2012 Fiscal Year Research-status Report
不斉パイアリルパラジウム錯体を経由する動的速度論的光学分割反応の開発と応用
Project/Area Number |
24590029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
廣谷 功 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (70192721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重久 浩樹 武蔵野大学, 薬学研究所, 助教 (60612471)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動的化学分割反応 / 不斉配位子 / パラジウム錯体 / 不斉全合成 / アルカロイド |
Research Abstract |
本研究の基礎となる炭素-炭素結合形成を伴う動的光学分割反応は既に見出しているが,収率に関する再現性が乏しく,安定した結果が得られる反応条件はまだ確立できていない.平成 24 年度は,反応条件の最適化と生物活性アルカドイドの全合成を推進するために,まず大量かつ容易に原料を合成するルートの再検討を行うことにした. これまでの合成経路では,大量の原料を用いた反応では,収率の著しい低下や副生成物の生成が観察された箇所が複数認められた.そこで,10 g 以上の化合物を用いても再現性良く生成物を得ることができる合成経路の確立を目指して検討を行った.検討した経路によっては,揮発性化合物を経由するものや,副生成物との分離が困難であり,それ以上の検討を断念した経路も有ったが,最終的に容易な実験操作,安定した中間体,かつ大量に動的光学分割反応の条件検討を行える基質を合成できる合成経路を確立できた. 次に,動的光学分割反応の最適条件探索を行った. Pd(0)-不斉配位子錯体を用いた反応では,高い光学純度をもつ生成物を得ることができたものの,収率の再現性に問題を残した.そこで, Pd(II) 錯体を反応系内で Pd(0) に還元してから基質を加えて反応させる手法を試みた.検討の結果,マロン酸ジエチルのナトリウム塩を還元剤として用いる反応条件では,グローブボックスのような特殊な実験装置を必要とせずに動的光学分割反応を実施可能であることを明らかにできた.しかし,収率には未だに改善する余地を残しており,さらなる反応条件の最適化を目指す予定である. 一方,生物活性アルカロイドの不斉合成研究に関しては,ラセミ体の原料を用いて検討を行った.その結果,パラジウム錯体を触媒としてシクロペンタノン誘導体のベータ位の立体化学を利用してベンジル位にアリル基を立体選択的に導入する手法を確立できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予想していなかった動的光学分割反応のための基質合成の再検討に多くの時間を要したため,予定より多少進行が遅れ気味であることは否めない.しかし,「現在での達成度」の欄にも記載したように,(1) 原料合成に関しては効率的な手法を確立することができていること,(2) 動的光学分割反応は,安定な Pd(II)-不斉配位子錯体を系内で 0 価に還元してから反応に用いる方法が好結果を与える,という二点を明らかにしているため,平成 25 年度内に平成 24 年度の遅れは取り戻せると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
動的光学分割反応は,Pd(II)-不斉配位子錯体を用いて,系内で還元して反応に用いる方法が好結果を与えることを既に明らかにしているため,本法を用いて,溶媒,反応温度,不斉配位子の検討を行って反応条件の最適化を計る.また,炭素-炭素結合形成を伴う動的光学分割反応は,これまでに報告例が無いことから,その反応機構にも興味がもたれる.しかし,触媒反応の機構を機器分析により解析することは困難であると考えられるため,多彩な基質を合成して,反応速度と立体選択性を考慮して機構を解明したい. 生物活性アルカロイドの不斉全合成への応用に関しては,合成成功への鍵と考えていたベンジル位不斉第四級炭素の立体選択的構築に成功しているため,今後は実際の合成経路に関して検討を行う段階にある.まず合成経路の確立のため,ラセミ体を用いて検討を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の実施には,研究室に高速液体クロマトグラフィー装置が既設であり,大学に共通機器として核磁気共鳴測定装置,赤外線スペクトル測定装置,質量分析装置,および比旋光度計が既設であるため,他の機器の購入は予定していない.次年度の研究費は,有機試薬,無機試薬,溶媒,ガラス器具,および光学純度測定用のキラル HPLC カラムなどの消耗品を購入する予定である.
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Research Products
(8 results)