2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590018
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
牧野 一石 北里大学, 薬学部, 教授 (20302573)
|
Keywords | FLPs / 有機ホウ素化合物 / 水素固定 / 触媒的不斉水素化反応 |
Research Abstract |
初年度の知見をもとに,空気や水に対して安定な性質をもつニ種の有機ホウ素化合物,すなわち 1.立体障害の大きなメシチル基をホウ素原子上にニつ有する有機ホウ素化合物,2.ピリジン由来の窒素原子を分子内の適切な位置にもつ有機ホウ素化合物に関して,気体状水素の固定化能および触媒的水素化反応への応用を検討した。1および2のいずれの有機ホウ素化合物について,水素圧や反応温度,溶媒の検討を行ったが,ホウ素原子上への気体状水素の固定化はNMRやMassスペクトルにおいて確認できなかった。さらにイミンに対する水素化反応に関してもあわせて検討を行ったが,望みとする反応は進行しなかった。そのため,2のピリジンを分子内にもつ有機ホウ素化合物に対して,様々なブレンステッド酸やルイス塩基,フッ素アニオン,シラン等の添加を行い,有機ホウ素化合物の活性化を試みたが,水素化反応は進行しなかった。これは,ピリジン由来のsp2性窒素原子の孤立電子対がホウ素の空の2p軌道に予想以上に強固に配位しているためであると仮定し,新たな有機ホウ素化合物の合成を検討した。その結果,ホウ素原子の近傍にエーテル性のsp3酸素原子をもつ化合物とホウ素原子の近傍にカルボニル性のsp2酸素原子をもつニ種の新規有機ホウ素化合物の合成に成功した。これらの化合物において,酸素原子とホウ素原子の空間的な距離と置換基が,その化学的安定性に極めて重要であることが現在までに確認できている。したがって,これらを調整することによって,空気や水に対して適度な化学的な安定もち,かつ気体状水素に対して反応性を有する有機ホウ素化合物が見出せることを期待し,気体状水素の固定化と触媒的水素化反応の検討を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トリアリール型有機ホウ素化合物が極めて不安定であるため,当初予定していた光学活性をもつ有機ホウ素化合物の合成および同定が困難であった。この問題については,ホウ素原子上の置換基を嵩高くすること(立体保護効果)や分子内の適切な位置にピリジン環などの配位性元素をもつ置換基を持たせることで,空気や水に対して安定であり,取り扱いが容易な化合物の合成を見出すことができた。しかしながら,ピリジン由来のsp2性窒素原子の孤立電子対がホウ素の空の2p軌道に極めて強固に配位しており,この結合を切断することが当初の予想以上に難しく,有機ホウ素化合物の分子設計を見直す必要性が生じたためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに他の競合するグループにより,FLPs概念に基づいた気体状水素を固定化し水素化反応に適用可能な有機ホウ素化合物が報告されている。しかしいずれの化合物も空気や水に不安定であるために,その構造は極めて単純なものに限られており,高い機能性を有する有機ホウ素化合物の開発には至っていない。私たちの今までに検討により,有機ホウ素化合物に安定化を付与する電子的および立体的因子を明らかすることができている(未発表データ)。これらの知見をもとに,ホウ素原子への配位が弱く,可逆性をもつと期待されるsp2性またはsp3性酸素を分子内に配置した有機化合物を中心にして,その合成と触媒的水素化反応への検討を進めていく。
|