2012 Fiscal Year Research-status Report
メタン発酵消化液を用いた養液栽培への接ぎ木苗利用は根圏ストレスの緩和に有効か?
Project/Area Number |
24580374
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10409146)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオマス利用 / メタン発酵 |
Research Abstract |
消化液にはNH4+以外にも,浮遊固形物や微生物といった植物の成長に影響を及ぼすと考えられる成分が含まれており,成長抑制が生じるメカニズムには不明な点が多い.そこで,消化液に含まれるNH4+,浮遊固形物および微生物が,養液栽培下の植物の成長に及ぼす影響について検討した. 無処理の消化液を用いた無処理区,微生物の活性を低下させるため,80°Cで10分間加熱(低温殺菌)した消化液を用いた加熱区,浮遊固形物を除去するため,中空糸膜で濾過した消化液を用いた濾過区,化学肥料培養液を用いた化学肥料区の計4試験区を設けて水耕栽培実験を行った.供試植物はキュウリ(Cucumis sativus L.,‘北進’)とし,子葉展開後の個体を用いた.栽培は人工気象室で9日間行った.培養液の溶存酸素濃度は,エアレーションで3.0~4.0 mg O2 L-1に保った.実験終了時に乾物重などの成長パラメータおよび生存率を求めた. 消化液由来の培養液を用いた試験区では,全個体の根が壊死した.無処理区および加熱区では,実験開始直前の培養液のNH4+-N濃度が濾過区と比較して高くなった.生存率は濾過区>無処理区>加熱区となり,濾過区では枯死個体は見られなかった.消化液由来の培養液を用いた試験区で根の壊死が生じたのは,これらの試験区に共通して含まれるNH4+の影響であると考えられる.無処理区および加熱区で枯死個体が生じたのは,これらの試験区に共通して含まれる浮遊固形物の影響によって,NH4+濃度が増加したためと考えられる.無処理区では,加熱区と比較して生存率が高かったことから,微生物の活性が高い条件下ではNH4+の影響が緩和された可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度において,メタン発酵消化液による養液栽培が植物の成長過程に及ぼす影響を解析するために,形態変化および光合成能力の変化について評価することを計画し,計画通りに研究が進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
高濃度のアンモニウムイオンは,地下部の生理状態の変化を通して,地上部の生理状態および地下部・地上部の形態に影響を及ぼす。本年度の研究および他の研究の最新の知見から,このようなアンモニウムイオンの作用は,硝酸イオンの存在比や植物体地下部の炭水化物量を増加させることで緩和されることがわかってきた。今後も,基本的には申請書の計画通りに研究を遂行するが,以上の知見を踏まえて,消化液中の窒素形態改質も視野に含めながら,窒素の形態や存在比が植物に及ぼす影響に特に注目して解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越した研究費は,物品代として計上する。その他は申請書の計画通りの使用とする。
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Research Products
(8 results)