2013 Fiscal Year Research-status Report
様々なアミノ酸サイトでのペプチドフラグメント縮合を可能とする高汎用性補助基の開発
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24590010
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
重永 章 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (10423394)
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Keywords | NCL / タンパク質化学 / ペプチド化学 / フラグメント縮合 |
Research Abstract |
本研究では、様々なアミノ酸サイトでのペプチドフラグメント縮合を可能とする高汎用性補助基の開発を目的とする。 多くの医薬品は、タンパク質と相互作用することによりその作用を発現する。すなわち、これらタンパク質の機能解明は新薬開発につながる可能性がある。タンパク質の機能解明研究において、蛍光色素などのレポーター分子で修飾したタンパク質が汎用される。特定部位のみが修飾されたタンパク質の調製法の一つとして、タンパク質化学合成の利用が挙げられる。近年、タンパク質の化学合成において、ペプチドフラグメント同士の縮合を可能とするNCL法が汎用される。しかし本手法には、縮合部位にシステイン残基を必要とするという制約があった。そこで本研究ではこの制約を打破するため、システイン側鎖模倣型補助基を利用したシステイン不要なフラグメント縮合法を確立することとした。 本研究は下記順に従って進めることとした。1)補助基誘導体の合成、2)補助基誘導体の保護アミノ酸への導入、3)補助基含有アミノ酸誘導体のペプチドへの導入、4)補助基含有ペプチドのNCL様反応の検討、5)補助基の除去、6)本手法の他のアミノ酸サイトでの縮合への展開。 申請者は昨年度に引き続き、上記A~Eについてさらなる合成・反応条件最適化について検討した。この結果、補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドがNCL様反応に適用可能であるものの、反応効率を上げるためには種々の工夫が必要となることが明らかとなった。さらに補助基除去の際、紫外線照射によりシステイン側鎖が副反応を誘起することが判明した。現在、これら課題を克服すべく研究を遂行しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度に引き続き、下記1から5について合成・反応条件最適化を行うとともに、特にアスパラギン誘導体のNCL様反応について精査した。 1)補助基誘導体の合成:アスパラギン側鎖への導入を念頭に置いた補助基誘導体の合成;2)保護アミノ酸への導入:補助基誘導体をアスパラギン側鎖上へ導入した後、補助基含有アスパラギン誘導体の合成;3)ペプチドへの導入:アスパラギン誘導体をFmoc固相合成法によりペプチドへ導入し、N末端に補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドを合成;4)NCL様反応の検討:Cより得られるペプチドを用いたNCL様反応の検討;5)補助基の除去:NCL様反応生成物からの補助基の除去法 この結果、補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドのNCL様反応への適用に成功した。さらに反応を精査したところ、本反応には2つの課題があることが判明した。すなわち、通常のNCL反応より反応の進行が遅いこと、および補助基除去に用いる紫外線照射がシステイン側鎖の副反応を誘起することの2点である。今年度はこれら課題の解決をめざして検討を行った。この結果、前者については中員環遷移状態を経ることが反応効率を低下させていること、後者についてはシステイン側鎖のチオール基がチイルラジカルとなり副反応を誘起していることが原因であると示唆された。以上に述べた通り、本研究の課題が明らかとなり、その原因もおおむね判明し解決のための方向性を見出すにいたったことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項にて記載した通り、アスパラギン誘導体を含むペプチドのNCL様反応では目的とする縮合成績体が得られるものの、2つの課題があることが明らかとなった。そこで今後は、補助基含有アスパラギン誘導体を含むペプチドのNCL様反応および脱保護時の課題を解決したのち、本方法論のアスパラギン以外のアミノ酸部位(アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニンなど)での縮合への展開について検討する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既存の器具や試薬を使用することができ、消耗品費が抑制されたため。 翌年度分とあわせ、各種試薬や器具を購入するための費用に充てる計画である。
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