2013 Fiscal Year Research-status Report
質量分析用高性能標識試薬の開発と生体分子の高感度分析
Project/Area Number |
24590047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三田 智文 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30187306)
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Keywords | 標識試薬 / クロマトグラフィー / 質量分析 / LC/MS/MS / 生体分子 / 新生児マススクリーニング |
Research Abstract |
近年、タンデム型質量分析計(MS/MS)が開発され、HPLCを組み合わせたLC/MS/MS法が、広い分野で用いられるようになっている。本研究は、MS/MS用およびLC/MS/MS用標識試薬として適した構造を見出し、新たな高性能標識試薬を開発することを第一の目的とした。また、得られた標識試薬を用いて、疾患のマーカーとなる生体分子の高感度分析法を開発するとともに、特定の官能基を有する生体分子の網羅的解析法を開発し疾患マーカーの道程に取り組むことを第二の目的とした。 LC/MS/MS法に用いる標識試薬は、1)対象分子と速やかに反応する、2)適度な疎水性を有し対象分子を逆相HPLCによる分離に適した構造に変換できる、3)容易にイオン化する構造を有している、4)MS/MS法により特定のプロダクトイオンを選択的に高い収率で生じる、などの条件を満たすことが必要である。これまでに、ベンゾフラザン骨格を有するLC/MS/MS用標識試薬として、DAABD-AE(カルボン基用)、DAABD-ABおよびDAABD-AP(短鎖カルボン酸用)、DAABD-MHz(カルボニル基用)などを開発した。さらに、DAABD-AEを用いて、血漿中極長鎖脂肪酸の高感度分析法を開発し報告した。 25年度は、ベンゾフラザン骨格を有するLC/MS/MS用標識試薬であるDAABD-AEを用いて、プロピオン酸血症のマーカー分子であるメチルクエン酸の高感度かつ簡便な分析法を開発し、生体試料の分析に取り組んだ。患者(n=18)およびコントロール(n=370)の濾紙血液試料中のメチルクエン酸を誘導体化しLC/MS/MSで分析した結果、本法が、プロピオン酸血症のスクリーニングに有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では、25年度中に先天性代謝異常症のマーカー分子の高感度分析法を開発する予定であった。しかし、本研究と関連した、21-23年度に申請した研究を24年度も継続したため、本研究の実施が全体的にやや遅れている。25年度はLC/MS/MS用標識試薬の開発および生体分子の分析に関する文献を精査しReview Paperとして投稿するとともに、プロピオン酸血症のマーカー分子であるメチルクエン酸の分析法の開発に取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
設計したLC/MS/MS用標識試薬を早急に合成するとともに、プロピオン酸血症のマーカー分子であるメチルクエン酸の高感度分析法を完成させる。また、その他の先天性代謝異常症のマーカー分子である、サクシニルアセトン(チロシン血症のマーカー分子)、17-ヒドロキシプロゲステロン、4-アンドロステンジオン(先天性副腎過形成症のマーカー分子)、ガラクトース-1-リン酸(ガラクトース血症のマーカー分子)などの高感度で簡便かつ迅速な分析法を開発する。これらの方法が確立すれば、現在、イムノアッセイ法で行っている分析をMS/MS法およびLC/MS/MS法で行うことができる。MS/MS法を用いた分析法は選択性が高いため、偽陽性の判定は大きく減少すると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に「やや遅れ」が生じているため、助成金の使用にも「やや遅れ」が生じているため。 消耗品費3,548,990円(薬品 2,148,990円、溶媒 600,000円、器具 600,000円、HPLCカラム 200,000円)、研究成果発表 150,000円(日本分析化学会3日間、日本薬学会3日間)、謝金50,000円(翻訳・校閲 50,000円)、その他 50,000円(通信費50,000円)
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