2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAによるネコ肥満・糖尿病の病態解明とバイオマーカーへの応用
Project/Area Number |
24580468
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
佐々木 典康 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (20307979)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マイクロRNA / ネコ / 糖尿病 / バイオマーカー |
Research Abstract |
マイクロRNA(miRNA)は18~25塩基の非翻訳RNAであり、転写調節に関わることで、発生・分化・癌化などに関与している。現在までにネコにおけるmiRNAの報告が皆無であることから、本研究ではネコmiRNAが肥満・糖尿病に関わる分子機構を明らかにすることを目的として研究を行った。まず平成24年度には、ネコの白色脂肪組織より抽出したRNAを用いて次世代シークエンサーによる網羅的解析を行った。総リード数1,072万本のうち17塩基以上の配列を持つ1,012万本を対象に、NCBIより取得したドラフトネコゲノム配列(Felis_catus-6.2)に対してマッピングを行った。その結果、ゲノム配列上にマップされたリード本数は843万本(83.3%)であり、169万本(16.7%)がマップできない配列であった。マップされた配列のうち、マップ箇所20以下の特異的配列839万本(82.9%)を用いて、miRBase上の既知配列とのBLAST検索を実施した。miRBase上の既知のmiRNAと完全一致した配列は684種類が同定された。現在、miRBase上にネコマイクロRNAのデータは登録されていないため、これらの配列を登録すべく詳細の精査を行っている。また、今回のリード本数の結果より白色脂肪組織においてはmiR-10b、miR-143、miR-148a-5p、miR-22、miR-10a-5p、miR-27b等の発現が多いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画案のとおり、ネコ白色脂肪組織に発現するmiRNAの塩基配列決定はすでに終了している。総リード本数は予定よりも若干少ない約1,000万リードであったが、解析には十分なデータが得られた。このデータをネコドラフトゲノムにマッピング後、既存のmiRaseデータベースでBLAST検索を行ったところ684種類のネコmiRNAを同定することができた。加えて複数の新規miRNA候補配列も同定されており、二次構造解析や発現解析などにより詳細を検討中である。しかし、データの解析に予想以上の時間を要したため、当初、平成24年度中に登録を完了する予定だったmiRBaseデータベースへの登録が完了していない。それ以外の点は概ね計画どおり進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られたネコmiRNAのデータに基づき、miRNAによるインスリン感受性細胞(脂肪細胞)の分子病態形成メカニズムを解明する。まず肥満や糖尿病において発現が変動するmiRNAを網羅的にスクリーニングするために、平成24年度の結果を用いてネコ特異的カスタムマイクロアレイを作製する(外部委託)。このマイクロアレイを用いてネコ培養脂肪細胞系をスクリーニングし、脂肪細胞の増殖、分化の際に発現変動がみられるmiNAを検索する。特定されたmiRNAの塩基配列情報をもとに、転写調節の制御を受ける可能性のある標的候補遺伝子をデータベース上で検索する。実際に候補遺伝子が変動するか確認する。また逆に、、RNA干渉を用いた実験を行うことでmiRNA発現量を減少させ、標的遺伝子の発現が影響を受けるかどうかを確認する。これらのデータから総合的に判断することで、脂肪細胞におけるmiRANの働き、およびインスリン抵抗性発現への寄与について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究計画では「その他」で支出された次世代型シークエンス解析に係る委託研究の費用割合が多かったのだが、当初計画よりこの費用を圧縮した結果、翌年度以降の計画(スクリーニングに係る予備実験等)も一部前倒して遂行することができた。これが当初計画よりも「その他」の費用が減少し「物品費」の割合が増加した大きな理由である。平成25年度以降は委託研究に加え、スクリーニング作業に必要な消耗品の購入費が大きな割合を占めるようになる。そこで平成24年度に使用しなかった若干の経費を平成25年度へ引き継ぐことで物品費に充当し、消耗品の購入費用を僅かでも増やすことにした。平成25年度の研究費使用計画としては、昨年同様に「その他」の費目で委託に係る経費を計上し、マイクロアレイを実施する。また物品費では、主に培養細胞を用いたスクリーニングに必要な消耗品(器具、酵素、培地など)の購入を行う予定である。
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