2013 Fiscal Year Research-status Report
地域住民の活動意欲に資する農業土木事業の価値形成に関する土木史的研究
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24580360
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
工藤 庸介 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (80305656)
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Keywords | ため池 / 維持管理 / 環境活動 / 参加意欲 / 共分散構造分析 |
Research Abstract |
前年度に選定した兵庫県東播磨地域について、維持管理意欲の構造を明らかにするためのアンケート調査を、前年度に引き続いて実施した。ため池協議会が主催する「ため池クリーンキャンペーン」に参加し、その参加者に対して対面式でアンケート調査を実施することで、単なる数値データに加えて、簡易な聞き取り調査も行うことができた。 その結果、概ね前年度の成果を裏付ける分析結果(規定要因モデル)を得ることができた。農家、非農家のどちらにおいても「相互関係性認知」の因子が他の因子を高める役割を果たしているが、特に非農家でこのパス係数が高く、地域の共同体のあり方が「参加意欲」に大きく影響していると解釈できる。全体の構造としては農家と非農家に大きな違いはないが、農家では「愛着心」と「義務感」が一体となって「保全態度」を形成しているのに対し、非農家はそれぞれが別の意味合いを持つ要因として「保全態度」に影響することが注目に値する。今回の調査は「ため池クリーンキャンペーン」の参加者を対象としたことから、参加意欲の比較的高い層の意識を強く反映した結果、農家と非農家の基本的な構造に大きな差異が見られなかったとも考えられるが、「相互関係性」から「保全態度」に至るパスには明確な違いがあり、「愛着心」と「義務感」の成り立ちを解明することが非農家の参加意欲の構造を明らかにするために必要である。 以上のことから、参加意欲の根底に地域の共同体のあり方が関わっていることが明らかであり、地理的要因や歴史的経緯などの地域特性を踏まえて考察を行うことの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の調査を継続することを優先したため、申請時に想定していた研究フロー(地域の歴史的経緯の整理→現状調査)とは逆の順序で研究が進んでいる。現状調査については概ね十分なデータが得られたが、対象地区の土木史的観点からの調査はまだ端緒についた段階というのが現況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現状の意識調査は可能な範囲で本年度も継続するが、本年度は研究最終年度として、対象地域の歴史的背景や事業あるいは施設の成立背景を、主として文献調査を通して整理することに注力する。そこで得られた知見をもって、これまでに得られた意識構造の分析結果を考察することで、研究目的を達成することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行の順序が変わったため、研究初年度に予定していた文献調査等がまだ実施できておらず、そのための費用が現時点まで残ったためである。また、成果発表が準備段階のため、そのための費用が残っている。 翌年度は、研究とりまとめにかかる物品費(消耗品)とその他費を計上している。それに加えて、当初予定していた文献調査や本年度までの成果について論文発表をするための費用として、次年度使用額を執行する。
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Research Products
(2 results)