2012 Fiscal Year Research-status Report
アンチWacker型環化反応の機構解析および多環式生物活性物質合成への応用
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24590004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塚本 裕一 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70323037)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アンチWacker型環化反応 / パラジウム / ホスフィン配位子 / 位置選択性 / 置換基効果 / 環化メカニズム |
Research Abstract |
平成24年度は,アンチWacker型環化反応における基礎的知見を得るため,アルキン上の置換基効果について検討した.水素,アルキル,アリール,アルケニル,アルキニル基について検討を行い,トリフェニルホスフィンを配位子として用いた際に末端アルキンでは6員環が,エンイン,ジインでは5員環のアリルアルコールが生成した.また,トリシクロヘキシルホスフィンを用いた際には,末端アルキン,エンインでは5員環が,アルキル,アリール,アルキニル置換体では6員環のアリルアルコールが優先的に得られた.また,これらの選択性は,求電子剤の種類によっても僅かながら変化し,用いる求核剤の種類によって大きく変化することはなかった.さらに,炭素原子をテザーに持つエンイン基質において,テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのみを用いてメタノール溶媒中加熱・撹拌を行ったところ,アルデヒドに由来する水素が導入された環化体,およびそれとほぼ同量のメチルエステル体を得ることができた(Tishchenko型反応).したがって,少なくとも本基質においてはパラジウム触媒の単独作用によって環化が進行することを証明することができた. 平成26年度に実施予定の多環式生物活性物質の合成についても既に着手した.当初予定していたN-プロパルギル-α-アミノケトンのアンチWacker型環化反応によるHaouamine B骨格構築が,モデル基質を用いた実験から実現困難であることがわかった.そこで,求電子剤をアルデヒドとし,アミノ基の保護基としてトシル基もしくはBoc基を用いたところ,アンチWacker型環化反応が効率よく進行し,形式合成を達成することができた.しかしながら,この合成過程において,Haouamine Bの提唱構造の訂正が報告されたため,現在その訂正構造の全合成に向けて研究を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環化メカニズムの検証に関しては,パラジウム触媒の単独作用によって行われている結果が示唆されたものの,全ての基質およびホスフィン配位子に関して,同様の環化メカニズムで反応が進行しているとは限らない.したがって,その他の反応基質についても,引き続き十分な検討を行う必要がある. 一方,アンチWacker型環化反応を利用した多環式生物活性物質の合成については,当初の計画よりも前倒しで検討を開始したが,標的化合物の提唱構造の訂正により,再度検討し直さなければならい点が増えた.
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Strategy for Future Research Activity |
パラジウム触媒の単独作用による環化メカニズムの検証に関しては,プロパルギル基の脱離などの副反応が起こらない炭素原子をテザーに持つ基質を用いて,非金属性求核剤存在下,様々な反応条件を検討することにする.特に,エンインやジインなどはアンチWacker型環化反応において反応性が高く,有用な基質になるものと推測される. また,パラジウム触媒と有機金属試薬との共同作用による環化メカニズムの検証では,現時点で用いる有機金属試薬の種類による環化成績体の生成比の変化を見出すことが出来ていないので,速度論解析や求核剤の競合実験を行うことによって,その可能性について検討する. さらに,Haouamine Bの訂正構造の全合成については,昨年度確立した合成法に基づき,不斉合成への展開を行う.構造訂正に伴って困難が予想されるFriedel-Crafts反応についても再検討する.当初予定していた分子内求核剤を利用する合成ルートについても,求電子剤をアルデヒドとしたモデル基質を用いて,再度検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費は,触媒や反応基質の調製に必要な有機試薬,無機試薬および有機溶媒の購入に使用する.国内旅費は,発表および情報収集のための学会参加費として使用する,なお,本年度に購入予定であった汎用量子化学計算プログラムGaussian 09および視覚化ツールGaussView 5は,研究費が不足しているため,次年度購入することにする.
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Research Products
(11 results)