2013 Fiscal Year Research-status Report
神経疾患におけるビタミンB12の機能とその治療法への適用
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24580428
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹中 重雄 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10280067)
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Keywords | ビタミンB12 / 神経細胞 / メチルマロン酸 / 分化 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
ビタミンB12(VB12)は必須の栄養素であり、その欠乏によって巨赤芽球性貧血や様々な神経症状が生じる。近年ではアルツアイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症患者の血中VB12の低下が報告されている。しかしながら、VB12と神経疾患の関係性明らかにされていない。そこで、培養神経細胞をモデルにしたVB12欠乏状態を作製し、メタボロミクス解析からその影響を明らかにすることを試みた。また、犬の自然発症てんかん症例の脳脊髄液メタボロミクス解析を実施し、その代謝変動を検証した。 テトラサイクリンによってVB12代謝酵素遺伝子CblBの発現を抑制する系を作製し、VB12欠乏モデルの作製に成功した。肝臓由来のHepG2細胞においてはVB12の指標となるメチルマロン酸が蓄積されることをメタボロミクス解析から明らかにした。神経細胞モデルとしてSH-SY5Yを用いて神経細胞の特徴である分化誘導時の樹状突起を形成への影響を検討した結果、樹状突起の形成が著しく抑制されることがわかった。また、CblB以外に異なる二つの代謝酵素抑制系においても同様の結果が得られた。一方、代謝への影響を検討するため、メタボロミクス実験を実施したが、CblB抑制細胞でメチルマロン酸の蓄積は認められなかった。さらにミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の低下も認められなかった。これまでに神経細胞や肝細胞でのVB12欠乏の影響はメチルマロン酸の蓄積によるミトコンドリアエネルギー代謝の低下であることが示されてきたが、神経細胞においてはそのような減少が認められないにも関わらず、神経細胞の樹状突起の形成が抑制されたことから、神経細胞の分化においてVB12を利用する未知の仕組みの存在が示唆された。また、犬のてんかん症例の脳脊髄液の代謝プロファイルは正常なものと異なることが示唆されたことから、様々な疾患による代謝プロファイル変化を収集し、それらのモデル実験系と比較することの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VB12代謝異常細胞モデルを作製し、肝細胞においてはVB12欠乏症の特徴を見出すことができた。同様の手法で神経細胞モデルを製作し、VB12代謝異常状態において神経細胞様分化が抑制されることを明らかにしたが、そのメカニズムは当初に想定していたメチルマロン酸蓄積によるミトコンドリアエネルギー代謝抑制とは異なっていた。また、メチルマロン酸を蓄積しないVB12代謝異常モデルにおいても同様に神経細胞様分化抑制が見られたことから、神経細胞分化の抑制はメチルマロン酸やホモシステイン蓄積と異なるVB12が関わる新たな経路の存在が考えられる。その為、当初予定とは異なるアプローチから、その存在を検証する必要が生じている。特に神経細胞分化の状況を明確にすることが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
VB12代謝異常細胞モデルを作製し、肝細胞においてはVB12欠乏症の特徴を見出すことができた。同様の手法で神経細胞モデルを製作し、VB12代謝異常状態において神経細胞様分化が抑制されることを明らかにしたが、そのメカニズムは当初に想定していたメチルマロン酸蓄積によるミトコンドリアエネルギー代謝抑制とは異なっていた。また、メチルマロン酸を蓄積しないVB12代謝異常モデルにおいても同様に神経細胞様分化抑制が見られたことから、神経細胞分化にVB12が関わる新たな経路の存在が考えられる。従って、その分化状態を明確にすべく、SH-SY5Y細胞における分化マーカーの検証を行う準備をしている。特に神経線維タンパク質の発現とその局在から分化レベルの検証を行う予定である。また、細胞の構成タンパク質に関する検討を行うため、二次元電気泳動とプロテオミクスを組み合わせた検証の準備を行っている。さらに当初計画にあるGCMSを用いた引き続きメタボロミクス的アプローチを実施し、代謝レベルの変動を検証する。
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