2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590003
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 修治 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50419991)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | リモノイド / 全合成 / ラジカル環化 / 遠隔官能基化 |
Research Abstract |
リモノイドは、発がん抑制やコレステロール低下作用、昆虫摂食阻害活性など、優れた生物活性を示す変形トリテルぺノイドであり、300種類以上の同族体が知られている。第四級炭素を多数含む多環式炭素骨格が酸素官能基されたリモノイドの分子構造は、大きく発展した現代有機合成の技術を持ってしても非常に合成するのが難しい。申請者は、連続的炭素骨格構築と直接的官能基化反応を組み合わせた、前例のないリモノイド合成法を立案し、リモノイドの網羅的全合成研究を行っている。 本年度は、非常に複雑な構造を持つテクレアニンの全合成を達成することができた。即ち、独自に開発した連続的ラジカル反応を鍵として四環性炭素骨格を10工程で合成し、AB環部の酸素官能基化、D環部へのフラン環導入、光反応を利用したAA’環の形成を経て、テクレアニンの世界初の全合成を完成させた。 また、代表的同族体であるリモニンの全合成も大きく進展した。これまで非常に困難であったエポキシド存在下でのフラン環導入に成功し、重要中間体ビスカルボニル化合物まで合成できた。 一方、鍵反応である連続的ラジカルも改良することができた。これまで三環性化合物の構築に留まっていた本反応が、四環性化合物の一挙構築にも応用可能であることが分かり、基本的なリモノイドであるアザジラジオンの形式全合成に成功した。 最難関化合物であるアザジラクチンの合成研究では、遠隔アミノ化反応で得られるオキサチアジナンの定量的開裂をついに実現した。得られたアミノ基を利用してケト、ヒドロキシ、デヒドロ体の合成にも成功し、我々の合成戦略の有用性を実証できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度だけでテクレアニンの全合成とアザジラジオンの形式全合成に成功し、網羅的合成戦略の有用性を十分に証明できている。更に、リモニンの全合成も目前であり、25年度中には完成する予定である。また、最難関化合物であるアザジラクチンの合成に有効な、オキサチアジナンの効率的変換も達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、代表的同族体であるリモニンの全合成を完成させる。これまでの懸案だったフラン環の導入に成功し、重要中間体までの合成法を確立できたので、得られた知見を基盤にして、世界初の全合成を達成する。具体的には、二つのカルボニル基を利用してリモニンに特徴的なエポキシラクトンを形成後、光反応を利用したAA’環の形成、脱保護を経ることによって、本研究を完了できる。 アザジラクチン合成においては、AB環部の官能基化に課題を残していたが、ごく最近、これを解決できる方法を発見することができ、25年度内に全官能基の立体選択的導入を達成する。また、D環部へのフラン誘導体導入はD環部アルコールから検討を重ね、適切なフラン等価体を見出す予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究が当初の予定より格段に効率的に推進できたことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせて、平成25年度の研究推進に使用する予定である。 次年度は東日本大震災で被災した経験を生かすため、熱源を使用しないで有機溶媒を脱気、脱水できる有機溶媒精製装置の購入を検討している。また、後半からは新棟への引越し、研究室の立ち上げ準備に入るため、学会活動などそれまでに得られた成果を発表する機会が多くなる予定である。これに伴い、旅費の割合が多くなる予定である。
|
Research Products
(8 results)