2013 Fiscal Year Research-status Report
植物糸状菌病害の発生を助長するヘルパーバクテリアの発病助長因子の解明
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24580488
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
吉田 重信 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (90354125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小板橋 基夫 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (10355662)
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Keywords | なし |
Research Abstract |
平成25年度は、昨年度に代表菌株として絞り込んだヘルバーバクテリアであるWI447株について、再度その処理条件を確認するとともに、その助長因子の探索を行った。 すなわち、まず本菌株の処理タイミング別の効果の再現性を確認した結果では、昨年度と同様に病原菌接種と同時あるいは接種以降のバクテリアの処理で、発病助長効果が認められた。また、イチゴ成葉そのものに本菌株を噴霧処理した場合にも、病斑数が対照と比べて増加し発病助長効果が確認されるとともに、本菌株の処理により、炭疽病菌の発芽および付着器形成が有意に促進されることも顕微鏡観察により明らかになった。以上のことから、WI447株は、植物体上において炭疽病菌の初期感染行動を促進することで、発病を助長することを明らかにした。これらは、植物葉面の常在菌である本細菌の病原菌に対する新たな作用機構として、学術的意義のある成果であると考えられる。 次に、WI447株の助長因子を調べるため、 本菌株のNBやLB等の各種液体培養上清を調製し、それらの助長活性を調べたが、いずれも顕著な助長活性は認められなかった。一方、培養上清を取り除いた本菌株の菌体では発病助長効果は認められ、菌体を熱処理した後に病原菌に処理した場合でも,発病の助長効果が確認された。このことから、発病助長活性は、WI447株の分泌二次代謝産物や酵素類の分泌物ではなく、本菌の菌体を構成する低分子成分に基づいている可能性が高いと考えられた。以上の知見は、本研究の最終目的である助長因子の解明に役立つものであり、これらの知見を基に次年度の研究を行う予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた平成25年度の研究計画は、「イチゴ炭疽病におけるヘルパーバクテリアの発病助長因子の探索」であるが、現在までの研究の実施で、上述のように助長因子の単離同定のための絞り込みが出来たことから、25年度の研究目標は着実に達成できたと判断される。このため、今後も円滑に研究を実施できる見込みであり、最終的な研究目的についても当初の予定どおり達成されることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、当初の計画通り実施する予定である。すなわち、26年度はこれまでに明らかにした知見を基に、ヘルパーバクテリアの助長因子についての単離および同定を目指す。その場合には、WI447株が属する分類学的所属種に特徴的な菌体構成成分等の文献情報も活用して検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、ヘルパーバクテリアの助長因子は、バクテリア由来の酵素であると想定していたため、その酵素精製や酵素活性測定に係る試薬、消耗品等を購入する経費を年度当初に予定していたが、実際には目的因子は酵素ではなく、菌体構成成分である可能性が高かった。このため、それらを購入する必要がなくなり、その経費分が次年度使用額として生じた。 今年度の研究計画を実施する上で、菌体構成成分の大量調製が必要であり、その調製には多大な労力を要すると予想され、研究補助者の雇用を当初の予定より延長する必要がある。このため、上記の理由により生じた次年度使用額は、その雇用のための経費として活用することを計画している。
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