2012 Fiscal Year Research-status Report
黄砂・ナノ粒子の生体影響:多重曝露後のナノ粒子の挙動
Project/Area Number |
24580425
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
島田 章則 麻布大学, その他部局等, 教授 (20216055)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黄砂 / 肺 / 肉芽腫 / 急性 / 慢性 / 炎症 / マウス / 気管内投与 |
Research Abstract |
黄砂およびPM2.5の頻度および車両の交通量増加に伴う浮遊粒子状物質(黄砂、排気ガス中の微細粒子)の健康への影響を検討する目的で、平成24年度は、マウスの気道に黄砂を曝露し、それによる肺への影響(急性、慢性毒性)を病理学的に明らかにすることを目的とした。特に、当該年度に中国からの越境大気汚染(黄砂、PM2.5)が深刻であることが判明し、我が国において大きな関心を呼んだことから、本課題の意義・重要性を改めて確認した。 実験により、急性期では、肺胞壁の傷害像(電顕レベルでの肺胞上皮細胞の剥離、肺胞上皮細胞間の間隙形成、血管内皮細胞・肺胞上皮細胞細胞質内の小空胞形成:物質輸送を示唆)、すなわち空気血液関門の脆弱化を示唆する所見が見られた。黄砂発生時に、野外で排気ガスや越境大気汚染物質(PM2.5)を同時に曝露(多重曝露)されると、黄砂の急性傷害により他の粒子状物質が肺から体循環系に侵入する危険性があることが示唆された。また、慢性期では、肺内に黄砂粒子が蓄積・存続すること、蓄積した粒子周囲にマクロファージが集積し肉芽腫性変化(塵肺症の患者に見られる所見と同質)が起こり肉芽腫性炎症が存続すること、その現象にプロテアーゼ活性化、線維化が時期を変えて関わることが示された。肉芽腫性炎症巣は、主にマクロファージおよびTリンパ球の集簇から構成され、消褪することなく肺組織内に存続することから、塵肺症患者で知られているように、結核に罹患しやすくなることを含め免疫系への影響に注意が必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験で、黄砂の急性(24時間)、慢性(4か月)毒性についての病理学的所見が得られた。急性期では、肺胞壁の傷害像(電顕レベルでの肺胞上皮細胞の剥離、肺胞上皮細胞間の間隙形成、血管内皮細胞・肺胞上皮細胞細胞質内の小空胞形成:物質輸送を示唆)、すなわち空気血液関門の脆弱化を示唆する所見が見られた。慢性期では、黄砂粒子が蓄積すること、蓄積した粒子周囲にマクロファージが集積し肉芽腫性変化(塵肺症の患者に見られる所見と同質)が起こること、その現象にプロテアーゼ活性化、線維化が時期を変えて関わることが示された。これらの急性・慢性所見は、当初の計画で期待された成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実験で、黄砂の急性(24時間)、慢性(4か月)毒性についての病理学的所見が得られた。急性期では、肺胞壁の傷害像、すなわち空気血液関門の脆弱化を示唆する所見が見られた。平成25年度は、当初の計画どおり、黄砂曝露後のマウスの気道にナノサイズの粒子(PM2.5)を含む粒子状物質を曝露し、粒子が肺胞壁を突破し体循環に侵入するかどうかに注目し詳細な解析(病理学、分析化学)を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験:動物(マウス)40万円、試薬(金コロイド粒子、黄砂標準物質、免疫組織化学用抗体、サイトカイン測定用プレート、電顕解析用の染色液)20万円、消耗品(硝子器具)4万円、研究謝金(実験補助、データ解析)10万円、組織標本作製外注36万円 合計110万円 旅費(研究打ち合わせ、学会発表)50万円
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Research Products
(2 results)