2012 Fiscal Year Research-status Report
胎内発育の違いによって脂肪蓄積特性は不可逆的にプログラミングされるのか?
Project/Area Number |
24580404
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松崎 正敏 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10355688)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 該当無し |
Research Abstract |
胎内発育制御により肉用家畜の生理特性を不可逆的に変化(プログラミング)させ、産肉性向上を図る新たな飼育技術の開発を目指して、妊娠めん羊の栄養制御による胎子発育抑制モデルの作出を試み産子の脂肪蓄積特性に対する影響を調べた。 妊娠後期のめん羊に低タンパク質含量の飼料を給与すると分娩までの増体が抑制され、双胎産子について比較すると対照群よりも生時体重が小さくなった。出生後は同一の飼養条件で成長試験を行って成長能力や生理特性を評価した後、おおむね性成熟期に達した6ヵ月齢でと畜して、体脂肪蓄積や脂肪組織の分布を調べた。加えて、脂肪細胞の分化ステージによって発現レベルの異なるC/EBP-β、PPAR-γおよびレプチンのmRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法により定量した。 結果の概要:1.低タンパク群の産子は出生~離乳(8週齢)までの増体が優れる傾向がみられた。2.脂肪蓄積に関わる内分泌特性を評価するために5~6ヵ月齢に糖およびインスリンの負荷試験を実施したが、母めん羊の妊娠中の給与タンパク質レベルによる影響はみられなかった。3.内臓脂肪の蓄積量および分布(腎周囲、大網膜あるいは腸間膜)にも、母めん羊の妊娠中の栄養制御による明らかな傾向は認められなかった。4.脂肪細胞の分化ないし成熟ステージの指標として測定した遺伝子群の発現レベルは皮下脂肪では群間差がみられなかった。一方、腎臓脂肪においては、低タンパク群の産子でC/EBP-βの発現レベルが低く、レプチンのそれは高かったことから、低タンパク群産子では脂肪細胞の成熟が進行していることが伺われた。 以上の結果は、母めん羊の妊娠後期の摂取タンパク水準が、産子の胎子期および新生子期の成長履歴を変化させ、脂肪細胞の分化・成熟ステージに影響しうることを示唆するものであり興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠後期のめん羊に給与する飼料の化学組成変化により、産子数の揃った産子の生時体重を変化させることが出来た。低タンパク給与による胎子発育抑制は生時体重の1割程度の低下に過ぎないが、出生後の産子の活力に悪影響は認められなかった。このことは、安全で実用可能な胎子発育制御による新たな飼育技術に応用可能なものと評価できる。 産子数と産子の性別が制御できないため、実験例数の確保が容易ではないが、おおむね計画通りに研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠後期の低タンパク給与による胎子発育抑制モデルが作出できたので、実験例数を積み重ねて当初計画通りの脂肪蓄積特性評価に必要な測定項目の解析を進める。また、今年度後半からは、胎子発育促進が期待される妊娠中後期の母めん羊の剪毛(毛刈り)の効果の検証に着手して、当初計画した胎子発育の抑制と促進のそれぞれについて脂肪蓄積特性に対するプログラミング効果を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の執行額調整の際に生じた次年度使用予定の残額(485円)は少額なため、次年度の研究費使用計画に影響は小さく当初の計画どおりに研究費を使用する。
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