2014 Fiscal Year Research-status Report
ブタアディポネクチン遺伝子の多型で背脂肪厚の違いを説明する
Project/Area Number |
24580417
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中島 郁世 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 主任研究員 (60355063)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 畜産学 / 生理活性 / ブタ / 皮下脂肪 / アディポネクチン / 品種間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブタアディポネクチンアミノ酸配列に基づき抗原ペプチドを3種設計し、それぞれ6週齢のBALB/cマウスに免疫した。1つ目の抗原ペプチドによる抗体は全長ブタアディポネクチンタンパク質に応答せず、2つ目のC末端側complement component C1q領域を抗原としたペプチドでは抗体価の上昇が認められなかった。そこで3つ目のN末端側variable領域の抗原ペプチドで免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞とSPII細胞の融合によりハイブリドーマを作出し、スクリーニングとクローニングを繰り返した後、最終的にブタアディポネクチンタンパク質に応答する抗体産生株16クローンを得た。何れの抗体もアイソタイプはκ軽鎖のIgMであった。その中で抗体価の高いクローンを一つ選出し、ハイブリドーマの培養上清を精製した抗体を試験に用いた。まずウェスタンブロットにより、作出したモノクローナル抗体が市販の標識ブタアディポネクチンタンパク質に対して抗標識抗体を用いた場合と同等のバンドパターンを示すことを確認した。次いで、ブタ血清を用いて非加熱・非還元下でウェスタンブロットを行った結果、複数のバンドを検出した。更にブタ血清試料を加熱・還元下においてウェスタンブロットを行った結果、アディポネクチンタンパク質の単量体の分子量に相当する30kDa付近にバンドを認めた。作出した本モノクローナル抗体が、単量体から多量体に及ぶ多様なブタアディポネクチン分子形態を検出可能であることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、遺伝的に背脂肪の厚い梅山豚と薄いランドレース2品種間でmRNA発現量差が見られたアディポネクチンの多型に着目し、①ブタアディポネクチンタンパク質の分子形態検出系を確立する、②1アミノ酸置換がアディポネクチンタンパク質の分子形態に違いをもたらすかどうか明らかにする、③分子形態の異なるアディポネクチンの脂肪細胞に及ぼす影響を明らかにすることで両品種間の背脂肪厚(脂肪量)の違いを説明することを目的としている。 今年度、抗ブタアディポネクチンモノクローナル抗体を作出したことでようやく①を実行する実験系を確立するに至った。培養細胞を用いた強制発現試験の結果から②の違いが認められない可能性があるものの、実際に脂肪量の異なる生体においてアディポネクチン分子形態の違いの有無を確認する必要がある。脂肪量に差のあるブタの血液試料は既に採取済みであることから、本研究状況は”やや遅れている”とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝的に背脂肪厚の異なるランドレースと梅山豚間で見られるアディポネクチンの多型がアディポネクチン高分子多量体形成に影響を及ぼすかどうかを明らかにするためには、ブタアディポネクチンに応答するのみならず多様な分子形態の違いを認識する抗ブタアディポネクチン抗体が必須である。今年度、単量体から多量体に及ぶ多様なブタアディポネクチン分子形態を検出可能なモノクローナル抗体の作出に成功したことから、皮下脂肪厚(脂肪量)の異なるブタにおける血液中アディポネクチン量およびその分子形態をウェスタンブロットにより比較する。
|
Causes of Carryover |
26年度に、ブタアディポネクチンタンパク質に対するモノクローナル抗体をようやく作出するに至った。実際に背脂肪厚(脂肪量)の異なるブタ品種より採取した血液試料を用いてアディポネクチンの量と質について解析し発表する予定であったが、目的とするモノクローナル抗体がなかなか得られなかったためその後の解析が停滞した。また、取得した抗体を用いたELISAによる血液中アディポネクチンの定量方法が確立されず、その後の腹水によるモノクローナル抗体の大量生産等の精製工程に着手できなかったため未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、上記作出済みの抗体を用いてブタ血液中のアディポネクチン分子形態をウェスタンブロットにより解析する。また、26年度作出した抗体とは別の抗原部位を認識するモノクローナル抗体を更に作出し、2種の抗体を用いるサンドイッチELISAによるブタ血液中アディポネクチンタンパク質の測定法の確立とともにウェスタンブロットによるアディポネクチン分子形態の解析を合わせて行うことで、未使用額はその経費に充てることとする。
|
Research Products
(1 results)