2013 Fiscal Year Research-status Report
イネに寄生する糸状菌のカビ毒産生能の遺伝的要因解明
Project/Area Number |
24580474
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
須賀 晴久 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 准教授 (20283319)
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Keywords | 菌類 / 遺伝子 / マイコトキシン / イネばか苗病菌 / Fusarium |
Research Abstract |
フモニシンはウマの白質脳症、ブタの肺水腫の原因物質となっているカビ毒で、ヒトでは食道ガンに関係しているとされている。本研究はイネばか苗病菌の一部においてフモニシン産生能が喪失している原因を遺伝子レベルで解明することを目的としている。この研究は大きく、候補遺伝子の探索と原因変異の特定から成っており、本年度については当初の計画に沿って候補遺伝子の探索におけるフモニシン遺伝子クラスターの発現比較を実施した。 昨年度までにフモニシン産生株とフモニシン産生能喪失株の16種類の遺伝子で構成されているフモニシン遺伝子クラスターの全塩基配列が解読されている。今年度はまず、解読された塩基配列をもとに、それぞれの遺伝子に対応した16ペアのRT-PCR用プライマーを設計した。フモニシン産生を誘導するGYAM液体培地により、フモニシン産生株とフモニシン産生能喪失株をそれぞれ培養してRNAを抽出した。その際、フモニシン産生株の場合は培養液中にフモニシンが検出されるのに対し、フモニシン産生能喪失株の場合はフモニシンが検出されないことを確認した。RT-PCRの結果、フモニシン産生株については、16種類の遺伝子全てについて予想サイズのRT-PCR産物が検出された。一方、フモニシン産生能喪失株では6種類の遺伝子については予想サイズのRT-PCR産物が検出されたが、10種類の遺伝子(FUM6、FUM7、FUM3、FUM10、FUM11、FUM2、FUM13、FUM16、FUM17、FUM18)についてはRT-PCR産物が検出されなかった。ゲノムDNAを用いた場合には、イントロンを含むサイズのPCR産物が検出されていることから、フモニシン産生能喪失株においてはこれらの遺伝子の転写に異常が生じていることが明かになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、イネばか苗病菌の一部においてフモニシン産生能が喪失している原因を遺伝子レベルで解明することである。研究計画上、2年目となる今年度は候補遺伝子の探索におけるフモニシン遺伝子クラスターの発現比較が予定されており、計画通り全16遺伝子についてRT-PCRによる発現比較を終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、次年度には遺伝子導入によるフモニシン産生能の回復実験を実施して、フモニシン産生能が喪失した原因の変異を特定する予定である。 昨年度のフモニシン遺伝子クラスターの発現調査により、フモニシン産生能喪失株では転写制御因子であるFUM21遺伝子の転写が確認されたが、フモニシン産生能喪失株では多くの遺伝子(16種類中の10種類)で発現異常が見られているため、まずはFUM21遺伝子の導入によるフモニシン産生能の回復を調べる。回復しない場合には更に他の遺伝子についても導入してフモニシン産生能の回復を調べてゆく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成26年度)は遺伝子導入によるフモニシン産生能の回復実験を実施する。消費税の導入などで消耗品の費用が当初の予定より必要になった。 遺伝子導入によるフモニシン産生能の回復実験の実施にあたって必要となる物品費として使用する。
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