2012 Fiscal Year Research-status Report
エンド開裂による異性化を基盤とした生理活性糖鎖合成研究
Project/Area Number |
24590041
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
眞鍋 史乃 独立行政法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (60300901)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 糖鎖 |
Research Abstract |
本研究の目的は、申請者が見出したエンド開裂反応を基盤として、合成が容易である1,2-transアミノ糖の複数のグリコシド結合を温和な酸性条件において、合成が困難である1,2-cisアミノ糖へと一挙に異性化する手法として、エンド開裂反応の合成的な有用性を示すことにある。合成目的糖鎖は、機能性、生理活性を持つ1,2-cisアミノ糖を構成糖として含む。 本年度は、原料となる複数の1,2-transアミノグリコシド結合を含む保護されたオリゴ糖2種を有機合成化学的に合成した。ひとつは、β1,4-結合したグルコサミン4糖オリゴマーである。これは、異性化後には、新規オリゴ糖として様々な機能が期待される。もうひとつは、グルコサミンとグルコースがβ1,4-結合した4糖である。これは、異性化後、抗血液凝固作用を持つヘパリン骨格となる。 基質の検討中に、2,3-transカーバメート基を持つβ体のフッ化糖、チオグリコシドは、糖供与体として機能する一方で、α体のフッ化糖、チオグリコシドは既存の手法では、ほとんど活性化されないことを明らかにした。この過程において、フッ化糖の活性化方法を検討を行い、フッ化糖の新しい活性化方法を開発した。これまで、向山、鈴木らによりフッ化糖の活性化方法が開発されてきたが、複数の試薬や、使用直前に活性化したモレキュラーシーブが必要であるなど、テクニカルな面においての面倒さが存在した。今回、空気中で取り扱いができるHf(OTf)4がフッ化糖の活性化に非常に有効的に働くことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時では、シクロデキストリンの2位アミノ置換体を合成標的のひとつとしていたが、α体の糖供与体が活性化できないこと、当初予定していたフッ化糖とチオグリコシドのオルソゴナル糖鎖構築法が機能しないことから合成計画の見直しを行っている。一方、1,2-cisアミノ糖オリゴマーは、新規糖鎖オリゴマーであり、修飾することにより、様々な機能が期待されるが、本合成は、すでに原料合成ルートが確立した。ヘパリン合成については、当初の計画よりはやく原料合成のパイロット合成が終了した。また、当初、計画していなかったが、フッ化糖の新規活性化法を開発した。
|
Strategy for Future Research Activity |
パイロット合成した原料糖鎖の大量合成を行い、研究に充分な原料を得る。その後、これまでに合成した糖鎖に関して、これまでに見出した条件で異性化反応を行い、エンド開裂反応の合成化学的有用性を示すとともに、生理活性、機能が期待される糖鎖合成を行う。また、フッ化糖の活性化において、非常に有効であることを見出したHf(OTf)4について、糖鎖合成化学においての有用性を高めるような反応開発を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
合成ルート見直しのために、使用予定であった高価な試薬を購入しなかったために、当該年度の研究費に繰越額が発生した。次年度は、当該年度の繰越額とあわせて、化学合成のための消耗品を主な使用用途とし、成果発表のための旅費(日本糖質学会年会、アジア、太平洋キチン、キトサンシンポジウムなど)、論文別刷り、論文発表のための英文校閲代として使用する予定である。
|
Research Products
(10 results)