2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
牧野 一石 北里大学, 薬学部, 教授 (20302573)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | FLPs / 有機ホウ素化合物 / 水素固定 / 触媒的不斉水素化反応 |
Research Abstract |
研究開始初年度はホウ素原子とリン原子または,ホウ素原子と窒素原子を含む「非金属分子」の合成を試みた。光学活性な有機ホウ素化合物としては,面不斉をもつフェロセン誘導体,軸不斉をもつビフェニル誘導体,アミノ酸由来の不斉をもつオキサゾール誘導体の合成を検討した。しかしながら,いずれもホウ素原子の導入が困難であること,さらに合成したトリアリールホウ素化合物が化学的に極めて不安定であり,その単離や精製,分子構造の決定が難しいことが問題となった。そこで水や空気に対して比較的安定な性質を有する有機ホウ素化合物の合成を行うこととした。有機ホウ素化合物の化学的安定性に関する様々な検討を重ねたところ,1.立体障害の大きなメシチル基を少なくともホウ素原子上に2つもつ化合物,または,2.ピリジン由来の窒素原子を分子内の適切な位置にもつ有機ホウ素化合物が水や空気に対して安定性をもつことを明らかにすることができた。このような知見をもとに,ピリジンをもつアキラルな7種のトリアリールホウ素化合物の合成に成功した。また光学活性化合物に関しては,軸不斉をもつビフェニル構造をもつピリジン誘導体の合成を行っており,現在,ホウ素原子の導入を検討している。 気体状水素分子に対するピリジンをもつトリアリールホウ素化合物の反応性についても検討を行っており,水素加圧条件(100気圧)や加熱条件,様々な反応溶媒や反応基質に対して水素化反応を行ったが,現在のところ水素付加体は得られていない。これはホウ素の空軌道に対して,ピリジンの窒素原子が強く配位していることが原因として考えられることから,この配位結合を切断するためにブロンステッド酸やルイス塩基の添加物の検討を引き続き行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった1.ホウ素および非共有電子対をもつ典型元素を含む「非金属分子」の合成については目的を達成した。検討の結果,重要な知見としてホウ素原子上のアリール置換基の立体的大きさと化学的安定性の関係,およびピリジンの窒素原子のホウ素空軌道への配位による化合物の安定化効果の関係を明らかにすることができた。これらの知見は,より複雑な構造をもつ有機ホウ素化合物を合成するうえで極めて重要な示唆を与えるものである。第二の目標であった水素分子に対する「非金属分子」の反応性と触媒的水素化反応への適用については,肯定的な実験結果が得られていない。すでに気体状水素の固定化については,水素圧や反応温度,その他の反応条件について検討を行っているが,水素の有機化合物への固定化は確認できていない。これは分子内におけるホウ素原子への窒素原子の配位結合が強すぎるためであることが考えられ,今後この結合の開裂させることを中心に添加物についての検討を中心に進める。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において,空気や水に対して比較的安定な有機ホウ素化合物の合成法については確立することができたことから,今後はホウ素原子上の空軌道のLUMOのエネルギーレベルの低下および非共有電子対をもつ窒素原子上の電子密度の低減させた様々な有機ホウ素化合物の合成を検討していく。また非共有電子をもつ原子として窒素だけではなく,リンや硫黄,酸素を有する有機ホウ素化合物の合成についても進めていく。またキラリティーをもつ分子については,現在進めているビフェニル構造をもつピリジン誘導体の合成を中心に進める。 気体状の水素分子の固定化については,分子内におけるホウ素原子への窒素原子の配位結合が強すぎるためであることが水素化が進行しない原因と考えており,ブレンステッド酸やルイス塩基の外部から添加について検討を進めていくとともに,上述の電子密度や立体構造をチューニングした様々な有機ホウ素を反応系に適用することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分については,試薬や溶媒,シリカゲルの購入,特殊なガラス器具の作成と購入,NMRや質量分析,元素分析などの経費として物品費(140,000円)として使用する。その他に,研究成果発表のための学会出席の旅費(20,000円),論文作成のための英文校閲費をその他の経費(10,000円)として予定している。
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Research Products
(11 results)