2012 Fiscal Year Research-status Report
構造生物学的解析によるR型レクチンのシアル酸含有糖鎖結合能獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
24580500
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
逸見 光 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品分析研究領域, 主任研究員 (70353993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 敦 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 主任研究員 (50302287)
平林 淳 独立行政法人産業技術総合研究所, 幹細胞工学研究センター, 上席研究員 (40156691)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 糖鎖 / NMR / レクチン / 糖認識ドメイン |
Research Abstract |
これまで申請者らは、ガラクトースに特異的な糖結合活性を持つR型レクチン(EW29Ch)の糖結合部位において遅い分子内運動による構造の揺らぎが糖結合活性に関係することを明らかにした。また、このレクチンを分子進化工学的に改変させてシアル酸結合性レクチン(SRC: Sia-Recognition EW29Ch)を創製し、X線結晶構造解析を行った。しかしながら、その特異的な糖鎖結合能獲得メカニズムについては十分な情報を得ることができていないことから、本研究では、NMRを用いて、そのメカニズムを解明することを目的とする。本年度は、1)NMR測定に安定な13C及び15Nラベル体タンパク質の調製の確立、2)溶液中でのSRCとEW29Chの構造比較、3)NMR緩和測定法によるSRCとEW29Chの分子内運動の比較、を行った。1)では、遊離状態で、安定なラベル体タンパク質の作製が困難であったので、ラクトースを添加した状態で調製を行い、調製したラクトース添加SRCの15N-HSQCスペクトルを経時的に測定し、NMR測定に対する安定性を評価した。その結果、15℃及び25℃において十分安定であることが確認できた。2)では、ラクトース添加ラベル体SRCを用いて、多核多次元NMR法により、NMRシグナルの帰属を行い、ほとんどの帰属が完了した。SRCとEW29Chの主鎖のケミカルシフトを比較した結果、特に、γサブドメインで大きく異なることから、SRCとEW29Chは、主に、γサブドメインで主鎖の構造が異なることが分かった。3)では、γサブドメインのループ領域において、SRCの{1H}-15N NOEの値がEW29Chに比べ著しく低いことから、このループ領域の分子内運動が高いことが分かった。以上の結果から、SRCの特異的な糖鎖結合能獲得メカニズムにおいて、γサブドメインが重要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、NMRを用いて、特異的な糖結合能を持つ改変体レクチン(SRC)の糖鎖結合能獲得メカニズムを解明することを目的としている。そのために、①13C及び15Nの安定同位体ラベルSRCの大量発現及び精製法の確立、②NMRによる遊離状態及び糖(シアリル酸糖鎖)結合状態でのSRCの立体構造解析、③NMRによるSRCの遊離状態及び糖結合状態での分子内運動の解析、④EW29Chとの立体構造及び分子内運動の比較、を行う。さらに、SRC-糖鎖複合体解析も行い、その分子間相互作用を原子間レベルで解析し、シアル酸糖鎖認識メカニズムを解明する。研究期間3年間の初年度である本年度において、①について、SRCは精製時に溶出液中に含まれる糖リガンド(ラクトース)共存下でない限り不安定で分解してしまうことから、遊離状態でのラベル体SRCの調製法は確立出来ていないが、ラクトース共存下での調製法は確立出来た。②について、ラクトース結合状態でのSRCのNMRシグナルについてほぼ帰属が完了した。現在、立体構造のためのNMR測定及びその解析を進めている。③について、ラクトース結合状態におけるSRCの分子内運動解析はほぼ完了した。④について、上記②と③の結果を用いて、ラクトース結合状態でのEW29Chとのケミカルシフトによる主鎖の構造比較及び分子内運動の比較により、SRCの特異的な糖鎖結合能獲得メカニズムにおいて、γサブドメインが重要であることが分かった。従って、本研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、SRCは精製時に溶出液中に含まれる糖リガンド(ラクトース)共存下でない限り不安定で分解してしまうことが判明したことから、ラクトース結合状態でのシアル酸結合性レクチン(SRC)のNMR解析と野性体レクチン(EW29Ch)との主鎖の構造及び分子内運動の比較を行った。次年度以降については、まず、精製後のシアル酸糖鎖含有緩衝液への交換に関する手法を早急に確立し、シアル酸含有糖鎖共存下でのNMR測定への供給体制を構築する。その構築後、シアル酸含有糖鎖共存下でのラベル体SRCを用いて、NMRにより、シアル酸糖鎖(シアリルラクトース等)結合状態のSRCの溶液中での立体構造及び分子内運動の解析を行うとともに、ラクトース結合状態でのSRC及びEW29Chとの構造及び分子内運動の比較を行い、シアル酸糖鎖結合能獲得メカニズムを解明する。さらに、糖鎖-SRC複合体解析を行い、その分子間相互作用についても、詳細に解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は交付申請時の計画どおり使用する。
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