2013 Fiscal Year Research-status Report
単球/マクロファージに発現するEphA2の機能解析と炎症血管標的分子としての評価
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24580429
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小川 和重 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (60231221)
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Keywords | EphA2 / ephrin-A1 / 血管内皮細胞 / 単球 / マクロファージ |
Research Abstract |
平成25年度は次の研究を行った。 1.shRNAプラスミドの作製とノックダウン(KD)効果の検証:ヒトとマウスのEphA2とephrin-A1に対し,遺伝子発現のKD効果が予想されるshRNAを設計しpRNATプラスミドに挿入した。全長のEphA2あるいはephrin-A1 を発現するプラスミドとともにcos-7細胞へ遺伝子導入して,KD効果をRT-PCRとウエスタンブロットにより検証した。その結果,ヒトとマウスのEphA2では80%以上のKD効果を示すプラスミドの作製に成功した。ephrin-A1については十分なKD効果が得られていない。shRNAを再設計しKD効果の検証実験を進めている。 2.単球/マクロファージ(MΦ)の接着および血管内皮細胞(EC)層通過機構とEphA2/ephrin-A1(in vitroの実験):(1)Stripe assay法を開発した。この方法で単球/MΦはephrin-A1及びEphA2と結合すると,接着が促進され突起形成が誘導されることを明らかにした。(2)トランスウェルを用いた実験によりJ774.1(単球/MΦ系細胞株)はephrin-A1の活性化により遊走能が上昇することが判明した。(3)J774.1において EphA2発現がKDしたGFP陽性の安定発現株が2株得られている。 3. 脾臓におけるEphA2/ephrin-A1発現:マウス脾臓において脾洞および赤脾髄のECにEphA2およびephrin-A1が発現することを明らかにした。赤脾髄に分布するER-TR7(細網細胞マーカー)陽性細胞はEphA2を強く発現することも判明した。これらの結果から,脾臓は本研究のin vivo実験に適する器官であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は以下の4項目の実験計画を立てた。(1)EphA2とephrin-A1の発現をノックダウン(KD)させる shRNAプラスミドを作製する。(2) shRNAをJ774.1に遺伝子導入しKD安定発現株を作製する。(3)単球マクロファージ(MΦ)と血管内皮細胞(EC)の接触により発生するEphA2/ephrin-A1シグナルをEC層通過の観点からin vitroで検討する。(4)脾臓のEphA/ephrin-A発現を調べ,in vivo実験の対象器官として適しているか検討する。 項目(1)は計画の3/5程度の達成度である。EphA2のKDプラスミドは完成したが,ephrin-A1のKDプラスミドはマウス用とヒト用ともに完成していない。別のプログラムを使用してshRNAを再設計しKD効果を検討中である。これまでの報告ではephrin-A1のKD効率は50%前後と低いため,KD効率の高いプラスミドの作製は困難である可能性がある。項目(3)は計画の3/4程度の達成度である。ECをトランスウェルで培養すると,孔サイズが3μmの場合でも下部チャンバーに遊走するため,トランスウェルを用いてECを培養し,その上に単球/MΦを播種する方法でEphA2/ephrin-A1シグナルをEC層通過の観点から検討することは困難であることが判明した。その後実験を進め,ガラスボトムディッシュの共培養系で代替の実験が可能であることが分かったので,計画を再検討している。一方,項目(4)については,計画通り実行することができた。以上より,現在までの達成度は年度当初計画の8割程度で,やや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,仮説「ephrin-A1とEphA2を発現する単球/マクロファージ(MΦ)は血管内皮細胞(EC)のEphA2とephrin-A1を標的に連結・接着し,両細胞で発生するEphA2/ephrin-A1シグナルは単球/MΦのEC層の通過に関与する」を検証する研究である。個々の細胞を対象にしたこれまでのin vitro実験では,仮説に沿った結果が得られている。セルソーターが新規導入されたため,計画に変更を加え以下の項目の研究を進める。 (1)単球/MΦとECの接触により発生するEphA2/ephrin-A1シグナルをEC層の通過の観点からin vitro実験系で検討する。EphA2とephrin-A1発現がノックダウン(KD)された単球/MΦ系細胞 (J774.1では安定発現株として作製)およびECを作製して検討する。仮説成立の確証が得られた時点で,in vivoの実験を始める。 (2)EphAとephrin-Aは同一サブクラス内で結合する。EphA2とephrin-A1は主要対象分子になることは確認したが,両分子のKDによる明確な影響が認められない場合は,EphA4,ephrin-A5,-A4(単球/MΦのみ)も対象分子に加え,ダブルKD実験を行う。 (3)EC(in vitro)と対象組織・器官(in vivo)への遺伝子導入は,電気穿孔法(NEPA21,ネッパジーン)で行う。 (4)対象組織・器官へ血管外遊走により浸潤した単球/MΦについて(in vivo実験系),EphA2およびephrin-A1発現強度と浸潤細胞数の割合を,セルソーター(S3,バイオラッド;平成25年度末に新規導入)を用いて解析し,EphA2/ephrin-A1発現と単球/MΦのEC層の通過性の関係を検討する。この機器の使用で実験を単純化できるので時間の短縮化が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の物品購入費約14万円を平成26年度の研究費に繰り越した。平成25年度末にセルソーターが共同研究施設に導入された。研究目的達成のため,当該機器を使用すると実験を単純化できるので時間の短縮化が期待できる。この理由から,実験方法を一部変更して平成26年度の研究を計画した。繰越金は,セルソーター関連の試薬・蛍光色素標識抗体の購入に充てる。 消耗品の概略を実験項目別に記載した。(1)単球/MΦ系細胞と血管内皮細胞(EC)の培養:細胞分離キット,培養液・培養器具など;(2)shRNAプラスミドの作製とノックダウン(KD)効率の検証:プラスミド精製キット,DNA関連試薬,細胞培養液・試薬・器具,RT-PCRとウエスタンブロット関連器具・試薬など;(3)EphA2/ephrin-A1とEC層通過機構の解析(in vitro実験):細胞蛍光標識試薬,遺伝子導入関連試薬,培養液・器具,サイトカイン,Fcキメラタンパク,EphA2/ephrin-A1抗体,ウエスタンブロット関連試薬・器具,活性化Rhoタンパク検出キット,写真撮影・解析関連消耗品など;(4)EphA2/ephrin-A1とEC層通過機構の解析(in vivo実験):実験動物,免疫染色関連試薬・抗体,細胞蛍光標識試薬,セルソーター用試薬・蛍光標識抗体,細胞分離試薬・器具など
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Research Products
(5 results)