2013 Fiscal Year Research-status Report
点-軸-点不斉の多段階不斉転写による不斉四級炭素構築
Project/Area Number |
24590016
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
江木 正浩 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (80363901)
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Keywords | アレン / シグマトロピー転位 / 不斉転写 / プロパルギルアルコール / イナミド / 分子内環化 / インデン / 不飽和ラクトン |
Research Abstract |
アレン化合物は生物活性天然物や医薬品などに多数含まれ、また、高い反応性を示すため合成中間体としても幅広く利用されている。その重要性からアレンの合成法が盛んに研究される一方、光学活性な四置換アレン化合物の効率的合成法はほとんど無い。そのため、多置換アレンの軸不斉を活用する不斉反応への展開が期待されているが、その反応挙動について詳細な検討は行われていない。 本研究では、光学活性な四置換アレン化合物の合成法開発、並びにキラルシントンとして不斉合成への利用を検討する。すなわち、プロパルギルアルコールの点不斉を[3,3]-シグマトロピー転位を経てアレンの軸不斉に変換、さらに分子内環化により不斉四級炭素(点不斉)の構築へと不斉転写を連続して行い、立体化学の完全な制御に取り組む。平成25年度の研究では光学活性な四置換アレンを用いる分子内環化反応の開発を重点的に行い、以下の成果を得た。 1. 白金触媒を用いる四置換アレンからインデンへの変換反応では、その環化過程において若干の光学純度の低下が見られていた。今回、光学純度が低下する原因を解明し、完全に光学純度を維持できる反応例を見出した。 2. アミド側鎖を有するアレン化合物の分子内環化反応は、白金触媒存在下ではインデンを与えるが、銀触媒を共存させると不飽和ラクトンを生じることが分かった。銀触媒の有無が引き起こす化学選択性は、幅広いアレン化合物に適用でき、目的物をそれぞれ収率良く与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミド側鎖を有する四置換アレンは白金触媒によりインデンへ分子内環化することを昨年度見出した。しかし、軸不斉(アレン)から点不斉(インデン)への転写において光学純度の若干の低下が見られていたため解決すべき課題であった。今年度、光学純度を完全に維持した反応例を示すことができ、四置換アレンの軸不斉が不斉四級炭素構築に利用可能であることを明らかにした。また、触媒の組み合わせにより、アミド側鎖を有する四置換アレンは興味深い化学選択性を示すことが分かった。白金と銀触媒の組み合わせによる新たな反応は不飽和ラクトンを収率良く与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの計画を完了すると共に、アミド側鎖を有する光学活性な四置換アレンを用いる不斉四級炭素構築法の開発を重点的に行う。 1. 多置換不飽和ラクトンの不斉合成法の開発:白金-銀触媒により不飽和ラクトンが得られることを見出したが、光学活性なアレンを用いても生成物はラセミ体であった。ラセミ化の機構解明とともに、カチオン性金属触媒を中心に検討を行い、アレンから完全に不斉転写できる条件を確立する。 2. 多置換不飽和シクロブタンの不斉合成法の開発:従来合成困難な光学活性かつ多置換のシクロブタン合成法を開発する。光学活性な四置換アレンの分子内[2+2]環化付加を鍵反応とし、光またはマイクロ波の照射、遷移金属触媒の検討により、一般性の高い合成法を開発する。 3.多置換インデン合成法を鍵反応に用いる天然物raputindole Aの全合成研究:予知見として、インデンとインドールを併せ持つ母核の構築に成功している。光学活性なプロパルギルアルコールを原料に用いて母核構築、側鎖の導入など検討を行い、不斉全合成を達成する。 また、これまでに得られた研究成果を取りまとめ、積極的に論文及び学会発表を行う。
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Research Products
(1 results)