2013 Fiscal Year Research-status Report
光スイッチシグナルの抑制機構の解明と管理された光環境に適した植物の開発
Project/Area Number |
24580498
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
清水 正則 常葉大学, 健康プロデュース学部, 講師 (40468236)
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Keywords | 光スイッチ / 光防御機構 / 光合成 / 転写制御 / CRIPT |
Research Abstract |
25年度において申請書に示した4つの目的のうち(b)光スイッチ機構に及ぼす循環的電子伝達系およびステート遷移の役割と(d)新規の光防御機構に関与するsug2変異系統の光スイッチ機構への関与、の2点において主要な成果を挙げた。 成果1においては、光スイッチ機構に関与するリン酸化酵素および脱リン酸化酵素の候補タンパク質を選抜し、psaAおよびpsbAの遺伝子発現を定量することによって、光スイッチ機構に及ぼす影響を検討した。光スイッチ機構によるシグマ因子のリン酸化・脱リン酸化の調節機構を解明するために重要な成果と考えられる。また、光スイッチ機構の抑制に関与するPGR5, STN7のKO系統を生育することかできたことから光スイッチ機構への影響を検討した。さらに、光合成の評価系として遅延蛍光法の利用を検討した結果、クロロフィル蛍光では観察できない条件においても電子伝達系の情報が得られることが明らかとなり遅延蛍光が光合成評価法の1つとなりうることを示した。 成果2においては、光合成を抑制する因子であるSUGsのうちSUG102が緑化抑制の原因因子であることを確認することができた。SUG102は動物神経系CRIPTと相同なタンパク質であることからCRIPTと同様にPDZドメインを持つタンパク質と結合する可能性がありシロイヌナズナにおいては約20種のタンパク質がゲノム中に存在する。これらの多くはタンパク質分解系に関与するものであった。成果2によって光合成抑制とタンパク質分解を関連付けるものとなり重要な成果となった。 1. 第55回日本植物生理学会年会(富山):A Protein Phosphatase Involved in Light-Regulated Expression of Photosynthesis Genes in Arabidopsis Chloroplasts 2. 第55回日本植物生理学会年会(富山):動物神経系CRIPTと相同なシロイヌナズナ緑化抑制タンパク質
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. SIG5との多重挿入系統のホモ接合体の生育が悪く、種子をつけにくいこと、T-DNA挿入系統の入手に時間がかかったこと、によって計画より遅れたが、SIG5が光スイッチに関与しないと結論付けたことから、シグマ因子の多重挿入系統作製の必要性は低くなった。そのため、掛け合わせ等の実験が不要になり結果として順調に進んでいる。 2. STN7とPGR5の破壊系統の入手およびホモ個体の確立に時間がかかったため2重破壊系統の作製が遅れている。 3. SIG1のN末を決定するためSIG1-GFPを強制発現させた形質転換系統からSIG1-GFPを回収しN末のアミノ酸配列を解析したがN末の決定には至らなかった。このため、N末が決定できなかった場合に備え検討していた3種の異なるN末を持つSIG1をin vitro転写実験に用いることとしたため計画に支障は生じなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、すべての変異系統に野生型SIG1 および変異型SIG1(T170V)を強制発現させることによって光スイッチ検出系を導入することであった。しかし、光スイッチ機構に関与すると考えられるSIG1のリン酸化酵素(SOPK)および脱リン酸化酵素(SOPH)の候補遺伝子の選抜に成功したためこれらを光スイッチ検出系として利用する。この変更の利点は、強制発現系統を用いた場合、形質転換系統間での発現量の影響が問題となるが破壊系統においては考慮しなくて済むことである。 以上の変更を考慮し、光スイッチ検出系を導入する変異系統は、1.SIG1破壊系統のホモ接合体、2.PGR5とSTN7の破壊系統の2重破壊系統、とする。また、SOPKやSOPHをin vitro翻訳系を用いて合成し、in vitro転写実験を行いシグマ因子のリン酸化による制御機構を確認する。さらに、各形質転換系統における光合成評価系として葉緑体遺伝子発現、クロロフィル蛍光および遅延蛍光、光合成産物蓄積量を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ストックセンターから入手したT-DNA挿入系統には野生系統のみの場合があったこと、薬剤耐性遺伝子がジーンサイレンスによって機能しない場合があったこと、などによりT-DNA挿入系統の選抜に時間がかかったことから選抜に掛かる費用が低下した。また、光合成評価として遅延蛍光が利用できることから購入予定であったクロロフィル蛍光測定装置の購入を変更した。 H26年度は遺伝子発現の定量とin vitro転写実験が主要な実験となるため発現解析関連試薬とタンパク質関連試薬が高額となっている。以下、前年度からの持ち越し金を含むH26年度の使用額の使用計画を示す。 1.核酸関連試薬(1,000千円):T-DNA挿入を確認するためのPCRに用いるTaqポリメラーゼや発現解析に用いるリアルタイムPCR、次世代シーケンサーに用いる消耗品を含む。2.タンパク質関連試薬(300千円):in vitro転写実験に用いるシグマ因子の合成、光合成抑制因子の合成のため使用する小麦胚芽由来無細胞タンパク質合成試薬を含む。3.その他消耗品(100千円):各種変異体を生育するためにシャーレ、チップ、培地等の消耗品が必要となる。4.旅費および謝金(150千円):旅費および論文投稿の英文校閲等に使用する。
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