2012 Fiscal Year Research-status Report
膜電位に支配される電位依存性イオンチャネルの構造と機能発現機構
Project/Area Number |
24590048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 匡範 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60361606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 一夫 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70196476)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電位依存性イオンチャネル / 膜電位依存性 / NMR / rHDL / 構造変化 |
Research Abstract |
電位依存性イオンチャネルは、膜内外の電位差 (膜電位)に応じてイオン透過路を開閉し、特定のイオンの膜透過を制御する蛋白質である。これまでに、膜電位の存在していない活性化状態での立体構造が報告されているが、従来の構造生物学的手法では膜電位存在下での解析が困難であるため、静止状態の立体構造が不明であり、その電位依存的な動作機構は未解明であった。 一方、電位依存性H+チャネルVSOP は膜電位が+20~30mV 程度まで上がらないと活性化せず、膜電位非存在下では静止状態をとる。そこで、静止状態のVSD の代表としてVSOP の立体構造を明らかにすることとした。 今年度は、高分子量タンパク質においても高感度・高分解能でNMRスペクトルの観測が可能なIleδ 位, Leu, Val のメチル基の1H-13C 相関スペクトルのNMR シグナルを帰属することとした。VSOP にはIleδ 位, Leu, Val のメチル基が100 個存在し、それらは蛋白質の構造全体に分布しているため、これらメチル基のNMR シグナルは、構造変化検出の良いプローブとなる。 帰属は、主にIle, Leu, Valの各残基に変異を導入した蛋白質のNMRスペクトルと野生型のスペクトルとの比較により行った。これまでに70個のメチル基シグナルの帰属を確立し、予備的なメチル基間のNOEの解析から、VSOPが静止状態の構造をとっていることが示唆された。 また、電位依存性K+チャネルKvAPの電位センサードメイン(VSD)およびVSOPをリポソームおよびrHDLに再構成する技術を確立した。rHDLに再構成した条件では、NMRスペクトルの観測にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、これまでに未解明であった静止膜電位条件下での電位依存性イオンチャネルの立体構造、および、膜電位依存的な構造変化様式を、以下の4 点を通じて解明することを目的とした。(1) 静止状態のVSD の構造:ミセル中でのVSOP の立体構造解析 (2) VSOP およびKvAP-VSD のrHDL を用いた、アナンダミドあるいは脂質依存的活性化機構の解明、(3) リポソームに再構成したVSD のNMR 観測法の確立、(4)(3)で確立した手法による、膜電位依存的なVSD の動作機構の解明 このうち、平成24年度に計画していた(1)はほとんど完了し、平成25年度中に立体構造解析が終了するめどが立った。また、計画していた(2)の試料調製法の確立も計画通り進んでおり、3年間の計画の1年目の実績としては計画通り順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、「(1)静止状態のVSD の構造:ミセル中でのVSOP の立体構造解析」はH25の前半で完了する予定である。「(2) VSOP およびKvAP-VSD のrHDL を用いた、アナンダミドあるいは脂質依存的活性化機構の解明」はH25-H26で完了予定である。 「(3) リポソームに再構成したVSD のNMR 観測法の確立」については、リポソームに再構成したVSDのNMRシグナルの高分解能での解析が困難であることが判明したため、交付申請書の研究計画・方法に記載した通り、静止状態・活性化状態における立体構造上で近接すると予想される2 残基にCys 変異を導入し、リポソーム上でこれらのCys 残基間にジスルフィド(SS)結合が形成されるかどうか、SS 結合形成残基対が膜電位依存的に変化するかどうかを調べる。Cys のチオール基同士が2Å程度まで近接する場合には酸化剤なしでSS 結合が形成される。理想的な位置関係になくても構造揺らぎの中である程度近接すれば、酸化剤存在下ではSS 結合を形成する(DeCaen P.G. P.N.A.S. 2009)。したが って、酸化剤の有無の各条件でSS 結合形成能を調べることにより、膜電位依存的な構造変化および運動性が評価可能である。SS 結合は、未反応のチオール基をマレイミド基で修飾することにより同定する。同時に、これらの変異体の活性確認を行い、SS 結合が形成された状態を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として、1640千円を使用する予定である。本研究では分子全体を2H 標識した上でIle, Leu, Val のメチル基選択的に1H, 13C 標識を施したタンパク質を大腸菌などで大量に調製するために、標識化合物(2H2O、α-ketoisovaleric acid (3-methyl-13C,3,4,4,4-D4))α-ketobutyric acid (methyl-13C, 3,3-D2)に多大な経費が見込まれる。特に、H25に行うNMR シグナルの帰属には、Ile, Leu, Val のいずれかを他のアミノ酸残基に置換した変異体のNMR試料を調製する必要があり、これらの試薬が大量に必要である。また、精製には界面活性剤decyl-maltoside(DM)を、また、rHDL の調製にはPOPE を始めとするリン脂質を大量に必要とする。 消耗品費 積算根拠 2H2O 70 千円/リットル 6 リットル 計420 千円、2H-glucose 50 千円/グラム 6 グラム 計300 千円、α-ketoisovaleric acid (3-methyl-13C, 3,4,4,4-D4) 600 千円/グラム 0.25 グラム 計150 千円、α-ketobutyric acid (methyl-13C, 3,3-D2) 600 千円/グラム 0.25 グラム 計150 千円、Decyl maltoside 12 千円/グラム 10 グラム 計120 千円、リン脂質 (POPE, POPG, DOTAP, etc) 150 千円/グラム 2 グラム 計300 千円 生化学実験器具 計100 千円、生化学実験試薬 計100 千円 合計1,640 千円
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Research Products
(14 results)