2012 Fiscal Year Research-status Report
塩害農地における除塩事業完了後の塩害対策と高度な除塩技術に関する研究
Project/Area Number |
24580359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
千葉 克己 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00352518)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 塩害対策 / 東日本大震災 / モニタリング / 地下水 / 塩分濃度 |
Research Abstract |
東日本太平洋沿岸部の農地は東日本大震災に伴う大津波の浸水による塩害を受けるとともに,地盤が沈下し塩分濃度の高い地下水が相対的に上昇した。このため,従来の縦浸透除塩による除塩対策に加え地下水由来の塩害対策も検討していく必要がある。本研究では津波被災農地における除塩対策後の塩害再発の防止,および地下水由来の塩害対策技術を確立することを目的とし,内陸部の除塩対策済み水田(調査区A)と沿岸部の除塩対策未実施水田(調査区B)においてECセンサ,圧力式水位計,フィールドルータなどを用いて稲作再開後の生育状況,土壌の電気伝導度,地下水の電気伝導度,地下水位などのモニタリングを行った。 調査区Aは平成23年秋に除塩事業が行われ,24年春に稲作が再開された。モニタリングの結果,稲作再開後土壌の電気伝導度は代かきにより低下し,それ以降上昇することはなく,稲の生育も順調であり,塩害の再発はなかった。一方,平成25年度以降の除塩対策が予定されている調査区Bでは,地下水のECは常時20dS/m以上の値で推移しており,常に海水が浸入していること,また地下水位は毎日夕方から早朝にかけて田面下25cm付近に上昇していることが認められた。これより今後の除塩対策を効果的に進め,地下水由来の塩害の発生を防止するためには地下水位の上昇を抑制する必要があると考えられた。このため,土地改良区や県農林水産部と協力し,排水機場の稼働時間と地下水位の動態を検討した。その結果,排水機場を夜間も稼働させることで地下水位の上昇を抑制できることがわかった。したがって,今後沿岸部の津波被災農地において縦浸透法による除塩を進め,復旧後の塩害の発生を防止するためには地下水位の動態を把握し,排水機場の運転で水位の調整が可能かどうかを検討することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度沿岸部の津波被災農地において海水が地下水に浸入し塩分濃度が高くなっていること,またその地下水位が表土付近まで上昇していることを把握できたことは,これまでほとんど報告がされていたかったため,今後の塩害対策を考えるうえで大きな収穫であった。また,名取土地改良区,宮城県農林水産部などと密に連携し,排水機場の運転時間の検討することが今後の塩害対策の一手法になりうることがわかったことも大きな収穫であった。 本調査で用いたECセンサ,圧力式水位計,フィールドルータなどが除塩対策後の水田における稲の生育と土壌の電気伝導度,および沿岸部の地盤沈下した津波被災農地における地下水の電気伝導度,地下水位の動態のモニタリングに有益な機器であることが確認できた。このことは次年度以降の調査を進めるうえで大きな自信となった。 以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度 24年度に購入したモニタリング機器を農地復旧が遅れている宮城県石巻市、東松島市、仙台市、亘理町などの沿岸部の津波被災地に設置し、モニタリング地点を増やして同様の観測を行う。25年度は内陸部の農地復旧が進んだことで灌漑水使用量が増大するため、沿岸部では地下水環境が変化することが予想される。モニタリングによりその動態を把握したい。また排水機場の本復旧が進み、排水機場の稼働時間と地下水位の関係も変化することが予想されるため,その動態も把握したい。これらのデータを分析し,関係土地改良区や宮城県農林水産部などと連携をとりながら沿岸部の津波被災農地に必要な塩害対策技術の確立に役立てていく。 平成26年度 26年度は海岸堤防と排水機場の復旧,宮城県による潮受け水路の造成などにより,沿岸部では引き続き地下水環境が変化することが予想される。このため、25年度と同様の調査を行い地下水環境の動態を把握しながら,必要な塩害対策技術の確立に役立てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費 180,000円 学会発表(東京都,福島県など),現地調査等 人件費・謝金 100,000円 調査・実験補助人件費 その他 220,000円 モニタリング通信費,センサ用バッテリ,電気伝導度センサ(交換用)など
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