2013 Fiscal Year Research-status Report
蛍光物質ライブラリーの構築及びその合成法を基にした、高機能蛍光センサーの開発
Project/Area Number |
24590005
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平野 智也 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (20396980)
|
Keywords | 蛍光 / センサー / 生体関連物質 / 核内受容体 |
Research Abstract |
測定対象の分子種によって蛍光が変化する蛍光センサーは、分析化学のみならず、細胞生物学の研究においても必須の分子ツールである。本研究課題は、多種類の蛍光物質から構成されるライブラリーの構築および、その構築に用いた合成法を基にして、有用な機能を持った蛍光センサーの開発を目指す研究である。 平成25年度においては、母核となる蛍光団を多様化することによってライブラリーをさらに拡張し、新たに有用な機能を持った蛍光物質の探索を行った。その結果、特定のpH領域でのみ蛍光強度が増大する化合物を得ることに成功した(本成果は特許出願準備中)。これまでに開発されたpH変化を検出する蛍光センサーは、例えばpH5 以下の酸性側、またはpH9以上のアルカリ性側、というように特定の値以上、もしくは特定の値以下のpHを検出する機能しか持ち得なかった。これに対してライブラリーから見出されたセンサー分子は、pH8~10という特定のpH領域でのみ蛍光を発する機能を持つことが明らかとなった。こうした機能を発現した原理の解析を進めた結果、同様の機構により特定の濃度域の金属イオンを検出するセンサーの開発等にも応用できることが示唆された。 また、こうしたセンサーに加えて、酵素による反応や、生理的な条件下で引き起こすことができる選択的な化学反応により、センサーとしての性質が変化する分子の開発にも成功している。これらの分子は、特定の酵素活性が亢進しているガン細胞や、細胞内小器官に限局した生体内分子の濃度変化解析等への応用が可能であり、細胞生物学の研究のみらならず、病理診断等に用いることが可能な有用な分子に展開できると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではこれまでに、構築した蛍光物質ライブラリーから、溶媒の粘性変化、特定のpH領域の検出等の様々な外部環境変化を検出するセンサーの開発に成功している。また、ライブラリーを生理活性と蛍光を併せ持つ分子の開発にも適用した。その結果、リガンド依存性転写制御因子である核内受容体ファミリーに属する、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体の機能を制御する生理活性と、受容体との結合依存的に蛍光強度が増大する機能も持った分子を得ることにも成功している。こうした分子は、阻害剤開発のためのスクリーニング系の構築、受容体の局在の蛍光により可視化解析等の研究へと応用できる。上記の研究成果は、蛍光物質ライブラリーを基にした蛍光センサーの開発という、本研究の目標が着実に達成されていること、および研究の順調な進捗を示している。 さらに本研究によって、酵素や化学反応によりセンサーとしての性質が変化する分子の開発にも成功している。こうしたセンサーは、ガンという特定の状態の組織、細胞膜近辺やリソソーム、ミトコンドリア等の特定の細胞内小器官に限局した生体内分子の濃度変化の解析に用いることが可能である。こうしたこれまでにない有用な機能を持った蛍光センサーを産み出していることも、本研究の順調な進捗を示している。
|
Strategy for Future Research Activity |
前項までで述べた特定のpH領域を検出する蛍光センサーは、分子の構造を適切に改良することにより、検出するpH領域を8~10から、6~8等へと調整することが可能になると考えている。さらに、母核となる蛍光団を変換することによって、蛍光の色が異なる同様の機能を持ったセンサーの開発も可能になると考えている。すなわちこうしたセンサー群を開発し、組み合わせて用いることにより、例えばpH8~10を青色で、pH6~8を緑色で、pH4~6を赤色で、というように、幅広い領域のpHを蛍光変化によってリアルタイムに測定することが可能になると考えている。こうした分子群は細胞内、細胞内小器官内という非常にミクロな領域で機能するpHメーターとなりえる。近年、温度やpH、粘性等の外部環境変化が生理作用を引き起こすシグナルとして作用していることが示唆されている。しかし、こうした変化を生きた細胞、組織で簡便かつリアルタイムに解析する手法はほとんど開発されていない。本研究では粘性の変化を検出するセンサーをライブラリーから既に得ている等、外部環境変化の検出する様々なセンサーの開発に成功している。今後はこうした外部環境変化を検出するセンサーの開発をさらに進め、生体内分子を検出するセンサーと同時に用いることにより、細胞内情報伝達機構における環境変化の役割の解明を進めていきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事務手続きの関係上、次年度の使用額として計上することとなったため。また、一部の消耗品費の支払いが4月になったため。 事務手続き上のことであり、発注した物品は次年度初頭に既に納品されている。そのため次年度当初の研究において使用する計画であり、その費用も次年度の消耗品費として計上する。
|
-
-
[Journal Article] Structures of histone methyltransferase SET7/9 in complexes with adenosylmethionine derivatives2013
Author(s)
Hideaki Niwa, Noriko Handa, Yuri Tomabechi, Keiko Honda, Mitsutoshi Toyama, Noboru Ohsawa, Mikako Shirouzu, Hiroyuki Kagechika, Tomoya Hirano, Takashi Umehara, Shigeyuki Yokoyama
-
Journal Title
Acta Crystallographica Section D
Volume: 69
Pages: 595-602
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-