2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
野地 匡裕 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (80312073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 希土類トリフラート / ジカルボニル化合物 / 錯体構造 / 紫外可視吸収スペクトル |
Research Abstract |
1 希土類トリフラート触媒を用いる2級ベンジルカチオンとジケトン又はケトエステルの反応における、ジアステレオ選択性の逆転現象の機構を解析した。それぞれのジカルボニル化合物とルテチウムトリフラート溶液のUV吸収を、Jobプロットの手法を用い解析した。その結果、1,3-ジケトンも1,3-ケトエステもルルテチウムと1:1のモル比で錯体を形成し、それぞれの錯体構造に大きな違いはないこと示唆された。一方、競合的な配位実験から、ルテチウムに対する配位能力は1,3-ジケトンのほうが1,3-ケトエステル比べ大きいことが明らかとなった。 2 1の結果から、1,3-ジケトンを用いる反応では、ジケトンの希土類トリフラートへの強い配位によりトリフルオロメタンスルホン酸が遊離し、遊離のジケトンのエノール型とカチオンの反応が主要な経路となることが予想された。1,3-ケトエステルはテチウムに対する配位能力が低くトリフルオロメタンスルホン酸がほとんど遊離せず、金属ルイス酸としての機能が優先し、金属に配位したケトエステルとカチオンから主に反応が進行すると予想される。以上の結果から、求核種のおかれた立体環境の違いがジアステレオ選択性の逆転の原因であることが示唆された。 3 希土類金属に対する配位子の合成を行った。3,3’-ジブロモビナフトールのクラウンエーテルへの環化では目的物は確認できなかった。そこでビナフチルクラウンエーテルの臭素化を検討したところ、収率良く3,3’-ジブロモビナフチルクラウンエーテルが得られた。このものとオルトニトロフェニルボロン酸との鈴木-宮浦カップリングにより3,3’-位にニトロフェニル基が置換したビナフチルクラウンエーテルを得た。ニトロ基の還元と機能性置換基の導入を検討中である。また、分子内にカチオン生成部位とジカルボニル構造をもつ基質の合成も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケトエステルとジケトンの希土類金属錯体の構造が、比較的単純な1:1の錯体であることが明らかとなった。また、希土類トリフラートからトリフルオロメタンスルホン酸が遊離しないことが、金属の関与する反応経路が優先することに重要であることが示唆された。この知見は錯体の設計において重要であり、希土類金属の基質に対する配位能力を有効に利用することが重要であることを明らかにしたことになる。 キラルな希土類錯体の合成における重要な中間体である3,3’-ジブロモビナフチルクラウンエーテルを収率よく合成できた。鈴木宮浦カップリングにおいて、反応点が2か所あるため反応が複雑になる点、モノ置換体と目的のジ置換体が分離困難であり、収率が低くなることが問題点としてあげられる。 反応基質として、カチオン生成部位とジケトン部位をもつ物質をデザインし合成を行った。この方法により、ジケトン誘導体、ケトエステル誘導体を簡便に合成できることが明らかとなった。これらの基質は、面選択的反応の実現に有用と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1 キラルな希土類錯体の不斉空間のもとでカチオンとジカルボニル化合物の反応を実現するには、希土類トリフラートのルイス酸としての機能を利用しながら、遊離するトリフルオロメタンスルホン酸の抑制が重要であることが明らかとなった。そこで配位能力を調節しつつジカルボニル化合物をその不斉空間に捕捉するために、様々な配座数と配位様式をもつ不斉リガンドから希土類錯体を合成し、反応の検討を行う。 2 水素結合によるアニオンの捕捉とカチオンの反応面制御の検討を可能とするため、水素結合部位をもつキラルな添加剤の合成を行い、その機能評価を行う。ベンジルカチオンとの対イオンとして想定しているのは、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンである。ベンジルカチオンとの相互作用を行うには、どのような構造、溶媒、温度が適切かを検討する。 3 キラルな希土類錯体上における、水素結合部位をもつ機能性置換基の位置を検討する。適切な位置への配置でより有効な共同作用が可能か検討する。 3 希土類金属に配位可能なジカルボニル部分をもつ求核試薬との反応を行う。カチオン生成部分として、オレフィンやアルコールを前駆体として用い、より基質的適用性の広い反応へ拡張する。水素結合によるカチオンの反応面制御が有効と判断されれば、ジカルボニル化合物以外の各種求核試薬との反応へ応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1 希土類元素のイオンは、配位数が6から最大11までのものが知られている。本反応に関与する希土類トリフラートとジカルボニル化合物の錯体は、モル比が1:1の可能性が高いことを考慮すると、基質のジカルボニル化合物の配座数が最低でも2座必要であり、トリフラートの配位数を差し引くと配位子として利用できる配座数はそれほど多くないと考えられる。そこで希土類金属に対する配位子として、4座配位型のビナフチルクラウンエーテルに加えて、配座数が少ない2座配位子の合成も行う。例えば、光学活性ジカルボルン酸、ジスルホン酸、ヒドロキサム酸である。 2 キラルな水素結合供与体の合成を行う。この物質はトリフルオロメタンスルホン酸アニオンとの相互作用を期待している。これを添加剤として用いる事で、希土類トリフラートから生成したカチオンがトリフラートアニオンの対イオンとして反応面制御できるか検討を行う。 3 反応基質としては、分子内反応を目的とした化合物として、1,3-ジケトンや1,3-ケトエステルの2位に炭素数2個程度のリンカーを通してオレフィン部位をもつ基質を合成する。この基質のオレフィン部位は3級カチオン又は、ベンジルカチオンが生成するデザインとする。また、分子間のエナンチオ選択的反応性の評価に利用できる基質として、1,3-ジケトンや1,3-ケトエステルとベンズヒドロール(ジフェニルメタノール)誘導体の反応を検討する。得られる生成生物の異性化の可能性を排除するため、1,3-ジケトンや1,3-ケトエステルの2位には置換基をもつものを用い、4級炭素構築の反応とする。一般に、ベンズヒドロールからのベンズヒドリルカチオン生成は容易に起こり、分解などの副反応が少なく反応の評価が容易になると期待できる。
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