2012 Fiscal Year Research-status Report
植物工場におけるワサビ種子周年生産のための効率的花成誘導法の確立
Project/Area Number |
24580367
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
野末 雅之 信州大学, 繊維学部, 教授 (30135165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 浩義 信州大学, 理学部, 教授 (60205127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Wasabia japonica / 採種 / 花成誘導 / FLC / FT |
Research Abstract |
(1) ワサビ栽培・採種地における環境条件の現地調査:長野県安曇野市のワサビ田にデータロガを2012年10月に設置、環境情報を収集している(現在継続調査中)。 (2) 花成誘導に必要な低温処理期間の確定:FLCの発現は低温処理(4℃)で低下したが、2ヶ月以上経過しても完全には抑制されなかった。FLCが完全に抑制されていない場合でも花芽形成が確認された。長日(16L)および短日(10L)条件ともに、3ヶ月間の低温処理(8℃)でFLC発現が顕著に抑制され、FLC発現抑制に日長は影響しないことがわかった。 (3) 花成誘導能の獲得に必要な定植後の栽培日数の確定:定植後4ヶ月(播種6ヶ月)のワサビを約1ヶ月間、低温処理(10℃)することにより、FLCの発現が顕著に抑制され、長日条件下で花芽が形成された。しかし、定植直後(播種2ヶ月)の幼ワサビ植物体では同様の条件下で4ヶ月経過してもFLC発現抑制はみられず、花芽形成は全く確認できなかった。上記の結果から、人工環境下でのワサビ花成誘導には、定植4ヶ月以上経過したワサビ植物体、最低1ヶ月間の低温処理(4~10℃)および長日条件(14L以上)が必要であることがわかった。 (4)ワサビFT遺伝子発現の定量的解析方法の確立:上記の結果から、ワサビ花芽形成にはFLC発現抑制以外に長日条件下でのFT発現が重要と考えられる。そこで、効率的なFT発現誘導条件を明らかにするために、リアルタイムPCRによるFT遺伝子発現の定量的解析方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」は、(1)ワサビ花成の現地環境調査、(2)閉鎖環境下でのワサビ花成誘導条件、(3)花成誘導後のワサビ種子生産の最適栽培条件をそれぞれ明らかにすることである。 (1)に関しては、現在継続調査中である。 (2)に関しては、人工的閉鎖環境で花成を誘導するために検討する条件は、(i)ワサビ植物体の生育段階、(ii)低温処理によるFLC発現抑制条件(温度、処理時間、光環境)、(iii)花成ホルモンであるFTの発現誘導条件(日長、青色光および遠赤色光の影響、貧栄養等のストレスの影響)である。現在までに、(i)および(ii)についての検討が終了し、ほぼ目的が達成されている。(iii)については、現在までにFT遺伝子発現の定量的解析方法の確立および日周性発現の確認等についての予備的な検討が行われている。FT発現に関する上記の個々の検討項目に関してはまだ達成されていない。今後、直ちに着手する計画である。 (3)に関して、わさび田における採種現場での調査と人工環境下での採種との両方から最適条件(方法)の検討を継続中である。(3)に関する検討は、ワサビ種子の特殊性から、実際の採種現場では極めて重要な課題である。 (1)~(3)の研究目的について、現段階、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書の「研究の目的」に即して、昨年度の研究実績に引き続いて今後の研究を推進する。 具体的には、(1)継続中のワサビ田で環境条件等の現地調査、(2)人工環境下におけるFT遺伝子の発現誘導条件(日長、光質、ストレス)の検討と効率的な花成誘導法の確立、および、FT遺伝子の発現制御に機能しているCO遺伝子の発現調査、(3)花成誘導後の採種を目的とした最適な栽培環境条件の解明である。 また、ワサビ採種現場における課題を整理し、本研究成果を生かした課題解決方法を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了しため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額(265,634円)は、新たに次の実験を行うために使用する。平成25年度はFT遺伝子の発現調査を中心に研究を進める計画であるが、FT遺伝子の発現制御にはCO遺伝子が重要な役割を果たしている。そこで、CO遺伝子のクローニングとPCR用のプライマーを作成し、CO遺伝子の発現調査を行うことで、FT遺伝子発現様式をより詳細に調査する。
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Research Products
(4 results)