2014 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク形成が粘土フロック懸濁液の界面沈降に及ぼす効果
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24580348
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中石 克也 茨城大学, 農学部, 教授 (40180236)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 撹拌沈降 / 振動撹拌 / 界面沈降 |
Outline of Annual Research Achievements |
[はじめに] これまでの研究で凝集懸濁液の界面沈降は、撹拌による影響を強く受けることが明らかになった。このことを踏まえ、本年度は撹拌強度がネットワーク形成にどのように影響を及ぼすのかを検討した。すなわち、振動撹拌で発生した波動とそれによって生じる粘土フロックの浮遊についてその動態を示すとともに、低振動数の撹拌で発生する沈積層の特異的な沈降過程を明らかにした。 [理論] 撹拌沈降速度(静置沈降速度に相当)は撹拌時における懸濁液の流動速度と水面の波動速度(固有振動)との関係で決まる。そこで、強制振動の指標として振動数νと管長Lの2倍との積である流動速度を用い、この流動速度と撹拌水深で決まる波動速度が等しくなる共振理論を導いた。 [実験] 固体体積濃度を0.003~0.007、NaCl濃度0.03mol/l、pH5.0に調整した懸濁試料を撹拌時間と撹拌振動数を変えて撹拌し、撹拌終了後に沈積層が変化しないように静かに立てて静置沈降測定を行った。静置沈降における界面沈降高さは、1/100mm精度の読み取り顕微鏡で測定した。 [得られた知見] ① 強制流動速度と静置沈降速度との関係から波の特性が示され、撹拌沈降から完全浮遊に転じる浮遊点で最も小さい浮遊点は、同一であった。提案した共振理論より撹拌水深を変えて共振点を算定した結果、計算値と実測値は一致した。② 低い振動数で波動と浮遊の関係が明らかにされた。すなわち、撹拌時に沈積層が生じる領域、沈積と浮遊の境界領域、完全浮遊領域の3領域に分けられ、静置沈降による沈降曲線からこれらの領域の変化が確認された。③ 沈積層の沈下開始時でフロックが同一であること、及び最密充填で沈下が変化することが示された。さらに、沈下過程でフロックが同一に保たれ、沈下曲線が試料濃度に依存しないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は科研費交付最後の年でりあり、ネットワーク形成と界面沈降現象の関係を取りまとめるための実験と解析をほぼ終えることができた。特に、界面沈降を支配するネットワーク形成にフロックがどのように寄与するのか、そのメカニズムを明らかにすることができた。すなわち、ネットワーク形成はフロック大きさの指標である膨潤比に大きく左右されるとともに、測定直前に行う凝集懸濁液の撹拌振動がネットワーク形成に大きく寄与することを波の振動の理論解析と撹拌水深を変えた沈降実験によって明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フロックの大きさの指標である膨潤比をより高い精度算定するため、沈降体積の評価方法について若干の検討を行う。これによって、撹拌時間とフロックの膨潤比の関係を詳細に検討することができ、撹拌強度一定下におけるフロック膨潤比の撹拌時間依存性について定量的に評価することが可能となる。これら一連の実験が終わり次第、本研究成果を学術雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
これまで実験、データ解析等はほぼ終了したが、「今後の研究の推進方策等」で述べたように平成27年度に若干の追加実験とデータ解析を行い、研究成果を学術雑誌に発表する。その際に、投稿料と別刷代が必要となることから、平成27年度にそれらの経費を確保する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に向けて学術雑誌(化学工学会)に投稿するため、その投稿料と別刷代の経費として使用する。
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