2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580354
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
紙谷 智彦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40152855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 夏樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90447615)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 農業用水路 / 水湿生植物 / 水位 / 底土の厚さ / 江ざらい / 水路構造 |
Research Abstract |
農業用水路は水田や畦畔と並び水田景観を構成する要素の一つであり、特異な撹乱体制や物理的環境を有している。かつての農業用水路では、そのような環境に応じた水湿生植物が生育していた。しかし、圃場整備に伴う土水路からコンクリート水路への改変が、水路内の環境を一変させ、そこに生育する水湿生植物にも影響を及ぼしたと考えられる。これまで、農業用水路における植物分布を扱った研究はほとんど無く、その実態には不明な点が多い。水田環境に依存する水湿生植物の減少が懸念されている現在、保全地としての農業用水路を評価するための指標が必要である。 そこで本研究は、低地水田地帯の農業用水路における植物の出現と、それを規定する要因を明らかにすることを目的とした。調査は、新潟県越後平野の20地域における121本の農業用水路で行った。植生調査では、各水路内に連続する1㎡の調査枠を10個設置し、夏期と秋季の2回、出現した維管束植物の種名を記録した。また、環境要因として各水路の構造(土水路・二面張り・三面張り)、定期的な水位、底土の厚さ、江ざらいの有無を記録した。 植生調査の結果、出現した植物種は158種で、そのうち在来水湿生種は76種であった。NMSによる序列化によって、種組成は土水路に比べてコンクリート水路で多様であることが明らかになった。しかし、出現種数は土水路に比べてコンクリート水路で有意に少なかった。これら水路構造の違いに加え、適度な水位変動や土砂堆積、用水路と排水路の違いも植物の出現に影響した。 今年度の研究結果から、土水路は多様な水湿生植物が出現するための環境を有しているが、三面張り水路であっても、低土の堆積によって水湿生植物の生育地として機能させ得ると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.末端水路における植生調査については、三面張り,二面張り,土水路の3 つの水路構造に分類し,予定した水路120 路線を対象に予定した植生調査を実施した。 2.植生調査を実施した水路において,水路の水理条件,土壌条件,撹乱条件の調査を行う。ただし、水理条件は、定期的な水位の変動のみを測定した。 3.各水路の植物種多様度を比較するため,Simpson の多様度指数を算出した。また,出現する植物種組成の傾向を把握するため,非計量的多次元尺度法(NMS) により植物の出現頻度を因子とした水路の序列化を行った。 4.各在来水湿生植物種の出現頻度と環境要因との関係は,一般化線形混合モデル(GLMM) を用いて解析を行った。また、希少種・絶滅危惧種の好適水路環境を明らかにするために,それらが出現した調査ラインと出現しなかった調査ライン間で判別分析を行った。 5.植生を考慮した準3 次元非定常流れのモデルについては、植生調査結果をもとに検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査および分析対象は末端水路とした。2年目の調査では対象を支線水路とし,初年度と同様の方法で分析する。調査は、新潟県越後平野の20地域における30本の農業用支線水路で行う。植生調査では、各水路内に連続する1㎡の調査枠を60個設置し、夏期と秋季の2回、出現した維管束植物の種名を記録する。また、環境要因として各水路の構造(土水路・二面張り・三面張り)、定期的な水位、底土の厚さ、江ざらいの有無について、聴き取り調査を行う。また、植物種多様性に富む土水路の水路モデルについて検討し、土水路が有する水理学的特性を明らかにする。特に,流速・水深等と各植物種の空間分布の関係を把握する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の同様の調査を行うために、植生調査と水路の環境調査およびデータのとりまとめに初年度とほぼ同額の謝金と消耗品費を必要とする。また、調査および学会発表のために旅費を必要とする。
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Research Products
(2 results)