2012 Fiscal Year Research-status Report
蛍光物質ライブラリーの構築及びその合成法を基にした、高機能蛍光センサーの開発
Project/Area Number |
24590005
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平野 智也 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (20396980)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 蛍光 / 生体関連物質 / センサー |
Research Abstract |
測定対象の分子種によって蛍光が変化する蛍光センサーは、分析化学のみならず、細胞生物学の研究においても必須の分子ツールである。本研究課題は、多種類の蛍光物質から構成されるライブラリーの構築および、その構築に用いた合成法を基にして、有用な機能を持った蛍光センサーの開発を目指す研究である。 平成24年度においては、蛍光団クマリンを母核とするライブラリー構築に用いたSuzuki-Miyauraカップリング反応、Huisgen反応を利用した蛍光センサー開発を行った。具体的には、クマリンに種々の銅二価錯体構造をHuisgen反応により導入した化合物群を合成した。銅二価錯体はクマリンの蛍光を消光するが、特定の生体内分子により還元されると消光していた蛍光が回復する。こうした還元能を持つ生体内分子のうち、活性窒素種の一つであるニトロキシル(Nitroxyl: HNO)に着目し、錯体構造および導入位置によるセンサーとしての機能の違いを精査した。その結果、ニトロキシルを高感度に検出するために最適な錯体構造を見いだすことに成功した。また、ニトロキシルに対して高選択的な蛍光センサーの開発を目指して、オルトフェニレンジアミン構造をSuzuki-Miyauraカップリング反応で、銅二価錯体をHuisgen反応で順次導入し、これらの反応団を併せ持つクマリン誘導体の合成にも成功した。 さらに構築した蛍光団クマリンのライブラリーから、リガンド依存性転写制御因子である核内受容体のプロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体に対する蛍光性リガンド分子を得ることにも成功した。加えてこうした研究の過程において、Huisgen反応前後で蛍光波長が変化するユニークな特性を持った蛍光物質の開発にも成功している。本分子は、特定の細胞内小器官における生体内分子の生理作用解析を可能とするセンサー開発につながる、有用な分子である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項で述べたように平成24年度は、ライブラリー構築に用いたHusigen反応、Suzuki-Miyauraカップリング反応を利用して、活性窒素種の一つであるニトロキシルに対する蛍光センサーの開発を行った。その結果、導入した銅二価錯体構造のX線結晶構造解析および、酸化還元電位の測定から、高感度な蛍光センサー開発においては錯体構造の最適化が有用であることを見出すことに成功した。こうした知見は、銅二価錯体の還元を蛍光変化のスイッチとする他の生体内分子種に対する蛍光センサー開発にも有用である。 さらに本研究の過程において、さらに多様な蛍光物質のクマリン誘導体の合成し、ライブラリーの拡張にも成功している。その結果、プロゲステロン受容体に対してさらに高活性なリガンド分子の開発に加え、アンドロゲン受容体に対する蛍光性リガンド分子を得ることにも成功している等、ライブラリー構築を基にした蛍光センサー開発においても着実な成果を挙げている。 加えて、これまでの研究においては母核となる蛍光団をクマリンとしてきたが、細胞に障害を与えない長波長で励起が可能で、より強い蛍光を持つ蛍光団Bodipy類へも同様の戦略を適用し、研究を発展させている。こうした戦略は、平成24年度でのニトロキシルに対する高選択的な蛍光センサー開発で行った、2つの反応団を併せ持つセンサー開発において特に有用となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に、ニトロキシルに対する高選択的な蛍光センサーの開発を目指して合成したオルトフェニレンジアミン構造と銅二価錯体の両方を併せ持つクマリンの誘導体は、ニトロキシルによる蛍光の変化が小さい等、未だ十分な機能を有していなかった。そこで、母核となる蛍光団をより蛍光が強いBodipy等の別の蛍光団へと変換し、同様の戦略による蛍光センサー開発を進める。こうした研究を進展させることにより、これまで構築してきたクマリンを母核とする蛍光物質ライブラリーに加えて、Bodipyを母核とする蛍光物質ライブラリーの構築も可能になる。 また、これまで構築してきた蛍光物質ライブラリーから、核内受容体であるプロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体に対するリガンド分子を得ることに成功しているが、こうした研究成果から、クマリン骨格がステロイドの部分構造を代替し得ることが示唆されている。そのため、他のステロイド分子を内因性リガンドとする受容体および、それらの変換反応を担う酵素群に対する蛍光センサーの開発を目指す。こうした分子は母核を蛍光団としているために、蛍光を有するという利点がある。そのため、受容体との結合前後や、酵素による変換反応において、蛍光特性が変化する機能を持つことも期待できるため、阻害剤開発のためのスクリーニング系の構築や、受容体の局在の蛍光による可視化解析等の研究へと応用できる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度までに引き続き、本研究の遂行に必要である、有機化合物の合成、生化学実験に用いる試薬、溶媒及びガラス器具等の消耗品の購入に用いる。特に25年度は、蛍光物質ライブラリーの各化合物の生物活性を解析するための、各種受容体蛋白質、酵素等の試薬の購入に使用することを計画している。 また、国内外の研究成果発表の為の旅費および、学術論文投稿のための費用も計上する。
|
-
[Journal Article] Structures of histone methyltransferase SET7/9 in complexes with adenosylmethionine derivatives2013
Author(s)
Hideaki Niwa, Noriko Handa, Yuri Tomabechi, Keiko Honda, Mitsutoshi Toyama, Noboru Ohsawa, Mikako Shirouzu, Hiroyuki Kagechika, Tomoya Hirano, Takashi Umehara, Shigeyuki Yokoyama
-
Journal Title
Acta Crystallographica Section D
Volume: 69
Pages: 595-602
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-