20196207)
築城 幹典 岩手大学, 農学部, 教授 (10292179)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黒ボク土 / 未利用リン資源 / 物質循環 / 土壌微生物 |
Research Abstract |
植物生産で必須の養分であるリンは、過去の化成肥料の過剰投与の結果として、国内農耕地の土壌に吸収固定され蓄積されている。本研究では、黒ボク土に蓄積されているリンのうち、植物が利用できる潜在的リン画分(以下PAPと略す)の新たな定量法を確立し、これらリン画分の植物生産に対する有効利用の方策を提案することを目標としている。本年度は、その第一段階として、1岩手県下での黒ボク土分布域における様々な黒ボク土中の各種リン画分の分析と土壌中のリン現存量の評価、および 2黒ボク土中の潜在的利用可能リン(PAP)の定量法の確立にむけた検討、を実施した。 前者においては、岩手県内の黒ボク土分布域において、施肥管理されている農耕地や牧草地、人為的管理のない自然草地や森林などの地点より黒ボク土を採取し、全炭素、全窒素、可給態リン、全リン、焙焼法による有機態リン、酸性ホスファターゼ活性(以下APase)を分析した。有機態リンと各種パラメータとの間の関係性を評価したところ、自然草地区では、有機態リン含有率が高い場合APase活性が高い傾向にあった。このことは、可給態リンが少ない自然草地のような黒ボク土では、リンは主に有機態の形態で蓄積されており、有機態リンはAPaseによって加水分解され、これが植物に利用される可能性が示唆された。 一方、後者では、土壌微生物バイオマス測定法の一つである基質誘導呼吸法がPAP分析に応用できないか検討した。過剰量の炭素源・窒素源を添加した黒ボク土に、有機態リンとしてフィチン酸を添加し、培養期間中の土壌からのCO2発生量を測定したところ、CO2発生量は増加した。フィチン酸添加量の増加に伴い、CO2量も増加し、両者の間には有意な正の相関が認められたことから、発生したCO2の増加量は、微生物や植物に利用可能な潜在的なリン画分の量、すなわちPAPを反映していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩手県内の黒ボク土分布域の様々な農耕地、草地、森林より黒ボク土を採取し、全炭素含量、全窒素含量、可給態リン、全リン、有機態リン、酸性ホスファターゼ活性(APase)を分析することで、施肥管理された農耕地の黒ボク土と施肥管理が行われていない自然生態系の黒ボク土における土壌中でのリンの蓄積状態や植物へのリンの供給様式の違いを明らかにすることができた。さらに、土壌微生物バイオマス測定法の一つである基質誘導呼吸法を一部改変した方法により、測定されたCO2発生量が、間接的に微生物や植物に利用可能な潜在的なリン画分の量(PAP)を反映していることを明らかにした。これにより、黒ボク土中のPAP測定法の確立に向けた基礎的情報を得ることができた。以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた知見をもとに、土壌微生物バイオマス測定法の一つである基質誘導呼吸を改変した方法を用いて、黒ボク土中に含まれる植物に利用可能な潜在的リン画分(PAP)を測定する方法を確立する。施肥管理された農耕地の黒ボク土と施肥管理が行われていない自然生態系の黒ボク土では、土壌微生物相や各種リン画分の含有率が異なることから、個々の黒ボク土について、基質誘導呼吸の特徴を評価した上で、PAP測定のための至適条件を検討する。本研究では、PAPという新たな土壌リン画分を提唱しているが、土壌中の未利用リン資源としての妥当性は現在まで示されていない。そこで本研究では、県内で採取した黒ボク土を用いて、草本植物を用いたポット栽培試験を行い、栽培植物によるリンの吸収量とPAPおよび他の土壌リン画分(全リン、可給態リン、有機態リン)含有量とを比較し、それらの間の関係性を評価した上で、PAP成分の植物への可給性と植物による未利用土壌リンの回収について検証する。その上で、岩手県内の黒ボク土分布域にある様々な地点で黒ボク土を採取し、PAPおよびその他のリン画分の量を測定し、域内での黒ボク土中に蓄積された潜在的に利用可能なリン資源の量の推定を試みる。最終的には、耕作地黒ボク土に蓄積したPAPの回収とPAP由来のバイオマス資源の堆肥化への活用を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、黒ボク土中のPAP由来のリンの植物による回収やその植物体の堆肥化資材への応用に関する研究を実施する予定である。平成24年度はそのための予備実験等を実施したが、既存の試薬と物品を使用することで対応することができた。しかし、平成25年度では、堆肥化の検討のための資材調達や設備補充に費用を要することが予想されたため、一部助成金を平成25年度に繰り越した。
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Research Products
(4 results)