2012 Fiscal Year Research-status Report
映像観測解析技術による傾斜農耕地からの土壌および環境汚染物質流去動態の解明
Project/Area Number |
24580381
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
芝山 道郎 鹿児島大学, 農学部, 教授 (10354060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 薫 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (70355551)
板橋 直 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (80354009)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 画像処理 / 傾斜農耕地 / 土壌懸濁水 / 栄養塩 / 重金属 |
Research Abstract |
近年の激甚降雨の多発にともない傾斜農耕地では降雨時に土壌粒子・肥料成分・重金属さらには地域によって放射性降下物等を含んだ表面流が生じ、流域排水系、居住地、交通路や自然生態系への流れ込みによる負荷増大が危惧される。そこで傾斜農耕地からの環境負荷実態予測モデルを改良するため、従来の直接サンプリング法に加えてデジタル画像の自動撮影とリモートセンシングなど先端分野で開発されつつある最新の画像処理技術を組み合わせて、迅速・低コストの表面流出量および土壌由来懸濁物濃度等の水質の新たな近接自動無人計測手法を開発するとともに生産現場における流出量と有害重金属負荷量との関係をサンプル分析により明らかにする。 24年度は、(1)現有の降雨感知カメラまたはその改良版を人工傾斜畑施設に設置し、豪雨時の表面流去の模様を撮影した。可視カラー画像へのスケール写し込みと土壌・水面判別法のアルゴリズムを作成し、瞬時表面水量の推定方法を検討した。(2)水面上の浮遊物などを利用した粒子画像速度計測法(PIV)適用の可能性を検討する目的で、現有カメラよりも高速度で撮影可能なシステムを導入した。撮影装置を試作し、撮影方向や距離、画像の分解能および撮影インターバルなどに関する基礎的な室内実験を準備している段階である。(3)(1)においてカメラ撮影と同時に、採水ロボットによる流去水のサンプリングを行った。人工傾斜畑に、有機物施用処理区を設けて、流出量および流出水に含有される栄養塩類(リン、窒素)および重金属類(亜鉛など)を分別定量分析した。黒ボク土傾斜枠における降雨-表面流出モニタリングの結果、豚ぷん施用区の降雨流出率は黄色土と比較して同程度か、むしろ高い可能性が指摘された。(4)ある高冷地野菜団地にテストサイトを選定し、3ヶ月程度の連続モニタリング実証試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度途中の8月に研究代表者の勤務先が独法研究所から国立大学法人に変わり、さらに関東から九州への転出を伴ったことなどから、特に画像撮影の野外実験時のトラブルの発見が遅れ、データの一部が欠測となってしまった。また新規の撮影装置の設計および試作品のテストが、研究環境の整備などに時間を要していることにより、当初の年度計画より遅れ気味となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
茨城県つくば市の人工傾斜畑において、24年度に実施した流出過程の画像撮影と流量および懸濁物質量等の計測実験を再度実施する。流出時の時系列画像と流出実測値とのつきあわせにより、画像による流出量推定の可能性を検討する。前年度に試作した流出検出センサを装備した動画撮影システムの動作試験やパラメータ設定実験を室内および水流模擬実験施設などで実施する。黒ボク土充填人工傾斜枠において昨年度までに観測された流出率は、既存の流出モデル(WEPP)を用いた結果よりも顕著に小さく、この一因として、モデル内で土壌水分変動が適切に表現されていない可能性が考えられた。そこで黒ボク土傾斜畑を対象に、降雨による表面流出を妥当に表現する数値モデルを選定または構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動画撮影システムを改良するとともに現在、カメラ一台のところを2眼化して少なくとも2つの処理区を比較できるような装置とする。つくばの人工傾斜枠では、自然降雨による表面流出の撮影と同時に、流出量、懸濁物、栄養塩ならびに重金属類の定量分析を前年度に引き続き実施する予定である。今年度は傾斜度5°および7°の人工傾斜枠それぞれ2面、合計4面に撮影システムと流出量観測システムを設置し、有機物施用および作物生育と土壌水分・流出量を同時観測する目的で、すでに開発済みの静止画撮影システムを設置する。装置設置および分析に要する経費を支出する計画である。
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