2013 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病・慢性腎臓病の新規病態解析のためのNMRメタボロミクス技術の開発と応用
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24590042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤原 正子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10466534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸恒 和人 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10217515)
竹内 和久 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40260426)
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Keywords | NMR / メタボロミクス / 生活習慣病 / 慢性腎臓病 / 乳酸 / TCA回路 / ビオチン |
Research Abstract |
「意義・重要性」生活習慣病や慢性腎臓病は複雑な病因を含んでいるため新規な病態の把握法と解析法が必要とされている。我々はNMRメタボロミクス法を用いて、透析治療中に患者血中の乳酸などエネルギー代謝に関わる代謝物の値が増加するという新規マーカーを見出した。 「内容」廃液は非侵襲的で治療中でも採取でき、低分子成分のみのためNMR計測での定量分析に適し、分析の再現性もよい。血液と廃液を同時点採取により1H NMRスペクトル測定し、乳酸、アラニン、バリン、クレアチニンのピーク定量の比較を行い、血液の代替として1H NMR定量分析が可能であることを証明した。廃液NMR法による患者の代謝応答を観察により、個人の応答反応が特異的であり再現することを発見した。ことに原疾患によって大きく異なる応答をすることなど医学的な新しい知見を得た。NMR法ならではの発見であり、新たなマーカー群の挙動を見いだした。透析治療中2,3時間くらいで乳酸,ピルビン酸、アラニンが増加する。これは生体ホメオスタシスを保つ反応と考えられた。これらがエネルギー産生にかかわる代謝物であり、透析治療は患者のエネルギー代謝に大きな影響を与えたことを示した。また、透析合併症である痙攣の緩和を目的としてビオチンを投与したところ著効を見た。ビオチンはTCA回路の補酵素であり、エネルギー代謝の偏りを是正する役割が示唆される。血漿中のビオチンをELISA法にて定量したところ、透析患者はビオチンが蓄積していること、さらにLC/MS測定系を立ち上げインタクトビオチンをビオチン類と区別して測定することに成功した。腎機能の全廃した患者がビオチンだけでなくその代謝物も体内に蓄制させ、代謝物が活性のあるビオチンを抑制していることが示唆された。ビオチン代謝物と腎臓病との関連を初めて示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.廃液NMR分析法を確立した。これにより血液中の低分子代謝物を定量出来ること、血液の代替として評価出来ることを示し論文化した。 2.本分析で代謝物定量の時間変化のパターンが透析患者の病態を反映することを発見した。当然原疾患の違いも反映し、慢性腎炎からの患者と代謝異常をもつ糖尿病を原因とした患者とではNMRスペクトルでの代謝物定量の時間パターンが異なると言う発見があった。 3.エネルギー代謝回路の補酵素としてのビオチンのうち活性型のみをLCMSで測定に成功した。これは当初を上回る進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.25年度にNMRプロファイリング法で得た透析患者の糖尿病を基礎にもつ患者のメタボロミクスについて、さらに研究を行う。血糖値だけでない、新たなメタボロームプロファイルを検出する。 TCA回路回りの代謝物について出来るだけ網羅する。 2.ビオチンは代謝物であるビスノルビオチンの患者血漿における同定とあわせて、同一患者のNMRメタボロミクスの特徴を捉える。ビスノルビオチンのLC/MS定量のため同位体標識物の合成を行うため、この費用が必要となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
検体受け入れ元の透析病院の都合で、検体が予定より少なかったため。測定が予定数を下回った。 次年度は病院の体制がとれるので、検体が収集出来る見込み。予定を挽回できるため前年度分の測定も加わる。
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Research Products
(10 results)