2012 Fiscal Year Research-status Report
カンピロバクター・ジェジュニの臓器移行・定着に関与する遺伝子の同定
Project/Area Number |
24580452
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
角田 勤 北里大学, 獣医学部, 准教授 (80317057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 伸二 北里大学, 獣医学部, 教授 (80137900)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カンピロバクター感染症 |
Research Abstract |
識別用配列(タグ)を含むトランスポゾンを用いてC. jejuniの染色体DNAにランダムな変異導入を行なった。各タグ標識変異株を同数含む菌液(インプットプール)をC57BL/6 MyD88欠損マウスに腹腔内接種した。接種後4日目に剖検し、肝臓及び腸管内容物からC. jejuniを分離(アウトプットプール)しDNAを抽出した。このDNAを鋳型としてタグ特異的プライマーを用いてPCRを行い、肝臓または腸管内で消失した変異株を同定した。約250変異株をスクリーニングした(スクリーニングI)ところ35株がアウトプットから消失した株として選択された。そのうち7株(20%)が鞭毛欠損株であった。次に軟寒天培地により運動性が確認された変異株のみでインプットプールを作製し、約200株のスクリーニングを行なった(スクリーニングII)。その結果、20株が選択された。スクリーニングIとIIで総計55株が選択され、鞭毛 (7、以下括弧内は遺伝子数)、呼吸代謝 (5)、糖鎖修飾(4)、アミノ酸生合成(6)、トランスポーター(6)、夾膜(2)、外膜蛋白(2)、多剤排出ポンプ(3)、タンパク合成(3)、リン脂質生合成(1)、ストレス応答(2)、増殖関連(1)、蛋白質フォールディング(1)、機能不明(4)に関連する計47遺伝子がトランスポゾン挿入部位として同定された。アミノ酸の生合成に関わる遺伝子群やN-結合型糖鎖修飾システムに含まれる遺伝子群が選択される数の上で上位に位置した。これらの遺伝子は鞭毛関連遺伝子群と共に、これまでの研究でC. jejuni感染において重要な役割を担う遺伝子として報告されている。今後、より多くの変異株を作製し同様のスクリーニングを行なっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「今後の研究の推進方策」の項目で示したように幾つかの課題が生じているが研究計画を見直す程の問題ではなく、今とのとこ計画通りの達成度が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の研究の初年度を終えて以下の課題が生じた。 1. 鞭毛変異株について 変異株のスクリーニングを250株行なった時点で選択された株のトランスポゾン挿入部位の決定を行なったところ20%の株が鞭毛変異株であった。鞭毛の発現は多くの遺伝子が関与していることから、今後も同様の方法でインプットプールを作製すれば鞭毛変異株が同様の割合で含まれる可能性が考えられた。そこでインプットプールを作製する時点でそれぞれの株の運動性を調べ、運動性の有る株のみを用いる事にしたところ、それ以後に行なった約200変異株のスクリーニングの結果選択された株には鞭毛変異株が含まれていなかった。よって今後のスクリーニングは鞭毛変異株は排除して行なう予定である。 2. ランダムな消失について ヒヨコを用いた感染実験でも同様の現象が報告されているが、C57BL/6 MyD88欠損マウスを用いた感染実験においても本来感染性のある変異株がランダムにアウトプットプールから消失する現象が見られた。このことは選択された株の中にも感染性を有する株が含まれていることを意味する。従って、それらを排除するために二次あるいはそれ以上のスクリーニングを選択された変異株に対して実施する必要が生じた。次年度は一次スクリーニングを新規に継続しつつ、選択された株の二次スクリーニングを行なって行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 前年度の継続: 前年度に引き続き、Signature-tagged transposon mutagenesis によるin vivo スクリーニングとArbitrary PCR によるトランスポゾン挿入部位の決定を行なう。 2. In silico 解析による遺伝子の機能推定: トランスポゾンの挿入の見られた遺伝子の機能を推定するためにBLAST 解析により他の細菌の同定済蛋白とのホモロジーを調べる。機能ごとに遺伝子を分類しグループ化する。機能不明の遺伝子に関してはシグナルペプチドやリポボックスの有無、疎水性領域の分布による膜蛋白予想等を行ない、局在を調べる。 3. 各トランスポゾン変異株の臓器移行や感染能欠損の再現性確認: それぞれの変異株を野生株と共にマウスに接種し、臓器移行や定着能力の欠損の再現性を確かめる。調べる変異株が多い場合には、機能的に纏まりのある遺伝子に関しては代表の遺伝子の表現型を確認する。学術的に興味深く、詳細な研究を必要とする遺伝子に関してはシャトルベクターなどにより遺伝子の再導入を行ない機能が回復するかを調べる。また臓器における変異株の脱落は臓器移行欠損と定着欠損の両方が可能性として残るため、菌投与後短時間経過(例えば10分後)したマウスの血液から菌分離を行ない、敗血症を起こさない変異株を特定する。
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