2013 Fiscal Year Research-status Report
腸管栄養吸収を制御するケミカルセンサーの解析と動物資源生産への応用
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24580391
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
松本 由樹 香川大学, 農学部, 准教授 (90335844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 高円 香川大学, 農学部, 教授 (50111232)
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Keywords | 動物生命科学 / 動物生産科学 / 腸管上皮吸収形態 / 走査型電子顕微鏡 / AP2α / Gelsolin / Collagen / 立体構築 |
Research Abstract |
近年、食用米に含まれるmicro RNA(MIR156a)の機能性解析がすすみ、哺乳動物では、栄養吸収を盛んに行う消化器系での取り込み制御を通じて、生体機能内のコレステロール値を直接低下させる可能性が報告されつつある。これらは、栄養成分の取り込みメカニズムを客観的に評価する事により、新しい機能性飼料や添加物の開発に繋がり、強いては、動物生産科学の新しい発想をもたらすと考えられる。 申請者らは長年にわたり飼料添加物(木酢酸、シリカゲル、乳酸菌、粉末生姜、酵母等)を家禽に給餌し、腸管上皮形態に注目した機能解析を行ってきた。結果の多くは、家禽の増体効果を介した畜産農家へ貢献に繋がったが、腸管上皮形態を電子顕微鏡(SEM)標本の客観的評価は十分に確立できていない。 これまでに、家禽の飼育試験で得られた成果には、腸管上皮の基底部陰窩部における細胞周期制御で活性化に伴うAP2α発現の増加を示してきた (Histol. Histopathol.2011)。更なる解析の結果、栄養吸収機能の亢進に伴う腸管上皮の表面構造変化と共にGelsolinやCollagen発現が伴うことも明らかになった(投稿準備中)。 乳酸菌等の付与による効果は、腸管上皮形態の隆起部でカルシウム制御性のアクチン結合タンパクとして栄養分の取り込みに働くと考えられ、アクチン重合分子発現が腸内ホメオスタシスを調整に関わる(投稿中)。さらに、消化器系の中でも十二指腸のAP2α発現は異なっており、Solute carrier family等を介したミネラルや脂質吸収への影響について現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家禽の消化器は、既に優れた栄養分の消化・吸収能を有しているが、さらなる家禽生産の効率化に向けた選択肢は極端に少ない。本研究期間には、次の1)~5)の解明を通して貢献したい。 1)試験飼育期間の短縮を目指すために、増体変化を予測できる内因性分子マーカーとしてのGelsolin動態を検証し、家禽生産の現場で活用できるよう実用化に向けた解析を行う。(現在、投稿中) 2)吸収上皮形態を3次元的に解析し客観的評価法の確立とGelsolin発現の相関性を明らかにする。(現在、投稿準備中) 3)AP2αとGelsolinの相関は、レポーターアッセイなどで確認後、家禽生産における機能性飼料(酸性・塩基性成分)と腸管での吸収性評価に応用する。(現在、実施中) 4)栄養物質の取り込み量の増加(形態変化)には、細胞死の抑制機能(Gelsolinによる効果)が増強されると報告されているが、この分子メカニズムをGelsolinとEEA1発現、遺伝要因と環境要因との相関解析を検討する。(現在、リバイス中) 5)Gelsolinは、タンパクやカルシウムと複合体を形成し、血中や神経軸索内を移動できる。十二指腸での栄養吸収が促進された家禽では、延髄孤束核および迷走神経支配を受けることから、増体変化、卵殻や骨形成に伴い血中や脳(脳脊髄液中)のGelsolin量も上昇することを実践的な環境下で明らかにしたい。(実施済み、投稿準備中)
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Strategy for Future Research Activity |
①Gelsolinの取り込み作用と脂質排出に関わるAP2αの連携作用 GelsolinとEEA1(初期の取り込みマーカー)結果は、内部まで入り込む小型の小胞が多数局在しており、初期過程に関わるアクチンとエンドサイトーシスとの関係に新たな役割が存在すると考えた。F-アクチンの重合や再編成の促進は、エフリンシグナルを介した小胞融合の阻害や再編成に関わり、細胞膜表面の強度変化と関わる。また、Gelsolin遺伝子発現に関わる転写因子AP2αの作用機序の解明のためにクロマチン免疫沈降法(ChIP)を行う。 ②十二指腸における迷走神経支配とAP2α、Gelsolinの機能解析 Gelsolinはタンパクやカルシウムと複合体を形成し、血中や神経軸索内を移動する性質を持つ。また、血管形成にかかわる分子エフリンは、細胞増殖だけでなく神経の走行性にも関わる事から、十二指腸を支配する迷走神経とGelsolinやCollagen等の細胞接着因子の機能的安定性との関係を明らかにする。レクチン類(WGA, C型レクチン等)は、糖鎖を利用しシナプス輸送時に複合体を形成し、神経細胞膜affinityを調節する。十二指腸での栄養吸収が促進された家禽は、延髄孤束核および迷走神経支配を受け、骨や卵殻形成に伴い血中や脳(脳脊髄液中)のGelsolin量が増加するとされる。これら本研究を通して、十二指腸における腸管吸収機能を活性化することによる全く新しい家禽の増体制御の誘導技術を確立したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬の価格が想定していた金額よりも安価で購入できたから。 本年度分配金と併合して試薬購入を行う。
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Research Products
(10 results)