2012 Fiscal Year Research-status Report
湿原湖沼水環境モニタリングのためのスカウト機能を備えたロボットボートの開発
Project/Area Number |
24580378
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海津 裕 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70313070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 浩之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10374620)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 湿原湖沼 / ロボットボート / 水環境 / 自然環境 / モニタリング / スキャニングライダー / 自動サンプリング |
Research Abstract |
本研究の目的は、湿原やため池などの比較的小規模な水域の環境モニタリングをするためのロボットボートを開発することである。その中でもセンサーによって半自律的に航行を行う制御方法の開発を主たる目的とする。本年度は自動スカウティングロボットボートの開発を行った。その中で、以下の3点に関して開発を行った。 1) ボートの軽量化:従来使用していたロボットボートは重量が100 kg程度あり、3人がかりで運ぶ必要があった。そこで、浮き袋式の船体や軽量なアルミフレーム、リチウム電池、電動モータ等を使用することで、約半分の50 kg程度にすることが可能となった。これにより、調査が容易になることが予想される。また、軽量化することで、推進に必要な動力を減らすことができた。 2) エンジンの電動化:これまでは刈り払い機用のエンジンを使用していたが、重量が重い、振動が大きい、騒音がうるさい、故障が多い、精密な回転制御ができない、排気ガスが環境に悪影響を与えるなどの問題があった。そのため、エンジンをブラシレスモータに置き換えた。その結果、これらの問題を全て解決することが可能となった。さらに、電動化により、プロペラを逆転させることができ、ボートを後退させることが可能となった。 3) 汀線自動測量システムの構築: ロボットボートはGPSとコンパスの値により自動的に目標地点に行くことは可能となったが、その途中に予期せぬ障害物(杭や植生)があった場合は引っかかって動けなくなってしまう。そこで、2次元スキャニングライダーをボートに設置した。ボートの位置、方向を用いてライダーの計測結果を補正することでグローバルなマップを構築可能なシステムを開発した。 4) ロボットボートを用いて、湖で航行実験を行った。その結果、経路に対して誤差1 m以内で追従できることが確認された。また、半径2 m以内に停留できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、自動スカウティングロボットボートのベースマシンの開発であった。研究計画においては、1)ボートの軽量化、2)エンジンの高出力化、3)汀線自動測量システムの開発、4)エンジンマウントの回転機構の開発、を目的として挙げた。本研究で用いるロボットボートは、ヒシを始めとする、水草の繁茂した湖沼の航行を可能とするため、水中にプロペラを設置するのではなく、ボート上部にファンを設置し、その推進力によって航行する。そのため推進効率が低いという欠点を備えている。この欠点を克服するためにはボートの軽量化と低抵抗化が必要となる。そこで、従来、樹脂のブロー成形で作られていたボートを浮き袋式のボートに変更することで軽量化を図った。また、軽量なアルミフレームを船体の構造に用いることで、さらなる軽量化を実現した。船体を長くすることで、ボートの前面抵抗を減らした。その結果、従来よりも低いプロペラ回転数で同等の航行速度を実現した。これにより、エンジンの高出力化をすることなく、航行性能の向上を行うことができた。駆動部分にブラシレスモータを使うことで、軽量化や制御性の向上などが実現した。ただし、モータを使うと、ガソリンエンジンと比較して、バッテリーの消耗が多い。しかし、ボート全体が軽量化したことにより、この問題を相殺することができた。汀線自動測量システムの開発においては、レーザスキャナをボートに設置し、GPSコンパスによって得られた位置と、方向を用いて、スキャナによって計測した障害物や岸の位置を地上絶対座標系に変換した。ただし、自動障害物回避機能および汀線追従航行機能の実装については来年度の課題とする。エンジンマウントの回転機構は、装置が複雑になり、重量が増すことから、行わないこととした。本年度の実験結果より左右のエンジン回転の制御により十分な旋回性能を有することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は以下の3点である。1)レーザスキャナを用いた自動障害物回避アルゴリズム及び汀線追従航行アルゴリズムの実装、2)自動水質サンプリング装置の開発、3)実際の湖沼における航行実験。 1)については、前年度までに測定システムが完成したものの、現段階ではボートが自律的に障害物を回避したり、岸に沿って自動的に航行したりすることはできない。ロボティクスの分野においては移動ロボットの位置認識とマッピングを同時に行うSLAM(Simultaneous localization and mapping)という手法が開発されている。このアルゴリズムを本システムに適用できるように改良を行う。本システムで用いているGPSコンパスは位置精度が1 m、方位精度が0.5 °だが、アルゴリズムを使用することで精度の向上が期待できる。 2)については、水質サンプリングプローブとコントローラを一体化したユニットを任意の深さに沈めることが可能なシステムを開発する。ウインチとして、ステッピングモータを用い、精密な位置制御を行う。 3)については、開発したロボットボートを、実際の湖沼で航行させ、水質のマッピングと、汀線マッピングを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降の研究費は、ボートの改良、故障部品の交換、現地研究の旅費、学会発表等に用いる。ボートの改良部品としては、コントローラ、電子部品、アルミフレームなどの構造部品等が挙げられる。故障部品の交換として、バッテリー、モータなどの駆動部品などが挙げられる。現地研究の旅費としては、ボートの運搬費、交通費、宿泊費などを想定している。次年度以降、国内および国外の学会に複数発表する予定である。また、学会誌への投稿料にも使用する予定である。
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