2013 Fiscal Year Research-status Report
不斉パイアリルパラジウム錯体を経由する動的速度論的光学分割反応の開発と応用
Project/Area Number |
24590029
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
廣谷 功 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (70192721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重久 浩樹 武蔵野大学, 薬学研究所, 助教 (60612471)
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Keywords | 動的光学分割反応 / 不斉配位子 / パラジウム錯体 / 不斉全合成 / アルカロイド |
Research Abstract |
平成25年度は,既に見出すことに成功している炭素-炭素結合形成を伴う動的光学分割反応を生物活性アルカロイド全合成に適用できるような実用的レベルまで到達させる事を第一の目的として,反応条件を精査した. 平成24年度に実施した研究では原料合成経路の最適化に成功した.しかし,メタセシス反応を用いる従来の方法では,スチレンを用いた場合には中程度の収率で目的化合物を得ることが出来ていたが,官能基を有するスチレンでは著しい収率の低下と分離困難な副生成物が生成することが明らかとなった.そこで,フェニルアセチレンおよびその誘導体を用いる経路に変更することにした.その結果,工程数は従来法よりも一段階増えたが,安定した収率で反応機構を解析するために必須である様々な官能基を有する基質の合成にも適用可能な経路を確立することが出来た. 次に,動的光学分割反応の最適条件探索を行った.平成24年度は,マロン酸ジエチルのナトリウム塩を還元剤として用い,Pd(II) 錯体を反応系内で Pd(0) に還元してから基質を加えて反応させる手法の開発に成功した.しかし,不斉配位子とアリルパラジウム (II) クロリド二量体から調製した不斉パラジウム (II) 錯体は,作成から日時が経ったものを使用すると反応の収率が低下する傾向が見られた.このことは実際に不斉全合成に適用する際には問題となると考え,同一フラスコで錯体を調製して反応を行う手法を検討した.本法は,収率に未だに問題を残しており,引き続き平成26年度も改良を行う予定である. 一方,生物活性アルカロイドの不斉合成研究に関しても検討を行った.これまでに成功していたケトンのα位へのアリル基の立体選択的な導入は,後の官能基変換で問題になることが分かった.そこで,β位置換基を先に修飾してからアリル基の導入を行うことにした.平成26年度も継続して検討を続ける予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に確立したメタセシス反応を用いる経路が,官能基を有する基質合成には適用し難いことが明らかになったため,予定より多少進行が遅れ気味であることは否めない.しかし,「現在での達成度」の欄にも記載したように,(1) 原料合成に関しては,工程数は増えたが,収率良く様々な基質合成に適用できる手法を確立することができていること,(2) 動的光学分割反応は,不斉パラジウム (II) 錯体を触媒前駆体として用い,系内で0価に還元して反応に用いる方法が好結果を与える,という二点を明らかにしているため,平成26年度内にこれまでの遅れは取り戻せると考えている. また,生物活性アルカロイド合成に関しても,ラセミ体での合成経路確立後は,光学活性体での合成を検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
動的光学分割反応は,Pd(II)-不斉配位子錯体を用いて,系内で還元して反応に用いる方法が好結果を与えることを既に明らかにしている.また,溶媒,反応温度,不斉配位子に関してもこれまでの検討により,最適化はほぼ終了していると考えている.炭素-炭素結合形成を伴う動的光学分割反応は,これまでに報告例が非常に少ないため,その反応機構にも大きな興味がもたれる.しかし,触媒反応の機構を機器分析により解析することは困難であると考えられるため,多彩な基質を合成して,反応速度と立体選択性を考慮して機構を明らかにしていきたい. 生物活性アルカロイドの不斉全合成への応用に関しては,困難と考えていたベンジル位不斉第四級炭素の立体選択的構築に成功したため,今後は実際の合成経路に関して検討を行う段階にある.実際には,シクロペンタノン部をシクロヘキサノンに変換する段階が次の困難として予想される.環拡大反応は,様々な方法が知られているが,同一分子内にアルコキシカルボニル基やニトロ基のような反応性の高い官能基が存在しても効率良く進行する反応条件を見出す必要が有る.この段階に成功した際には,実際に光学活性体を用いて合成を遂行する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購入予定していた キラル HPLC カラムの購入を平成 26 年度購入することにしたため.また,予定していた物品費(試薬.溶媒,ガラス器具)の購入が予想以下に収まったため. 平成26年度の物品費として使用する予定である.
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