2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン修飾酵素異常を基軸としたリンパ腫発生機構の解析と新規治療戦略の検討
Project/Area Number |
24580460
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
奥田 優 山口大学, 獣医学部, 教授 (10325243)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リンパ腫 / 犬 / HAT / HDAC |
Research Abstract |
CREBBP/EP300はHAT活性を有しており,このHATを介してヒストンのアセチル化,癌抑制遺伝子の活性化,癌原遺伝子の不活性化を行っている。本研究では犬のリンパ腫においてもCREBBP/EP300の異常によるHAT活性の低下が腫瘍発生に関与している可能性を想定し,犬リンパ腫培養細胞株を用いたHAT異常解析系の検討を行った。 まず,犬リンパ腫細胞株8種の核蛋白抽出物を用いてHAT活性測定キットによる解析を行った。その結果,EmaにおいてHAT活性の顕著な低下が認められたため,CREBBP/EP300の異常が起こっている可能性を疑い,CREBBP/EP300が特異的にアセチル化しているヒストンH3K18Ac/K27AcについてWestern Blot解析を行った。しかしながら,Emaを含む全ての細胞株で両リジン残基のアセチル化が認められ,CREBBP/EP300に特異的なHAT活性には細胞株間で大きな差がないことが示唆された。次に,CREBBP/EP300の蛋白発現量をWestern Blot法で,mRNA発現量をReal-time PCR法を用いて解析したが,細胞株間で大きな差異は認められなかった。さらに, HDAC活性測定キットによる解析も行ったが,低アセチル化を起こすほどの顕著な活性増加は認められなかった。また,HDAC活性を有する蛋白をコードするEID1遺伝子,EID2B遺伝子,SIRT7遺伝子のmRNA発現量についても顕著な増加は認められなかった。以上の結果から,HAT活性測定キットによる活性の低下が認められたEmaについては,CREBBP/EP300以外のHAT活性を有する蛋白の活性異常の存在が疑われ,in vitroにおけるHAT活性測定キットによる解析では,CREBBP/ EP300が有するHAT活性の影響が反映されていない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度に遂行予定であったA. HATs (CREBBP, EP300),MHT(MLL2)の発現異常の解析とB. ヒストン修飾の網羅的解析による異常酵素の解析のうち,A.については概ね解析を終了し,犬のリンパ腫培養株では,CREBBP/EP300の発現異常は認められない可能性が明らかとなった。また,本年度の結果から,HAT活性測定キットによる測定では,CREBBP/ EP300が有するHAT活性の影響が反映されていない可能性が示唆され,臨床サンプルを用いた解析に際しては注意を要することが明らかとなり,今後の解析に有用な知見が得られた。一方,B.ではヒストンH3K18Ac/K27AcについてWestern Blot解析を行ったが,その他のヒストン修飾については解析を終了することが出来なかった。これは,免疫染色,Western Blot解析の非特異反応が主な問題であり,前者では固定法を含め,現在,条件検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度,解析を完了できなかったヒストン蛋白のN末端のアミノ酸側鎖修飾について免疫染色学的解析を行い,リンパ腫細胞における修飾パターンを解析する。この結果に基づき,推定される酵素の異常を蛋白レベル,mRNAレベル,ゲノムレベルで解析する。具体的には腫瘍細胞株を用いて酵素活性の測定,WB解析,Real-time PCR解析,DNA塩基配列解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に実施したヒストン修飾に関する解析では,免疫染色,Western Blot解析で非特異反応が問題となり,全ての抗体を購入するには至らなかったため,次年度に繰り越しを行った。 本年度はヒストン修飾に関わる抗体の購入,分子生物学研究解析試薬などの消耗品費として1,740千円,日本獣医学会発表に関わる旅費として150千円を使用予定である。
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[Journal Article] Establishment of Five Canine Lymphoma Cell Lines and Tumor Formation in a Xenotransplantation Model.2013
Author(s)
Umeki S, Ema Y, Suzuki R, Kubo M, Hayashi T, Okamura Y, Yamazaki J, Tsujimoto H, Tani K, Hiraoka H, Okuda M, Mizuno T.
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Journal Title
J Vet Med Sci
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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