2012 Fiscal Year Research-status Report
植物工場における速度変数と利用効率の連続測定による統合環境制御
Project/Area Number |
24580366
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
古在 豊樹 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 名誉教授 (90081570)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 施設園芸 / 植物工場 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は、植物工場(人工光型(閉鎖型)と太陽光型(半閉鎖型)の両方を含む)の稼働時における資源(電気、水、光、CO2、肥料等)の投入量とその植物成長・生産への効果(正味光合成速度、蒸発散速度、収獲量、販売価格、純利益)を計測し、その計測値にもとづき、それぞれの投入資源の利用効率、さらには投入資源の収量・品質等への貢献度(コスト・パフォーマンス)を定量的に解明することが目的である。 申請者は、過去、科学研究費補助金等を得て、この定量的解明を閉鎖型苗生産システムに関して進め、有用な成果を得てきた。本研究では、苗生産システムに関する従来の研究の方法論と成果を、まず、人工光型植物工場に拡張・適用することを目的とした。平成24年度には千葉大学・柏の葉キャンパスに最近設置された実用規模の人工光植物工場(床面積406 m2)において上記方法の有効性を確認し、その結果は、3編の英文原著論文とない、国際誌に掲載された。そして、平成24年度には、この方法論を太陽光植物工場においても展開し得る基礎的知見を得た。 これらの成果はわが国のみならず世界的にも注目され、数多くの国際シンポジウムなどでの招待講演、基調講演において、発表された。今後、これらの研究成果は、統合環境制御における環境制御アルゴリズムの開発とそのアルゴリズムのインテリジェント・コントローラー化に利用され得る。すなわち、投入資源量、利用効率、環境制御による価値創造量増加分を勘案した総合的指標により、省資源・環境保全、高品質・高収量、高コストパーフォーマンスを満たす、環境要因設定値の組み合わせを見出すアルゴリズムの開発、実証および実用化を目指すための基礎的知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究成果は、英文学術国際誌3編に掲載されたこと、数編の総説・解説記事が掲載されたこと、および、国内外の国際シンポジウムなどで約10回にわたり、基調講演、招待講演を行う機会を得たことから、おおむね順調に進展していると言える。具体的には、以下のとおりである。 換気回数Nが小さく、外界気象の変動が室内環境におよぼす影響がきわめて少ない人工光植物工場において、換気回数N,正味光合成速度Cp、暗呼吸速度Rおよび蒸発散速度Wtを推定する方法を考案し、実験的に検証した。その算定手順の大筋は以下のようである。1)植物体と培地の吸水速度Wuを計測する。2)Wuの値などからNを算定する。3)Nと施設内外水蒸気密度差などからWtを算定する、4)昼間(明期)におけるNと施設内外CO2濃度差CioなどからCpを算定する、5)夜間(暗期)におけるNとCioなどから暗呼吸速度Rを算定する。6)Wu、Wtの値などから施設の水利用効率を算定する。7)CpおよびCO2供給速度などの値から施用CO2利用効率を算定する。以上により、植物の基本的生理作用である、光合成、呼吸および蒸散に関する施設内植物の生理特性値、さらには、CO2および水の利用効率が、たとえば、60分毎に算定できる。これらの特性値に関する情報を活かした施設の環境制御を行えば、栽培管理全体がより合理的になる。 従来、植物工場の環境制御は、関連する状態変数(単位に時間を含まない変数)の計測に基づいて行われていた。本方法を採用すれば、状態変数に加えて、正味光合成速度、暗呼吸速度および蒸散速度などの速度変数(単位に時間を含む変数)に基づくことが出来る。速度変数にもとづく環境制御は従来の状態変数に基づく環境制御とは異なる革新性を持ち得る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、第一に、平成24年度に人工光型植物工場において実施した上述の方法を自然光植物工場に適用する方策を可能な順序で実施する。平成24年度において、方法論的および計測誤差の問題が明らかになっているので自然光植物工場への上述の方法論の適用は原理的に可能であると考えられるが、自然光型植物工場の空気容積は人工光植物工場のそれの10倍以上となるので、各環境要因値の空間的な分布が問題となる。これに関わる問題を、多点測定による平均化などで対応し、さらなる検討を続ける。第二に、正味光合成・CO2施用・かん水の各速度、それらの利用効率に基づいて、気温、CO2濃度、かん水速度、気流速度の制御を行うアルゴリズムを開発する。コストは資源投入量に単価を乗じて求め、総コストは各資源のコストの和として求める。 上記の成果を、CO2施用機、細霧発生機およびヒートポンプのインテリジェント・コントローラーのプロトタイプ開発に、企業と協力して、適用する。さらに、最終年度なので、3年間の研究成果のまとめと成果の公表に注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(18 results)