2014 Fiscal Year Research-status Report
エンド開裂による異性化を基盤とした生理活性糖鎖合成研究
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24590041
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
眞鍋 史乃 独立行政法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (60300901)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖鎖 / ピラノシド / 異性化 / エンド開裂 / アミノグリコシド |
Outline of Annual Research Achievements |
前々年度、前年度に合成した1,2-trans 結合したヘパロサン前駆体4糖のグルコサミン部分のフタルイミド基を除去し、トリホスゲンによりN-アセチル2,3-trans カーバメート基を導入した。その後、ルイス酸処理を行うことにより、アミノグリコシドを1,2-cis 体への異性化反応を行った。2カ所のアミノグリコシドのアノマー結合が完全に1,2-cis グリコシドへと異性化した。さらに保護基の変換、除去を行い、ヘパロサン合成を進めた。
エンド開裂反応により、グルコサミンからなるオリゴ糖の複数のアノマー位の1,2-trans 結合を1,2-cis 結合へと一度に異性化反応を行うことができることを前年度に明らかにした。グルコサミンが4位にβ-結合した糖鎖高分子キトサンは、甲殻類の殻から得られ、枯渇することのない安価な糖鎖資源である。セルロースとアミロースは、構成する単糖ユニットの構造(グルコース)、結合位置が同じであるにもかかわらず、アノマー位の立体配置が異なることから、高分子の物理化学的性質が異なる。α結合したグルコサミン高分子は知られておらず、2-アミノ-2-デオキシグルコサミンがβ1,4-結合したキトサンをα結合に異性化させると、新しい機能を持つ糖鎖高分子を創製できると期待される。そこで、難容性であるキトサンにN-アセチル2,3-trans カーバメート基を導入する試みを行い、反応条件を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでのグリコシル化反応とは異なるメカニズム、活性種を経る反応を見出し、理論的な反応機構解明とともに、有機合成化学においての有用性を示すことができた。通常のグリコシル化反応では、アノマー位の立体化学を結合形成時に逐一制御するが、本研究課題においては既存のグリコシド結合の立体化学を一挙に変換することができる画期的手法を開発した。 通常のグリコシル化反応においては、アノマー炭素と環外酸素の間の結合が切断(エキソ開裂)された環状カチオンに求核剤を反応させて、グリコシドを形成してきた。本研究課題では、2,3-trans カーバメート基、カーボネート基を導入するとアノマー炭素と環内酸素の間の結合が切断(エンド開裂反応)され、鎖状カチオンを生じる。この鎖状カチオンの存在は、立体電子効果の知見から議論されたこともあったが、本課題では、ピラノシドを基質として、還元や分子内•分子間Friedel-Crafts 反応により捕捉することにより証明した。 カーバメート基置換基上の置換基効果を系統的に検討することにより、特にカーバメート基、アシル基の場合に速やかに異性化反応がおこることを見出した。特に、アセチル基の場合には、低温において、触媒量のルイス酸存在下においても、1,2-trans グリコシドが1,2-cis グリコシドへと完全に異性化する。 本反応は、通常のグリコシル化反応では構築が困難である1,2-cis アミノグリコシド結合に展開できる。合成が容易である1,2-trans 結合のキトサン4糖に2,3-trans カーバメート基を導入し、異性化を行うことにより、1,2-cis 型4糖に高収率で変換することができた。 副次的な成果として、弱い塩基性条件において除去可能であり、強い塩基性条件や他の条件下では安定である保護基の開発、フッ化糖の簡便な活性化法の開発を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
生理活性を持つ糖鎖、細菌表層糖鎖には、1,2-cisアミノグリコシドを持つものが多い。細菌表層糖鎖の合成はワクチン開発にも重要な役割を果たす。本研究課題で開発したエンド開裂反応を経由した1,2-cisアミノグリコシド結合の構築は、生理活性を持つ糖鎖、細菌表層糖鎖を合成する強力なツールになると期待される。生理活性糖鎖等を合成し、エンド開裂反応の合成的有効性を実証していく。
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Causes of Carryover |
カタログ品を購入予定であったが、欠品中で、販売再開が未定であるために、研究室で独自に調製した。そのために、消耗品の使用予定額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究成果により、海外学会(Gordon conference)へ2回招待されている。そのための旅費、宿泊費の一部に充当する。
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