2013 Fiscal Year Research-status Report
疼痛伝達脊髄二次ニューロンにおけるガスメッセンジャーの機能解明
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24580426
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
高橋 賢次 鳥取大学, 農学部, 准教授 (00400143)
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Keywords | 疼痛 / 知覚神経 / ガスメッセンジャー / 硫化水素 |
Research Abstract |
今年度は昨年度得られた知見をもとにさらに詳細な解析を推進した。知覚神経二次ニューロンの伝達に対するガスメッセンジャーの役割を試験した。解析を進めるに当たり、昨年度確立したラット脊髄スライス標本を用いたパッチクランプ法を用いた。すなわち、脊髄後角第II層に存在する興奮性知覚神経二次ニューロンおよび抑制性介在ニューロンのactivityを検出した。 今年度の解析においては、昨年度応答が見られたガスメッセンジャーの1つである硫化水素の作用の詳細を明らかにすることを目的とした。硫化水素は知覚神経の侵害受容器として機能するTRPチャネルの1つであるTRPA1チャネルに作用し知覚神経を興奮することを既に明らかにしている。本実験系で見られた知覚神経二次ニューロンの活性化がTRPA1チャネルによるものかどうかを解析した。硫化水素(1 mM)に応答したニューロンに対して、TRPA1チャネルの阻害薬であるHC030031(10 μM)存在下で硫化水素を適用したところ、硫化水素による活性化が抑制されたニューロンと抑制されなかったニューロンが見られた。従って、硫化水素はTRPA1チャネルだけでなく他のチャネルにも作用することが示唆された。また、二次ニューロンの活性化には知覚神経一次ニューロンから直接接続するシナプスの活性化による場合と一次ニューロンの興奮伝導を介した場合が考えられている。そこで、興奮伝導を遮断するテトロドトキシン存在下で硫化水素の活性化を測定した。その結果、テトロドトキシン存在下でも硫化水素による神経興奮が見られたことから、硫化水素は接続する前シナプスもしくは二次ニューロン自体に直接作用する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は硫化水素による知覚神経二次ニューロンの興奮作用の詳細を明らかにすることを目的とした。これまでにも硫化水素は様々なチャネルに作用することが報告されているが、知覚神経二次ニューロンに対してTRPA1チャネルの関与がある可能性を評価することができた。また、硫化水素が一次ニューロンと形成するシナプスに対して作用する可能性が明らかとなった。次年度は、硫化水素が作用する全体像を明らかにすることを継続しつつ、他のガスメッセンジャーとの相互作用についても検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度および25年度で得られた知見をもとにより詳細な解析を進め、知覚神経二次ニューロンに対する硫化水素の作用の全容を明らかにする。可能性のあるチャネルの遮断薬を用いて硫化水素の作用点を明らかにする。更には、25年度に着手できなかった病態モデルを用いて、実際に硫化水素が内因性に作用しうるかを解析する。また、他のガスメッセンジャーの単独作用あるいはそれらの複合的な作用の知見を得ることを試みる。26年度は本研究期間の最終年度であり、成果をまとめつつ更なる研究のシーズを発掘することも合わせて検討することを念頭に置きつつ推進する。
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