2012 Fiscal Year Research-status Report
光スイッチシグナルの抑制機構の解明と管理された光環境に適した植物の開発
Project/Area Number |
24580498
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hamamatsu University |
Principal Investigator |
清水 正則 浜松大学, 健康プロデュース学部, 講師 (40468236)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本 |
Research Abstract |
24年度は光防御機構を抑制した変異体のホモ個体の作製が中心となった。また、光スイッチ機構および光合成活性への影響を評価するために遅延蛍光の利用を検討した。 A 光スイッチ機構に関与するシグマ因子の決定:SIG1, SIG3とSIG5のT-DNA挿入系統を入手後、ホモ個体を選抜した。掛け合わせにより3種類の2重変異体を単離した。また、in vitro転写実験に必要な葉緑体内でのN末を決定するため、SIG1-GFPの強制発現系統を作成した。葉緑体内にGFPが局在していることを確認した。 B 光スイッチ機構に及ぼす循環的電子伝達系およびステート遷移の役割:光スイッチ機構を阻害すると考えられるpgr5およびstn7のホモ個体を単離した。また、光スイッチに関与するCSKのホモ個体を単離した。さらに、光スイッチにおいてSIG1をリン酸化する酵素として2種類(SOPK1,SOPK2)をαスクリーン法を用いて選抜した。(タンパク質合成系としての優位性とその活用 .第54回日本植物生理学会年会) C 光スイッチ機構に及ぼす色素成分による防御機構の役割:光スイッチに効果的な光波長を特定するため700, 705, 710, 720nmの光源を用いてpsaAおよびpsbAの遺伝子発現を測定した(葉緑体における光色依存遺伝子発現「光スイッチ」.第54回日本植物生理学会年会)。また、作成した形質転換系統の評価系としてクロロフィル蛍光、遅延蛍光が用いることができるのか検討した。 D 新規の光防御機構に関与するsug変異系統の光スイッチ機構への関与:4種類のsugの破壊系統、強制発現系統および薬剤誘導系統のホモ個体を得た。また、SUG2に結合するPDZドメインを持つタンパク質候補をシロイヌナズナゲノム中15個見出した。プルダウンアッセイにより、1個がSUG2に結合することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(a)光スイッチ機構に関与するシグマ因子の決定:Sig5の挿入系統をストックセンターより入手した際、送られてきた種子の中にT-DNAが挿入されていなかったことから半年程度の遅れがある。また、N末を決定するために強制発現系統からSIG1-GFPをGFP抗体を用いて精製しN末のアミノ酸配列の決定を試みたがSIG1の配列は見られなかった。この原因を明らかにし、改善する必要がある。 (b)光スイッチ機構に及ぼす循環的電子伝達系およびステート遷移の役割:各遺伝子のT-DNA挿入系統のホモ個体の単離でも2回取り寄せることとなったため遅れた。しかし、この期間を利用して光スイッチ機構をクロロフィル蛍光および遅延蛍光で評価できるのか検討できた。野生系統においては薬剤処理により誘導したCEF, や光スイッチにおいては評価可能であることが示唆された。 (c)光スイッチ機構に及ぼす色素成分による防御機構の役割:光源に含まれる光波長をより単色にするため様々なLED光源を集めたが光量が統一できない問題点が発生したこと、これまで用いていた光源を調べたところ規格とは異なる波長領域であることが判明したこと、評価系として遅延蛍光法が有利である可能性が生じたことから計画の変更が必要となった。しかし、共同研究者が新たに加わることになり光源及び評価系の問題が解決できる可能性が高まった。 (d)新規の光防御機構に関与するsug変異系統の光スイッチ機構への関与:小麦胚芽由来無細胞タンパク質合成系の使用によって必要なタンパク質を得ることができるようになり順調に進めることができた。破壊系統、強制発現系統および薬剤誘導系統においてはホモ個体を3系統以上必要となるが薬剤誘導系統に関しては1系統のみであるため引き続き作業を続ける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
変更点:25年度は最終目標はすべての変異系統に野生型SIG1 および変異型SIG1(T170V)を強制発現させることによって光スイッチ検出系を導入することであった。しかし、SIG1のリン酸化酵素(SOPK)を同定する実験において2種の候補が見出された。光スイッチ検出系としてSOPKを光スイッチ検出系として利用すると新規性および効率において有利であることから予定を変更し光スイッチ検出系としてSOPKのT-DNA挿入系統を用いることとする。 以上の変更を考慮し、光スイッチ検出系を導入する変異系統を以下のように作成する。1.24年度実験1で作製したシグマ因子の3重破壊系統と24年度実験2,3で作製した遺伝子破壊系統および強制発現系統を掛け合わせ、それぞれのホモ接合体を選抜する。なお、24年度の実験4によって光スイッチに関与しないことが明らかになったシグマ因子があればこれを除いた2重破壊系統を用いて掛け合わせを行う。2.24年度実験2で作製したPGR5とSTN7の破壊系統の2重破壊系統を作製する。3.(新規).SIG1(T170)をリン酸化するSOPKの同定するためSOPK1およびSOPK2をin vitro翻訳系を用いてタンパク質を合成しSIG1を基質にしてリン酸化アッセイを行う。また、T-DNA挿入系統を入手し光スイッチ機構への影響を調べる。 光スイッチ検出系としてSOPKへのT-DNA挿入系統を用いることから上記3を優先的に行う。さらに、光スイッチ検出系として実験1、2において作成した形質転換系統に導入する。なお、光スイッチ検出系として適していないことが明らかとなった場合、元の計画に従い遂行する。 各形質転換系統における光合成評価系としてクロロフィル蛍光および遅延蛍光を利用する際の条件検討をH25年度中に完了する。その他は、当初の予定に従い進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
T-DNA挿入系統の選抜が遅れたため、恒温振盪培養機はH25年度に移行しすることとなった。また、光合成評価系では本申請課題の申請後から行った遅延蛍光が利用できる可能性がH24年度に生じたため購入予定だった携帯型蛍光測定装置の購入を変更した。H25年度は以下にその他100千円を含め合計2100千円を計上する。 ・恒温振盪培養機・BM 製 (NB-205L)(1×350千円)[目的:大腸菌/植物細胞培養](浜松大学): H25年度にはsug候補遺伝子をカルスに導入し、光合成の緑化抑制機構を確認する。この際、アグロバクテリアを培養に用いる浸透培養機を購入する予定となっている。 ・プラスチック消耗品(200千円)、培地(200千円)、:25年度は引き続き植物培養、形質転換を中心に行うためシャーレ、培地用試薬が必要となる。 ・核酸関連試薬(1100千円): T-DNA挿入を確認するためPCRに用いるTaqポリメラーゼが必要となる。特に発現解析に用いるジーンチップ関連試薬が高額の理由となっている ・タンパク質関連試薬(250千円):アミノ酸シーケンスにかかる費用およびTOF-MASなどペプチド同定に用いるための費用、さらに、Invitro タンパク質合成系試薬が含まれる。
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