2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580451
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
岡崎 克則 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (90160663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 宜明 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (20415558)
菅野 徹 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所, 研究員 (80355205)
井上 恵美 北海道医療大学, 薬学部, 助教 (80433423)
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Keywords | 地方病性牛白血病 / 牛白血病ウイルス / Tax / がん関連遺伝子 / 転写調節 / 母子感染 / 弱毒生ワクチン |
Research Abstract |
地方病性牛白血病の原因である牛白血病ウイルス(BLV)は既に国内のウシ間に蔓延しているが、白血病の発症は5~8歳に多く、ウイルス感染牛の数%に限られる。しかしながら、近年その報告は急増しており対策が急務となっている。昨年度は400頭余りの白血病発症牛を調べ、BLVの転写活性化因子であるTaxの233番アミノ酸がPro(P233-Tax)であるウイルスはL233-Taxウイルスに比べ潜伏期が約2年間長いことを示した。また、発症牛の月齢を解析することによって、生後間もない時期のBLV感染が白血病発症の必要条件である可能性を示した。 本年度は弱毒生ワクチン開発の基礎的知見を得るため、P233-Taxによる潜伏期延長の機序を調べた。P233-TaxあるいはL233-Tax発現ベクターとヒトのがん関連遺伝子プロモーター下のルシフェラーゼ発現ベクターをHeLa細胞にコトランスフェクとし、各がん関連遺伝子プロモーターに対するTaxの転写調節能を比較した。その結果、P233-Taxはがん遺伝子の一つであるjunの転写を有意に抑制することがわかった。また、L233-TaxはP233-Taxに比べ細胞分裂を増長するckd4プロモーターに対する転写活性化能が有意に高いことを明らかにした。その他7種のヒトがん関連遺伝に対する転写調節能には両Tax間で差は認められなかった。これらの成績はP233-TaxウイルスがL233-Taxウイルスに比べ腫瘍原性が低い事実と一致することから、TaxのL233P変異がBLVの弱毒化に重要と考えられる。 次いで、BLVの母子感染を防ぐため初乳中のウイルス不活化法を検討した。その結果、凍結操作によってウイルスの感染性が失われることがわかった。凍結操作は加熱に比べ条件設定が容易であり、初生牛の感染防止には極めて有用と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BLVによる白血病発症機構の解明に関しては当初の計画を大きく上回り進展している。また、母子感染の簡便な予防策を公表することができた。一方、感染性クローンの作出には失敗した。そのため、本課題の予定事業期間内に感染実験を終了することは難しくなってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. RNaseH活性欠損逆転写酵素の発現系を構築してBLV持続感染細胞で発現させ、産生ウイルス量を測定することによって欠損逆転写酵素によるドミナントネガティブ効果を実証する。 2. 理化学研究所の間博士から感染性クローンの分与を受け、欠損逆転写酵素をコードするウイルスを作出する。本ウイルスは単独では複製できない一方、野生型ウイルスの複製を干渉することが期待される。 3. 感染性クローンを用いてTaxに種々の変異を導入したウイルスを作出し、ヒツジで感染実験を実施して腫瘍原性を調べる。 4. ヒツジで腫瘍原性の差が認められない場合はウシを用いて感染実験を行う。 5. 上記の動物実験は北海道大学人獣共通感染症センターで実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
感染実験を実施しなかったため。 消耗品の購入に充当する。
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Research Products
(8 results)