2013 Fiscal Year Research-status Report
ボツリヌス毒素の吸収に寄与する小腸上皮細胞の新規シグナル伝達機構の解明
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24580432
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
丹羽 光一 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (20301012)
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Keywords | ボツリヌス毒素 / 小腸上皮細胞 / 家畜ボツリヌス症 / MAPキナーゼ / トランスサイトーシス |
Research Abstract |
本研究は、ボツリヌス毒素によって惹起される小腸上皮細胞内のシグナルを同定することを大きな目的としている。本年度は、平成24年度までの研究で明らかになった、MAPキナーゼの関与についてさらに詳しく検討した。 ウシ胎仔血清10%を含むDMEMでラット小腸上皮細胞(IEC-6)を培養して実験に用いた。ボツリヌスD型4947株を透析培養し、毒素複合体(L-TC)、神経毒素(BoNT)あるいはL-TCからBoNTを取り除いた無毒成分複合体(NTNHA/HAs)をカラムクロマトグラフィーにより精製した。 トランスウェルにIED-6を播種し、蛍光デキストランの透過量によって細胞層の透過性を測定したところ、L-TCあるいはNTNHA/HAsによって透過性が上昇したが、BoNTの添加では透過性は変化しなかった。ウエスタンブロットによりMAPキナーゼのリン酸化を調べたところ、L-TCあるいはNTNHA/HAsによりERK、p38が活性化したが、JNKは殆ど活性化しなかった。BoNTはMAPキナーゼの活性に影響を与えなかった。L-TCよるIEC-6の透過性の上昇は、ERKの阻害剤では抑制されなかったが、p38の阻害剤により抑制された。以上の結果から、L-TCはp38 の活性化を惹起することで小腸上皮細胞の透過性を上昇させること、この上昇にはL-TCの無毒成分が寄与しているがBoNTは寄与していないことが明らかとなった。 このように、本年度の研究ではボツリヌス毒素によって活性化し細胞の透過性調節に寄与する細胞内の新規シグナル(p38)が明らかとなり、結果を英文誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、ボツリヌス毒素複合体が小腸上皮細胞のp38 MAPキナーゼを活性化することで細胞間の結合を緩め、透過性を上昇させることを実験で明らかにした。これを欧文の学術雑誌に投稿・受理された。また、焦点顕微鏡により細胞層の横断面を撮影し、毒素複合体が細胞層を透過する様子を共可視化することに成功した。この毒素の透過速度が阻害剤によりどう変化するかを観察したが、細胞層が薄いことからこの方法では阻害剤の影響を検討することが困難であることが分かった。これらの経過は前年度にたてた計画どおりであり、計画はほぼ順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに、毒素により惹起される新規のシグナル分子を同定することができたので、今後は毒素の細胞内輸送経路の解明に重点をおいて研究を進める。共焦点顕微鏡観を用いた実験により、細胞の横断面を観察することで毒素の運搬速度を調べることは困難であることが分かった。一方、細胞に毒素を結合させたときは細胞全体に毒素が付着しているが、30分程度時間が経過したときには核の周辺に毒素が移動していることが観察され、この前後の様子を比較することで毒素の移動を検討できると考えられた。そこで、毒素のエンドサイトーシスがカベオラに依存しているかクラスリンに依存しているかを、阻害剤を用いて検討する。またカベオリン、クラスリンと毒素の位置関係を免疫染色により可視化し、毒素の輸送経路を同定する
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Research Products
(4 results)