2014 Fiscal Year Research-status Report
質量分析用高性能標識試薬の開発と生体分子の高感度分析
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24590047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三田 智文 東京大学, 薬学研究科(研究院), 特任教授 (30187306)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 標識試薬 / クロマトグラフィー / 質量分析 / LC/MS/MS / 生体分子 / 新生児マススクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、タンデム型質量分析計(MS/MS)が開発され、HPLCを組み合わせたLC/MS/MS法が、広い分野で用いられるようになっている。本研究は、MS/MS用およびLC/MS/MS用標識試薬として適した構造を見出し、新たな高性能標識試薬を開発することを第一の目的とした。また、得られた標識試薬を用いて、疾患のマーカーとなる生体分子の高感度分析法を開発するとともに、特定の官能基を有する生体分子の網羅的解析法を開発し疾患マーカーの道程に取り組むことを第二の目的とした。 平成25年度までに、ベンゾフラザン骨格を有するLC/MS/MS用標識試薬として、DAABD-AE(カルボン基用)、DAABD-ABおよびDAABD-AP(短鎖カルボン酸用)、DAABD-MHz(カルボニル基用)などを開発した。さらに、DAABD-AEを用いて、血漿中極長鎖脂肪酸の高感度分析法を開発し報告している。 平成26年度は、ベンゾフラザン骨格を有するLC/MS/MS用標識試薬であるDAABD-AEを用いて、2-メチルクエン酸の高感度かつ簡便な分析法の開発し、新生児の先天性代謝異常症のスクリーニング(マススクリーニング)に応用した(この課題には平成25年度から継続して取り組んでいる)。従来のスクリーニングでは、濾紙血液試料中のプロピオニルカルニチンを測定し、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、コバラミン代謝異常症を検出している。しかしこの方法では偽陽性がしばしば認められることが知られている。患者(n=20)およびコントロール(n=377)の濾紙血液中2-メチルクエン酸を測定したところ、2-メチルクエン酸濃度は患者血液中の方が明確に高かった。本法は、従来のスクリーニングの二次スクリーニングに用いることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では、平成26年度中に、「低分子化合物の網羅的解析法の開発と疾患マーカー分子の同定」に関する研究を行う予定であった。しかし、DAABD-AEを用いて2-メチルクエン酸の分析法を開発し、患者濾紙血液試料を用いて、本法のマススクリーニングにおける有用性の検討を行ったため、本研究の進行が全体的に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
先天性代謝異常症のマーカー分子は多数報告されている。今後は、2-メチルクエン酸以外の「先天性代謝異常症のマーカー分子」の高感度かつ迅速な分析法の開発に取り組む。対象分子として、サクシニルアセトン(チロシン血症のマーカー分子)、17-ヒドロキシプロゲステロン、4-アンドロステンジオン(先天性副腎過形成症のマーカー分子)、ガラクトース-1-リン酸(ガラクトース血症のマーカー分子)などをはじめとする、多種類の疾患マーカー分子の高感度で簡便かつ迅速な分析法を開発する。これらの方法が確立すれば、現在、イムノアッセイ法で行っている分析をMS/MS法およびLC/MS/MS法で行うことができる。MS/MS法を用いた分析法は選択性が高いため、偽陽性の判定は大きく減少すると考えられる。また、特定の官能基を有する生体分子の網羅的解析法を開発し疾患マーカーの道程に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、新規LC/MS/MS用標識試薬の開発および先天性代謝異常症のマーカー分子の高感度分析法の開発に取り組む予定であった。しかし、緊急性の高い「プロピオン酸血症のマーカー分子2-メチルクエン酸の分析法の実用化研究」を優先し計画を変更したため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費 3,388,194円(薬品 2,388,194円、溶媒 400,000円、器具 400,000円、HPLCカラム 200,000円)、研究成果発表 150,000円(日本分析化学会3日間、クロマトグラフィー科学会議)、謝金 50,000円(翻訳・校閲 50,000円)、その他 50,000円(通信費 50,000円)
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