2012 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク形成が粘土フロック懸濁液の界面沈降に及ぼす効果
Project/Area Number |
24580348
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中石 克也 茨城大学, 農学部, 教授 (40180236)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 界面沈降 / ネットワーク形成 / フロック構造 |
Research Abstract |
凝集フロック構造に自己相似則を取り入れ、粘土懸濁液の界面沈降曲線から得られる最大沈降速度と沈降体積に基づいて、フロック構造を決定する理論を構築した。さらに、フロック構造の変化を用いてネットワーク構造の転移現象を示した。得られた主な成果は、以下の通りである。 1. 界面沈降速度式の適用について:提案された界面沈降速度式は、ネットワークのない状態でしか使えないことから、初期沈降高さを変えて沈降実験を行い、初高無限大のネットワークのないときの沈降速度Ufと膨潤比αを求めた。これによって、界面沈降速度式に適用できるαとUfを決定することができる。 2. フロック構造の決定:フロックを球形と仮定したため、フロック構造は膨潤比αと構造次元Dで完全に決まり、沈降体積から得られたαを用いて提案した界面速度式から構造次元Dを求めた。α、Dとフロック体積濃度Φfの関係を調べた結果、膨潤比αは3領域に区分されることがわかった。また、提案された界面沈降速度式から、構造次元Dが極めて高い精度で決定された。 3. ネットワーク転移現象:膨潤比αの挙動はフロック体積濃度Φfによって、Φf<0.21のネットワーク(フロック連結)のない理想領域、Φf=0.21のネットワーク領域、Φf>0.21のネットワークの剛性が弱くなる領域の3つの領域にわかれることがわかった。 4. 圧縮降伏応力:自重によりネットワークがつぶれる現象について、沈降体積がフロック充填相に軽いネットワーク相が乗っている二相モデルで表わせると仮定し、その測定値をモデルに適用して圧縮降伏応力σyを求めた。その結果、理想領域ではσyは0に近い値でフロック体積濃度Φfに依存せずにほぼ一定値をとり、Φf=0.21のネットワーク領域ではσyが急激に増大し、Φfが0.21を超える領域ではσyはΦfの増加にともなって少しづつ低下することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画・実施した主要な二つの研究課題について、以下に示すように概ね明らかにすることができた。 1. 初期沈降高さの影響を除いたフロック有効体積の評価とフロック圧縮降伏力の解析 フロックモデルを用いて、沈降体積をフロック充填相とその上に乗っている軽いネットワーク相の二相モデルで考えて、圧縮降伏応力を求める解析方法を確立した。さらに、沈降体積の高さ効果を考慮した沈降体積の実測値からフロックの有効体積を求め、その値を提案した二相モデルの式に代入して、ネットワークが破壊される限界の降伏値である圧縮降伏応力を算定することができた。 2. せん断力によるフロック構造とネットワーク形成との関係 これまでの研究成果で、フロックの構造はフロック有効体積の指標である膨潤比と構造次元で決まることを示した。この成果を用いて初期沈降高さを無限大としたときのフロック有効体積と固体体積濃度の関係を調べることによって、ネットワークの存在と沈降過程における転移現象を示すことができた。さらに、我々によって提案された界面沈降速度からフロックの構造次元を求め、その値とネットワーク形成の関係を明らかにすることができた。 以上、当初予定通り、当初年度の研究目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度で得られた成果を踏まえて、以下の内容で研究を進めていく。 第一に、ネットワーク形成と転移の関係を定量化する前提として、沈降曲線から得られる沈降体積がフロック充填相とその上に乗る軽いネットワーク相の二相から成るモデルで記述できることを示す。具体的には、前年度では初期沈降高さを250、200、150、120mmの4段階としたが、さらに初期沈降高さを10mm程度まで低くして沈降曲線を求めてフロックの膨潤比と初期沈降高さの関係を解析し、ネットワーク相の存在を明らかにするとともにこの相の厚さを定量的に評価する。 第二に、初期沈降高さを変えて管径効果とネットワーク転移の関係、及び撹拌強度の違いによるフロック破壊と転移の関係を詳細に調べる。具体的には、初期沈降高さを250~10mm程度までの広範囲に設定して沈降曲線を求め、フロックの膨潤比と初期沈降高さの関係を提案したニ相モデルを用いて解析し、せん断力によって決まるフロック径・フロック構造がネットワーク転移及びネットワーク破壊に及ぼす効果を力学的に明らかにする。 以上の研究課題を達成することで、ネットワーク転移が界面沈降現象に及ぼすメカニズムを明らかにすることができるとともに、沈降体積の二相モデルを用いることで凝集懸濁液の沈降におけるネットワーク形成とフロック構造の関係を力学的に説明できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フロックを形成する粘土粒子の結合力は、溶液のpH、イオン強度など物理化学的因子による影響を鋭敏に受ける。したがって、純水を用いて懸濁液を調製するときに、高い精度で溶液条件をコントロールする必要があることから、純粋製造装置の維持管理が不可欠である。本研究では、現在高精度の純粋製造器を使用しているが、純水の状態を維持するためのメンテナンスが必要であり、その費用として20万円程度を見積もる。さらに、研究協力者への謝金として78万円、懸濁溶液の調整に必要不可欠なpHメーター・電気伝導度計の購入経費として20万円、沈降管の製作費に5万円を見込んでいる。また、学会発表の旅費、論文別刷代として15万円を計上する。
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Research Products
(3 results)