2013 Fiscal Year Research-status Report
数値気象モデルによる柑橘園地の局所蒸発散量推定法の開発
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24580376
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
植山 秀紀 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター傾斜地園芸研究領域, 主任研究員 (50370630)
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Keywords | 蒸発散 / 柑橘 / 数値予報モデル |
Research Abstract |
本研究では、気象庁の数値予報モデルの出力値等から柑橘園地の気象を把握し、蒸発散量を精密に推定するため、FAOのガイドラインNo.56を応用した手法を開発する。そしてこれには2つの点を明らかにする必要がある。それは、①水分ストレスの違いにより作物係数を変化させる必要があるか②作物係数は、どのような気象条件下であっても一定の値とすることが本当に妥当なのかという点である。そこでまず、人工気象室内において、一定の気象環境下におけるウンシュウミカン樹の水分ストレスと蒸散量との関係について調査した。蒸散量は、樹液流量計で測定し、水分ストレスは最大水ポテンシャルで評価した。さらに、気象条件と作物係数(Kcb)との関係を調査するため、圃場に設置した大型ポットに移植されているウンシュウミカン樹の蒸散量と気温・湿度、放射収支、風向・風速を測定し、ペンマンモンティース法で決定される基準蒸発散量から実蒸散量を決定するための作物係数と気象条件との関係を調査した。このとき蒸散量は、樹液流量計の測定値で評価した。 人工気象室における調査の結果、糖の上昇に有効な水分ストレス(Ψmax0.6)に達するまでは、大きな蒸散低下はみられなかったことから、柑橘栽培においては、樹の生理要因による蒸散の変化は、糖蓄積期まで考慮する必要がないことが示唆された。また、樹の実蒸発散量の計算に必要な作物係数の値は、飽差、日射量及び気温に応じて変化した。これまで同一の係数が用いられてきたが、より正確な蒸散量推定には、気象条件に基づいて作物係数を補正したのち、実蒸散量を計算することが妥当であることが示唆された。 本年度の結果は、3月に北海道大学で開催された日本農業気象学会2014年全国大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度中に蒸発散量の推定モデルを確立し、本年度は精度等の検証のみを行う予定であったが、樹液流等の観測における安定したデータ取得に手間取り、推定モデルの開発に必要なデータ取得しかできなかった。このため作物係数の補正値を作成するための手法を確定するには至っておらず、当初計画よりはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
作物係数の補正値を作成するための手法を本年度前半に確立し、後半にはモデルの精度検証を実施する。モデル精度の検証は、試験圃場だけでなく、実際の果樹園地においても蒸散量、気象データ等の測定を実施し、作成したモデルの実用性を検証する。 補正値の作成法については、気象データによる重回帰モデルの適用を想定している。昨年度の観測結果より気象要素の変化に作物係数が連動することが明らかとなっており、現在の仮説は概ねあてはまるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、相見積もりの実施、パック旅行の利用などにより研究費を効率的に使用した結果発生した残額であり、次年度の研究計画遂行のために使用する。 次年度は、作物係数の補正値決定のためのモデル開発を継続するための試験を継続して行うための消耗品を購入する。また、実際の園地において樹液流測定と気象観測を実施し、蒸散量推定モデルの精度を検証するための旅費及び物品購入に助成金を使用する。さらに、研究成果発表等のための学会参加費と旅費に使用する。今年度の未使用額については、消耗品の購入に割り当てる。
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Research Products
(2 results)