2012 Fiscal Year Research-status Report
分子標的型インドールアルカロイドの新規合成とそのアポトーシス誘導抗がん機序の解明
Project/Area Number |
24590025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小中原 猛雄 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80084333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 教郎 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (00328569)
池田 玲子 東京理科大学, 理工学部, 助教 (60516441)
青木 伸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00222472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / アポトーシス / β-カルボリン / チューブリン重合阻害 / ヘテロ環 / 合成 |
Research Abstract |
(i)β-カルボリン誘導体の構造最適化とその作用機構の解明:我々がこれまでに開発した3-(3-phenoxybenzyl)amino-β-carboline (1)の高い抗腫瘍活性を凌駕する高い抗腫瘍活性をもつβ-カルボリン誘導体開発のために、化合物1の1位置換基の最適化を行った。また、化合物1の水溶性向上のために、種々の長さのPEG鎖を化合物1の9位に2個のメチレン鎖を介してエステル結合で導入したところ、高い水溶性が得られた。また、化合物1の作用機構解明のために、細胞免疫染色法により1による処理前後の微小管構造の変化を観察した。その結果、通常、細胞質全体に網目状の重合チューブリンが観察されるのに対し、1はノコダゾールと同様に微小管ネットワークの形成を阻害した。さらに、チューブリン重合阻害活性試験を行った結果、1はノコタゾールの2.5倍も強い重合阻害能を示した。一方、1の安全性を調べるために、HeLa S-3担がんマウスを用いた動物実験を行い、1の投与限界濃度を求めた。投与限界濃度以下での投薬試験の結果、化合物1はHeLa S-3がん細胞の増殖を抑制する効果を示すことが明らかになった。 (ii)β-カルボリンおよびエリプチシン配糖体の合成:上記PEG鎖の代わりにグリコシル基を導入した誘導体を合成し、高い水溶性を確認した。そして、これらの化合物の抗腫瘍活性は親化合物のそれより少し低下するものの依然として高い抗腫瘍活性を維持することをはじめて明らかにした。 (iii)β-カルボリン類縁体の新規合成:化合物1の合成には8ステップ以上の多段階を必要とする。今回開発した方法は、β-およびδ-カルボリンの合成を可能にするばかりでなく、β-カルボリン類縁体(5H-pyrimido[5,4-b]indole)を選択的に高収率で、しかもわずか2ステップで合成することができる画期的な方法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにあまり合成例のない1-置換β-カルボリン誘導体の抗腫瘍活性における構造活性相関研究のために、その新規液相合成法の開発を種々検討し、数種類の1位置換体を合成することに成功した。また、β-カルボリン誘導体の水溶性向上のために9位にリンカーを介して種々の長さのPEG鎖を導入し、期待通り高い水溶性を得ることができた。一方、β-カルボリン誘導体の抗腫瘍活性発現機構を明らかにするために、細胞免疫染色法およびチューブリン重合阻害実験を行ったところ、本薬剤はチューブリンの重合を強く阻害していることがわかり、その強さはノコタゾールの約2.5倍であった。また、担がんマウスを使った動物実験により本薬剤はHeLa S-3細胞に対して増殖抑制効果をもつことがわかった。さらに、がん細胞で異常に発生するGLUTを利用するがん細胞特異的抗腫瘍剤開発のためのβ-カルボリン配糖体の合成法に一応の目途をつけることができた。当初計画では25年度に予定していた遷移金属触媒を用いるカップリング反応によるβ-カルボリン類縁体の新規合成法の開発を前倒しで行い、5H-pyrimido[5,4-b]indole(4-アザ-β-カルボリン誘導体)をわずか2ステップで効率よく合成する新しい方法を開発することに成功した。この方法はβ-カルボリン誘導体の合成にも応用でき、従来8ステップ以上を要したβ-カルボリン誘導体の合成をわずか2ステップで達成できる画期的な方法である。エリプチシン誘導体の水溶性の向上および配糖体の合成、フルオラス固相法によるβ-カルボリンおよびエリプチシン配糖体の合成に関しても研究を進めているが、その達成にはもう少し時間を要する。以上のことより判断して、24年度の研究計画は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
抗腫瘍活性発現において、β-カルボリン誘導体がチューブリンのどの部位と作用しているか明らかにするために競争阻害実験やα-チューブリン遺伝子プロモーター領域のdeletion assay等を計画している。また、合成に成功した高水溶性β-カルボリン誘導体や合成に一応の目処がついた配糖体の合成反応の条件を詳細に検討し、収率の向上を図る。そして、これらの化合物の抗腫瘍活性の評価、動物実験による毒性評価とin vivo抗腫瘍活性試験を行うほか、配糖体がGLUTにより効率的に細胞内に移送されるかどうかを明らかにする。さらに、現在IC50値がμMオーダーにあるβ-カルボリン誘導体の抗腫瘍活性をnMオーダーに高めるために、その6-位にフッ素原子などのフッ素系置換基を導入すると同時に、まだ明らかにされていない1位の置換基効果を明らかにする。また、エリプチシン誘導体の水溶性の向上および配糖体の合成、フルオラス固相法によるβ-カルボリンおよびエリプチシン配糖体の合成に関しても研究をさらに進めると共に、今回新たに開発した遷移金属触媒カップリング反応をβ-カルボリン誘導体の合成に適用し、δ-カルボリンとの選択的作り分けの条件を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度からの繰越額\898,624に25年度交付予定額\700,000をあわせて研究推進のために効率的に使用する。24年度に明らかになった上記問題点を重点的に解決し、研究のさらなる促進と展開を図る。本研究では3-アミノ-β-カルボリンが研究推進の鍵化合物であるが、これまでこの化合物をトリプトファンから6ステップで合成していた。しかし、その合成に多くの時間を費やすため、試薬会社の協力を得て試薬としての供給が可能になった。研究費の一部をその購入に充て研究の効率化と促進を図りたい。さらにエリプチシンについても同様な可能性を探り、さらにはフルオラス合成への応用を図るために、その試薬の購入に充てる予定である。また、25年度にも引続き動物実験を予定しているが、高価な実験動物の購入にも充てたい。
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Research Products
(51 results)