2013 Fiscal Year Research-status Report
胎内発育の違いによって脂肪蓄積特性は不可逆的にプログラミングされるのか?
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24580404
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松崎 正敏 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10355688)
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Keywords | プログラミング現象 / 脂肪蓄積特性 |
Research Abstract |
胎内発育制御により肉用家畜の生理特性を不可逆的に変化(プログラミング)させ、産肉性向上を図る新たな家畜飼育技術の開発を目指して、めん羊妊娠後期の栄養制御による胎子発育抑制モデルの作出を試み産子の脂肪蓄積特性に対する影響を調査した。 妊娠後期のめん羊に低タンパク飼料を給与する低タンパク群と適正タンパク飼料を給与する適正タンパク群を各10頭用意して分娩成績を調査したところ、生時体重には差はみられなかった。出生後の産子は同一条件で飼育して成長特性を調査した後、性成熟に到達する6ヵ月齢時にと畜調査を行って蓄積脂肪の分布を調べた。産子の出生後の増体速度は低タンパク群で優れることが明らかとなった。また、内臓脂肪の部位ごとの重量を調査したところ、低タンパク群の産子は腸間膜脂肪組織の相対重量が大きくなることが明らかとなった。これらの増体速度や内臓脂肪蓄積量に対する妊娠中の低タンパク質給与によるキャッチアップ効果は雄個体においてより明瞭に認められた。 と畜調査時に採取した腎臓脂肪と皮下脂肪の新鮮試料について、脂肪細胞分化ステージの進行に伴って発現量が変化するC/EBP-β、PPAR-γならびにレプチンのmRNAレベルをリアルタイムPCR法により調べた。その結果、腎臓脂肪において、低タンパク群の産子でレプチンのmRNAレベルが上昇する傾向が認められたのを除いて、顕著な変化は認められなかった。 以上の結果から、妊娠後期の母めん羊に対する栄養制御は胎子発育に顕著な影響を及ぼさないものの、出生後の増体速度や内臓脂肪の蓄積量には不可逆的なプログラミング効果を有することが示唆された。脂肪組織における遺伝子発現パターンに明らかな差がみられなかったことから、栄養素の分配調節などを介する機構の存在が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたエネルギー給与制限の検討よりもタンパク栄養制限による影響に注力して、一定規模の試験を完了することができた。シンク(容れ物)に相当する脂肪組織における遺伝子発現パターンへの影響とは異なるメカニズムにより、胎子期の栄養環境が脂肪蓄積特性に不可逆的な影響を及ぼしていることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
胎子発育の促進効果が報告されている妊娠母めん羊の妊娠中後期における剪毛(毛刈り)の効果を検証する。脂肪蓄積特性を決定づける要因としての栄養素の分配調節への影響も検討項目に加えて、研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の執行額調整の際に研究目的に合致した物品の調達が不要であったため。 年度末の執行額調整の際に生じた次年度使用予定の残額(799円)は少額のため、次年度の研究費使用計画に影響は小さく当初の計画通りに研究費を使用する。
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