2013 Fiscal Year Research-status Report
アクチンを標的とする抗腫瘍性ペプチドRA-VIIのファルマコフォアの解明と応用
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24590024
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
一柳 幸生 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80218726)
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Keywords | ペプチド / アルカロイド / 構造決定 / 配座解析 / 抗腫瘍活性 / 細胞毒性 / アナログ |
Research Abstract |
≪アザシクロイソジチロシンアナログの合成≫ RA-VIIの立体構造を維持したまま水溶性を改善すること、および芳香環の電子密度の増強が細胞毒性活性に及ぼす影響を検証すために、シクロイソジチロシンのエーテル酸素原子を窒素原子に置き換えたアナログを合成した。市販の4-ニトロ-L-フェニルアラニンより4-アミノフェニルアラニン誘導体へ変換し、ボロン酸基を有するチロシン誘導体とジペプチドを形成したのち、申請者らが開発したシクロイソジチロシン合成法を適応することにより、分子内ジフェニルアミノ化を行い、アザシクロイソジチロシンへ誘導できた。これに別途合成した残基1-4に相当するテトラペプチドを縮合し、アザアナログの合成を完了した。本化合物の1H-NMRスペクトルは、RA-VIIのそれと酷似していた。また、本アナログの最安定配座構造を分子モデリングによりRA-VIIの結晶構造と比較したところ、ほぼ完全に一致するほどの類似性を示した。一方、本アナログの13C-NMRスペクトルの化学シフト値より、窒素原子による置換により、芳香環の電子密度がRA-VIIに比べて高くなっていることが確認できた。本アナログを細胞毒性試験により評価したところ、はRA-VIIに比べて活性は低下していた。従って、シクロイソジチロシンの芳香環の電子密度を上昇させると、細胞毒性活性は低下することが示された。 ≪天然有機化合物ライブラリーの構築≫ Stemona tuberosaの根より得たメタノールエキスの分離精製を行い、3種の新規アルカロイドを得た。これらの化合物の相対構造は、機器スペクトル解析、X線結晶解析および化学的手法により決定した。絶対配置は、これらの化合物のVCDスペクトルをそれらの計算値と比較することにより決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シクロイソジチロシンのエーテル酸素原子を窒素原子に置き換えたアナログの合成については、一部の工程の化学収率に問題を残すものの、予定通りに合成を行うことができた。分子モデリングとNMRスペクトルより、このアナログがデザイン時に想定した立体的、電子的な化学的性質を備えていることを証明できた。さらに、細胞毒性試験により生物活性評価を行い、シクロイソジチロシンの電子密度を高くすると、細胞毒活性が低下することを明らかにすることができた。この知見は、構造を単純化したRA系ペプチドアナログのデザインにおいて、たいへん有益な情報を提供することになる。 一方、天然有機化合物ライブラリーの構築においては、3種の新規アルカロイド化合物を得ることができた。その構造決定においては、非破壊的に絶対配置も決定できた。これらの新規化合物のうちの2種については、これまでに報告のない特異な骨格構造を有するものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
アザシクロイソジチロシンアナログができたことで、芳香環の電子密度を上昇させると細胞毒性活性が低下することが示された。そこで、電子密度を低下させたシクロイソジチロシンアナログとして芳香環の水素原子をフッ素原子で置換したアナログの合成を試みる。フッ素原子は電気陰性度が大きいため、芳香環の電子密度を大きく低下させる。一方、原子半径が小さく、立体的な影響は少ないものと考えられる。その合成を行うにあたり、残基5にフッ素原子を導入したアナログでは、先ず市販の3-フルオロ-L-チロシンより誘導してボロン酸ジペプチドを合成し、酢酸銅試薬による分子内ジフェニルエーテル結合形成反応によりフルオロシクロイソジチロシンへ誘導する。これに別途合成した残基1-4に相当するテトラペプチドを縮合し、マクロ環化反応により18員環ペプチド骨格の構築を試みる。また、残基6にフッ素原子を導入したアナログは、天然のdeoxybouvardin (RA-V) よりニトロ化後還元し、ジアゾニウムを経て合成できるものと考えられる。これらのアナログの合成が達成できた場合、NMRスペクトルより得られる情報を活用し、分子モデリングによりRA-VIIとの三次元構造上の相違点を検証する。良好な結晶を与えた場合は、単結晶X線解析により結晶中の配座構造を明らかにする。P388マウス白血病細胞、HL-60ヒト骨髄性白血病細胞等に対する毒性を評価し、芳香環の電子密度を低下させることによる活性への影響を考察する。 一方、天然有機化合物ライブラリー構築のための植物素材の収集、および種々の材料より化合物の単離精製・構造決定を継続する。
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Research Products
(8 results)